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思ったこと

作者: 雪猫
掲載日:2026/09/23


男の思ったことは、全て現実になった。


男は驚き、喜んだ。


金を望めば金が降り、恋人を望めば恋人候補がやって来た。


最高の食も遊びも自由自在。何もかも手に入れた。


最高の友を得て、最高の酒を飲みながら話す。



「でも、最近飽きてきたんだよな」


男の言葉に、友が飲みながら言う。


「贅沢な話だ」


酒を注ぎながら、男は言う。


「でも、今度からは退屈しないで済む。


良いことを思いついたんだ」


「なんだい?それは」


男は笑いながら答える。



「『俺が思いつかない、びっくりするような


楽しいこと、素晴らしいことを叶えてくれ』


こう思ったのさ。


良いアイデアだろう?


これを毎回思えば、退屈せず、飽きもせず、


わくわくするようなことが、


いつでも転がってくる。


最高だ」



それを聞いた友は青ざめて酒を飲む手を止めた。


「なんということを思ったんだ」


声が震えていた。


「なんだ?何か悪かったか?」



男の問いに、友は酒を置いて、真剣な顔で言う。


「タイムパラダクスって知ってるか」


「ん?ああ。


あの、過去に行って親を殺すと、


自分が生まれなくなる、そういうことだろう」


「ああ。そして、世界が崩壊する」



「…それが、何の関係がある?


時間移動なんてしていない」


「だが、現実を簡単に変えてしまう、圧倒的な力を持っている。


君の『思ったことが現実になる力』は、この世界よりも強い力だ。


そうだろう?


現実ではありえないはずのことが、君の力で起こり続けて来たのだから」


男は嫌な予感がした。


続きを聞きたくない。


だが、聞かずにはいられない。



「それで」


「それで、今回の『俺が思いつかない、びっくりするような


楽しいこと、素晴らしいことを叶えてくれ』という望みだ。


『自分が思ったことが現実になる力』を使い、


『自分が思っていないこと』が現実になることを望んだ。


それは矛盾だ。



強力な力は限定的なものだ。


『思ったことが現実になる力』は、


『思ったことしか現実化しない』という規則が厳格に守られていた。


そうでなければ、思ったことも思っていないことも何でも、


現実化しているはずだから。


君の強大な力には、


『思ったことのみを叶える』という絶対の規則が存在している。



それに対して君は、その規則を破るようにと『思った』。


『思っていないことを現実化するように』と『思った』のだから、


力はそれを、現実化しなければならない。



つまり、


『思っていないこと』が現実化しないならば、


『思っていないことを現実化するように』と『思った』、


『思ったことを現実にする力』は、自身に矛盾する。



『思っていないこと』が現実化するならば、


『思ったことのみ』という絶対の規則は破られて


『思ったことを現実にする力』は、自身に矛盾する。



どちらも矛盾する。



世界を簡単に変えることが出来る程の強大な力は、


分裂し、互いの消滅を目指して、激突する。


世界が耐えられない程の激突になるだろう。



直ぐに取り消さなければならない。


それを思ったのは、いつだ」



男は手遅れであることを知った。


「昨日だ」





その瞬間







世界が






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