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運命の相手
あ、ポメガバースの子か。
あ、運命の相手だ。
三十代の男性、雅也と男子高校生、乙葉は同時に別々の感想を抱いた。
甘やかさなければいけない。
甘やかしてもらおう、いや。
雅也は知り合いでもない自分が甘やかしたところで乙葉が人間に戻るかわからないと思いながらも、全力で甘やかそうと思った。
ポメラニアンが好きだからじゃないから。
下心じゃないから。
純然たる善意だから。
この挫けた心を癒してもらおうとか全然考えてないから。
ポメラニアン化した乙葉は、運命の相手だ思いっきり甘えてしまおうと嬉々として思ったのだが。
『挫けるよおおぅ』
雅也の嘆く姿を思い出した乙葉は、甘やかしてもらうのではなく、甘やかそうと決めたのだ。
だから、腹を見せて地面に寝転んでいるのだ。
さあ、思いっきりわしゃわしゃしてください。
ただ、いくら運命の相手でも、お腹を直に吸うのはまだ初対面なので止めてください。
(2024.7.9)