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制御装置




 高校の喧嘩部道場にて。


 雅也まさやは今すぐに立ち上がってポリエステルロープを引き千切り、ポメラニアン化してしまった乙葉おとはを抱えて、一時的にこの場から離脱しようと思った。

 ポメラニアン化している人間だろうが、本物のポメラニアンだろうが、この喧嘩部部員たちは。


(いや。乙葉君は自校の喧嘩部の部員ではない。から、暴力を振るう事はしないだろう、が。わしが暴力を振るわれる様子を見せたくない。か、ら)


 やはり、一時的に撤退して、乙葉を実家に送り届けてのち、凹凸にしよう。

 そう、決定した時だった。

 或る信じ難い光景を目にした雅也は、目ん玉をひん剥いてしまった。

 ポメラニアン化した乙葉が、あろう事か、こんな衆人環視の真ん中で、腹を、見せたのだ。


 雅也は激しい衝撃を受けた。


 これが独占欲というものか。

 冷静な己がふと、囁いた。


 あれは、自分だけに見せてくれるものではなかったのか。

 例えば、自分を救う為に不承不承、涙を呑んで行った事であってもしても、だ。

 激昂する己が、なりふり構わず叫んでいる。


(わし以外に、そんなあられもない姿を。素っ裸を。さあどうぞお触り下さいと言わんばかりの行動を取ってほしくなど………いかんいかん)


 すんっ。

 唐突に憤怒と嫉妬と破壊衝動が鎮火した雅也は、にっこりと笑った。

 それはそれは不気味な笑顔だったと、その時、空に舞っていながらも視線を引き寄せられた喧嘩部部員たちは、のちに語っていた。




 乙葉にしか意識が向いていなかった雅也が冷静さを取り戻し、大輝だいきが喧嘩部部員たちを、ちぎっては投げちぎっては投げる様を見ては、退部届を出して秘かに修行をしていたのか、そしてその修行の成果が出たのかと感心していた。


 まさか初恋相手がロープでぐるぐる巻きにされて、床に転がされているという危機的状況に、ぷっつんと、色々な制御装置らしきものが焼き切れてしまって、怒り狂っているだけなどとは、思いもしなかったのである。











(2024.7.15)




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