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それでも生きる。怪物のまま  作者: 介入者


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第2話

朝、目が覚めた。


少しだけぼんやりしてから、昨日のことを思い出した。


思い出した瞬間、胸の奥が少しだけ重くなった。


でも、泣きそうにはならなかった。


昨日、だいたいのことは終わった気がしていた。


どうすればいいかも、決めた。


迷惑をかけないようにする。


それだけでいい。


布団から出る。


顔を洗う。


いつもと同じことをする。


少しだけ動きがぎこちなかったけど、


やっていることは同じだった。


リビングに入る。


テレビがついていた。


朝の番組が流れている。


明るい声が、昨日と同じように部屋に広がっていた。


母がキッチンに立っていた。


父は椅子に座っている。


兄はまだ眠そうにしていた。


全部、昨日と同じだった。


僕だけが、少し違っていた。


「おはよう」


母が言った。


僕は少しだけ間を置いてから答えた。


「……おはよう」


自分の声が、少しだけ遠くに聞こえた。


母は特に気にしていないようだった。


そのまま朝ごはんを並べている。


父も、兄も、何も言わない。


誰も、昨日のことを話さない。


まるで、最初から無かったみたいに。


それが正しい気がした。


だから僕も、何も言わなかった。


椅子に座る。


ご飯を食べる。


音を立てないように、ゆっくり噛む。


こぼさないように気をつける。


怒られないようにする。


それだけを考えた。


味は、あった。


少し安心した。


「早くしなさい」


母の声がした。


体が一瞬だけ強張った。


「……うん」


急いで口に運ぶ。


こぼさないように。


音を立てないように。


迷惑をかけないように。


食べ終わる。


「ごちそうさまでした」


声が少しだけ小さかった。


でも、誰も何も言わなかった。


それでいい気がした。


準備をする。


小さなカバンを持つ。


中身を確認する。


忘れ物がないか、何度か見た。


失敗しないようにしたかった。


靴を履く。


少しだけ時間がかかった。


母が近づいてきて、手を引いた。


「行くよ」


その手は、温かかった。


昨日と同じ温度のはずなのに、


少しだけ違うものみたいに感じた。


外に出る。


空気が少し冷たかった。


歩きながら、


手の感覚だけを考えていた。


温かいのに、


どこか遠い。


うまく言葉にできなかった。


保育園が見えてくる。


中から声が聞こえる。


笑い声。


走る音。


泣き声。


いろんな音が混ざっていた。


門の前で、少しだけ足が止まった。


入りたくない、とは思わなかった。


でも、


どうすればいいのか、少しだけわからなかった。


母の手を、少しだけ強く握った。


離したくなかった。


でも、


「ほら、行きなさい」


そう言われて、


手は簡単に離れた。


少しだけ、力を入れたはずなのに、


意味はなかった。


僕は何も言わなかった。


言ってはいけない気がした。


迷惑をかけないようにしないといけない。


それだけは、忘れなかった。


中に入る。


先生がこちらを見て、笑った。


「おはよう」


少しだけ明るい声だった。


僕は少し遅れて言った。


「……おはようございます」


少しだけ変な言い方になった気がした。


でも、先生は気にしていなかった。


そのまま、他の子の方を向いた。


みんなは、普通に遊んでいた。


誰かが笑っていた。


誰かが抱きついていた。


誰かが泣いていた。


僕はその中に立っていた。


少しだけ浮いている気がした。


でも、


それでもいいと思った。


――邪魔にならなければいい。


そう思いながら、


僕はその中に入っていった。


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