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一点張り




 あの日。

 仕事終わりに雅也まさやがスマホの着信履歴に残っていた未登録の電話番号にかけると、すぐに乙葉おとはが出て、母親に説明したのでどうぞいつでもお越しくださいと元気な声で言われた。


 こんな十歳も離れた、見知らぬおっさんが運命の相手だなんて嫌ではないのか。

 少なくとももう少し知った上で受け入れた方がいいのではないか。


 今更感は拭えないが、自己紹介を済ませてのちに再度尋ねてみても、乙葉の答えは変わらず、もう運命の相手として受け入れていますの一点張り。

 運命の相手に出逢って興奮している今、何を言ってもその答えに変わりはないだろうと考え、とりあえずお母上に会いたいと伝えると、迎えに行きますと言われたので、乙葉の自宅近くの駅で待ち合わせする事になって今現在。

 その駅で再会を果たし、数時間前の出会った時と変わらずに、厚意と好意で以て接近してくる乙葉に、ポメラニアンではなくても癒されるなあと、ただ、そう思った時だった。


 身体の異変を察知。

 ぞわりぞわり。

 唐突に、毛が、皮膚が、脂肪が、筋肉が、骨が、神経が、妖しく蠢き始めたのだ。

 ポメラニアンになる前兆だ。

 ふんすっ。

 雅也は全身に力を入れて、ポメラニアン化を阻止した。


(のは、いいのだが)


 だらだらだらだら。

 冷や汗が湯水が如く吹き荒れる。


(これが、運命の相手の力)


 恐ろしい、恐ろしすぎる。

 意思に反して、意思をまるっと無視して、ポメラニアン化させてしまうだなんて。


(これは。この少年。乙葉君との対面で、ポメラニアン化してしまう、の、か?では、もう、会わない方が。いや。大人として。年下の人間を導く者として。わしがポメラニアン化したくないからと、わしに期待してくれている少年を突き放すのか。否)


 ポメラニアンにならなければいいのだ。


「よし行くぞ。乙葉君。お母上に挨拶をしに行く」

「はい」


 この挨拶で、あわよくば、いきなり運命の相手だなんて認められない。

 そう、お母上が言ってくれないかなあと期待していた。


(わしと乙葉君が遺伝子レベルで決められた運命の相手だとしても、気に喰わなければ、受け入れなくていいからな。今は、乙葉君は運命の相手に盲目状態になってはいるが、お母上が声を上げてくださればきっと。乙葉君も目を覚ますだろう。見知らぬおっさんをこんなに急に受け入れようだなんてどうかしていた。と。もっと詳しく知ってから、運命の相手として受け入れるかどうかを決めよう。そう。賢明な判断を下すだろう)


 雅也は乙葉の母親に激しく期待していたのだが。

 その期待が裏切られるばかりか、まさか、あんな事になるなんて、思いもしなかったのである。











(2024.7.15)




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