第8話 襲撃
(カイン視点)
「今日はここで休もうか。」
辺りが暗くなってきたところで俺はメレンに告げた。夜の森の中には何がいるかわからない。ましてや異世界だ。あっちの世界では想像もつかないような奴が……。
「…………こいつは………晩飯にするか?」
「え?……………こんなのを?」
いるんだよなぁ。
見た目は俺とメレンが余裕に乗れる程の鹿から角を取り外したみたいな奴だが色がゼブラ……つまりシマウマカラーなのだ。
で、そんな奴が鼻息荒くこちらを威嚇しているのだが……。
「いや……腹へったしさ……食べ物探す手間省けるぜ?」
「うーん……でも、こんなのを食べるなんて……。」
そっちのけで食べるか食べないのか話し合いをしていた。
鹿がうなり声をあげて突っ込んでくる。
「(二人同時に)話し合いの邪魔をするなぁ!!」
メレンのパンチと俺のキックが同時に鹿に炸裂し、鹿は近くの木に叩きつけられて絶命した。
「…………食べようか。」
「うん。」
メレンが持っていたカミソリで肉を切り、魔法で火を起こして焼いていく。なかなか豪快な骨付き肉の丸焼きだ。
………これ、美味いのか?メレンの方をチラッと見るとメレンもこちらをチラ見している。
俺はとりあえず一口食べてみる。
「うん、不味い。」
「ホントだ、不味い。」
何が不味いかっていうとまず苦味がかなり強い。魚の内臓を食べているかのようだ。それでいてやたら筋が多くて固い。ここまで不味い肉初めてだ。
しかし食えないよりかはマシなのでがまんしつつ肉を食べていると…………。
「メレン、今の聞こえたか?」
「うん。足音。音が揃っているから多分人間。複数いると思う。」
「問題ないとは思うが………一応用心しとくか。」
足音はだんだんとこちらに近づいてくる。動物は火を怖がってよってこないから人間で間違いないだろう。道に迷った旅人か?それとも………。
「おい………ガキが二人だ。どうする?」
そこまで離れていない場所から人間の声がした。男性だが高めの声だ。
「女のほうはなかなかの上玉だな………。そいつは取っておくか……。」
別の男性の声だ。どうやら盗賊のようだ。相手の姿は見えないが炎の明かりが相手の持っている剣に反射され、位置はわかる。かなり近くだ。剣の数は三本。足音からして三人だろう。
「小僧、金目の物とその女を置いていけば命は助けてやるぞ、どうする?」
リーダーと思われる男が俺に話しかけてきた。三人が近づいてきたため、姿が確認できる。リーダーと思われる男は太って無精髭を生やしている。顔はニキビの跡だらけで頭はハゲだ。
手下と思われる男二人は両方痩せこけている。一人は顔に切り傷があり、もう一人は右手の指が二本欠けている以外は平凡な見た目だ。
三人とも片刃の剣を持っている。手下二人の剣は手入れを怠っているのか鋸のように刃こぼれしている。リーダーの剣も一部が少し錆びており、手入れをしているとは言い難い。
「悪いけど、俺は金目の物なんて持ってないし、こいつを見捨てて逃げる気もない。」
「ほう、威勢がいいじゃねぇか。そいつはお前のツレか?」
「俺はこいつと今日初めて会った。でも、こいつは………仲間だ。」
リーダーの男はフンと鼻で笑った。そして、手下にこう言った。
「おい、やっちまえ。小僧は殺してもかまわん。女は殺すなよ?あとで可愛がるんだからな。」
そして、手下の二人が同時に俺に襲いかかった。