2話
「うぅ…」
恥ずかしい、何で今…と手で隠そうとしたが逆に手を捕まえられる。
「…」
「…」
裕已に、見られている。そう思うとなぜか下腹部にじんわりと熱が集まる。
桃色に染まる董士の頬を見て、うちのペットは可愛いな、と裕已は思う。
何故かもっと意地悪したくなる。
ムクリと起き上がりかけた心の内を、ため息と共に小さく吐き出す。
そんな裕已のため息にビクリと身体を揺らした董士。呆れられたのだろうか、と心配になりそこも一気に治まった。
「…裕已、」
「お風呂はいろ」
「え」
背中を押され浴室に入ろうとしたが、思い出したように董士は背後にいる裕已に待ってと言った。
「これ、外さないと」
そう言って首元に光るネックレスに手をやる。
裕已は手入れしている董士をたまに見て知っていた。少しの沈黙のあと、ワタワタした手つきで留め具を探しきれないでいる董士に僕がやるから、と声をかけた。
「風引くから、早く温まらないと」
という裕已に急かされ、風呂に入る。
何時もは裕已の部屋に一緒に居るので、今日初めて足を踏み入れた、いくつかあるゲスト用の部屋の一室。
そこに備え付けられたお風呂。
天井は高く、四角いガラス窓から差し込む自然の光と、ヒノキで出来た浴槽に、外の緑が見える窓がある。
俺の知ってる風呂じゃない…
造りに圧倒され、口を開いたまま、ぼうっと周りを見渡す董士。
腕まくりをしてお湯を出す裕已に「お座り」と促されるまま、大きな身体を縮めて椅子に座る。
首に何かを通され頭に装着された董士。
つぶっていた目を開けて鏡をみると、どこから出したのか、シャンプーハットをつけた自分がそこに居た。
…シャンプーハット……
当たり前のようにつけられた。裕已は俺のことそういう風に見てるって思ってた。けど、やっぱりそうなのか。それとも、普段は裕已がつけてるの…?
色んな想像をふくらませながら、後で訊いてみようと董士は思った。
お湯を足元に掛けて温度を問われる。
「熱くない?」
「ない」
ふるふると左右に顔を振る。
頭を濡らし、シャンプーを泡立てて髪を洗われた。
地肌を心地良い強さで指圧され、うっとり目をつむる。
人にしてもらうのって、気持ちいい。と、董士が裕已の指使いに心地よくなっていると、緊張が緩んだのか急に尿意がやってきた。
モジモジし始めた董士の頭を掴み裕已が「ジッとして」と言うと頭を念入りに洗い流された。
次は体、という所で董士は裕已に言った。
「…ゆい…おしっこしたい、しに行ってもいい?」
「ここですれば…?」
「イヤだ…行っていい?トイレ」
「なんでココでしないの…?」
えー、…だってさあ。
ちょっと耳かして、と手招きして無い距離を更に縮める。
裕已の寄せた耳にコソコソ内緒話をする様に声を潜めて身体をもぞりと動かし打ち明けた。
「裕已がいると思うと、恥ずかしくてできない。だから、ん…もうムリおねがい漏れそう、はやく」
裕已は董士の紅く染まる目の淵を見る。
するりと下腹部に手を伸ばす。薄く毛の生えたその上、確かに少し張っている。僅かに膨らみのある部分を撫でた。少し悪戯心がわいて、軽く押す。
「ゆっ、い」
息を詰めて名前を呼ばれる。
出せばいい、とそんな姿も見てみたいという本音もあった。が、まだ理性が働いてる今の内に離れる事にした。
「……わかった。でも、ここでしていいよ、僕出てるから」
そう言うと、裕已は浴室から出た。
ふう、と何とか意見をきいてもらえてホッとする反面、人様の家でする背徳感で申し訳なくなった。
心のなかで謝ったあと、いつ裕已が戻るかわからないので急いで用を足す。
本当にごめんなさい
「終わった?」という裕已の声に「おわった」と返事をする。
ドアを開けてすぐ裕已が鼻をスンスンしたので、董士は「それやめて」と言ったが「何だ…匂わない、つまらないな」と返され困った。
「次、からだ洗お」
「自分でする…」
「自分でするの?いいよ、ハイ」
「いいの?」
「うん、いいよ」
あっさりスポンジを渡され董士は虚を突かれたような顔で裕已を鏡越しにみた。
何だかわからないが、あっさりと許可を得た。渡されたスポンジをにぎにぎと泡立てる。首元、胸、お腹と順番に洗っていく。
腕を擦り、背中に移った所で「ここは俺やるね」とスポンジを取られ、渋々渡す。
丁寧な手付きで迷いなく襟元から下へと背中を滑る。
「痛くない?」
「ない」
「……よし」
背中を洗い終わったようだ。しかしふいに、
後ろから太ももにスポンジで撫でられ変な声が出た。
「んあ、…自分でするって」
「ああ、そっか」
「…」
黙々と洗いシャワーを出すと、泡を流していく。




