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それでも生きる。怪物のまま  作者: 介入者


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第7話

それから僕は、同じことを続けた。


帽子や、タオルや、小さな持ち物。


近くにあったものを選んで、


見つかる場所に隠して、


少し待ってから教える。


そのたびに、


胸の奥は静かになった。


毎回、同じだった。


やり方も、結果も。


少しずつ、


迷いがなくなっていった。


どうすればいいのか、


考えなくてもわかるようになった。


ある日、


「すごいね」と言われた。


同じクラスの子だった。


僕が物を見つけたあとで、


そう言った。


「なんでわかるの?」


少しだけ不思議そうにしていた。


僕は少しだけ考えてから、


「なんとなく」と答えた。


本当のことは言わなかった。


でも、


嘘をついている感じはあまりなかった。


先生も、


「よく見つけるね」と言った。


少しだけ笑っていた。


そのとき、


胸の奥が少しだけ軽くなった。


前に感じていた“静けさ”とは違う、


もう少し広がる感じだった。


それから、


誰かが言った。


「名探偵みたい」


周りが少しだけ笑った。


僕も少しだけ笑った。


悪い気はしなかった。


むしろ、


少しだけ良い気がした。


それから、


やり方を少しだけ変えた。


見つけるまでの時間を、


少しだけ短くした。


困っている時間を、


少しだけ減らした。


その方が、うまくいく気がした。


「早いね」と言われた。


また少しだけ、胸の奥が軽くなった。


静かになるのとは違う、


少しだけ上に浮くような感じだった。


だから、


もう少しだけやろうと思った。


うまくやろうと思った。


ちゃんとやろうと思った。


その日も、


帽子を一つ見つけた。


少しだけ周りを見て、


誰も見ていないのを確かめてから、


ロッカーの奥に押し込んだ。


いつもと同じだった。


扉を閉めて、


少し離れた場所に移動する。


持ち主が気づくのを待つ。


少しして、


「ない」と声がした。


いつもと同じだった。


僕は、少しだけタイミングを見た。


早すぎてもだめで、


遅すぎてもだめだった。


そのとき、


「ねえ」


後ろから声がした。


振り向くと、


同じクラスの子が立っていた。


僕の方を見ていた。


少しだけ首をかしげている。


「今、入れたよね」


時間が止まった気がした。


頭の中が空っぽになった。


何も考えられなかった。


言葉を聞いたとき、


手が少しだけ前に出た。


でも、止まった。


その子は、


怒っているわけでもなかった。


泣いているわけでもなかった。


ただ、


僕を不思議そうに見ていた。


「……ちがう」


気づいたら、そう言っていた。


声は少しだけ小さかった。


その子は少しだけ考える顔をして、


それから言った。


「でも、見たよ」


どうすればいいのか、


わからなかった。


胸の奥が、


急にざわついた。


さっきまでの軽さが、


一気に消えた。


でも、


周りではまだ「ない」と声がしている。


いつもと同じ流れが、続いていた。


僕は少しだけ迷って、


それから、


いつも通り動いた。


「そこにあるよ」


ロッカーの方を指さした。


声は、少しだけ遅れていた。


その子は何も言わなかった。


ただ、


そのままロッカーの方を見ていた。


持ち主は帽子を見つけて、


安心した顔をした。


先生は「よかったね」と言った。


それで終わった。


何も変わらなかった。


でも、


一つだけ違っていた。


さっきの子が、


まだこっちを見ていた。


何も言わないまま、


少しだけ長く見ていた。


それから、


ゆっくり目を逸らした。


その視線が、


少しだけ残った。


胸の奥が、


静かじゃなかった。


ざわざわしていた。


少しだけ、


怖かった。


でも、


それでも終わっていなかった。


その子が、


何も言わなかったことが、


一番引っかかっていた。



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