表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

紫電の唄(ハーキュリーズ&アタランテ&ロイド)

「はい、ロイド。これ、プレゼントだよ」


 たぶん、あいつなりに俺を気遣ってのことなのだろうと思う。

 ロイドは差し出された小さな箱をすぐには受け取ろうとはせず、複雑そうに表情を曇らせて、ちらりとこちらを側めた。


「一体どういう風の吹きまわしだ? 今日が何かの特別な日って訳でもねえだろ」

「あのね、ビアンカさんから聞いたの。王都では一年に一度、お父さんに感謝の気持ちを贈る日があるんだって。それが今日なの。私のお父さんはロイドでしょ」


 ロイドは何も答えない。それどころか、ますます困惑の色を強めているようだった。


「受け取ってやれよ、ロイド。血は繋がってなくても、あんたはアタランテの父親だろ」


 ――いい歳こいたおっさんが、涙こらえてうるうるしてんじゃねえよ。気色悪ぃな。


 はじめこそ胸のどこかが詰まるような思いがしたものの、その気持ちの良くない顔を拝んだ途端に笑いのこみ上げてきた俺は、突き飛ばすほどの勢いで、文字通りロイドの背中を“押して”やっていた。


「ハズには、一ヵ月後にプレゼントあげるね」

「一ヵ月後?」

「一ヵ月後は“お母さんの日”だって」

「はぁ?」


 何がそんなに楽しいんだか、こいつは。


 露骨に表情を歪めた俺を見上げたアタランテは、にこにこと満面の笑みを浮かべていた。


「だってハズ、いつも口うるさいから、お父さんって言うよりはお母さんみたいなんだもん。ハズもロイドも私の大事な家族だから、これから毎年その日に、プレゼントあげるね」


 相変わらず、お前は鬱陶しい奴だな。


 声に出して言ってやろうかと思ったが、喉の奥の疼くような感覚が邪魔するおかげで、うまく言葉が出てこなかった。


「――おい、ハズ。いい歳こいたおっさんが、うるうるしてんじゃねえよ。気色悪ぃな」

「お前にだけは言われたかねえよ」


 こんなにも辛気臭い場所にわざわざ来てやったのは、暇を持て余してるはずのロイドに仕事の話を持ちかけてやろうとしたからなのだが――話し込むうちに、言いたかったことを洗いざらい忘れてしまった。


 どいつもこいつも、本当に鬱陶しい奴らばかりだ。

 独りで居た頃は、煩わしい感情に振り回されることなんてなかったのに。


 ますます面倒臭くなって、俺はそそくさとロイドの工房を後にしていた。


お読みくださって、ありがとうございます!

二人のパパを持つアタランテと、親馬鹿コンビのお話でした。


佐藤つかささん、ロイドをお借りしました!

お子様を貸してくださってありがとうございます♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ