ネコ耳少女現る!?
時刻は午後6時ぐらい、秋の空は真っ暗になっていた。
海斗の目の前には、顔を真っ赤にした白いフリルの付いた黒いドレスを着たネコ耳帽子の少女が立っていた。
「だれだよ、お前」
「私でしか?ぬこです」
ネコ耳帽子の少女は、独特的な喋り方で海斗の質問に答えた。
だが、海斗が聞きたかったのは名前ではなく、何者かと言うことだ。
「だから、誰なんだよお前」
「ぬこはぬこでし」
ぬこという少女はそう答えた。
海斗はため息をつく。
今日はため息を何回ついただろうか?海斗はそんな事を考えつつ、さっきは自分の質問の仕方が悪かったと、自身の心の中で反省をする。決してその事は声には出して言わない。
その間もぬこは海斗を不思議そうな目で見ながら、キョロキョロしていた。
(なんか、変なのに逢ったなぁ)
少し頭痛がする。
海斗は頭を抱えながら考える。
こういう変な人と関わると碌な事はない。
これまでの経験で、ぬこみたいな人間は関わると後から自分が迷惑する羽目になる。
過去にこういった経験があるから、これは確実だ。
逃げるが勝ち。
いや、こういう奴は逃げると追っかけてくる。
だが、逃げなければ何かに関わらされる。
どうするべきだろうか?
海斗はため息を何度もつきながら考え込んでいた。
(よし、とりあえず全力でこの場から離れよう)
覚悟を決めたとき、海斗は立ち上がり、花瓶の水が零れないように持ちながら、ぬこがいるその場から全力で走り去る。
海斗は走りには自身があった。
桜丘学園内で走りだけは学園トップで、海斗に追いつく者はいないと言われているからだ。
だから、自分には絶対追いつかないだろうと安心して、少しペースを落として走る。
今のペースでも普通の女の子には追いつけないだろう。そう思っていた。
(ん?何かが変だ)
海斗は何かに気がつき、後ろが気になり振り向いた。
「待ってくださいでし」
振り向いた視線の先には、四つん這いになってネコのように全力で走るぬこの姿があった。
ぬこの帽子はいつの間にか外れていて、頭からははっきりとネコ耳が生えているのが見える。
「はぁ!なんでだよ、ってかなんだよあれ」
海斗はネコ耳に目を見開き、すごい表情で驚いて、一度立ち止まってしまった。
その隙にぬこは海斗に追いつき、飛び跳ねて海斗を地面に押し倒した。
「待ってくださいでしっていいましたでし!」
「いや、その走り方とか変だろ!なんだよお前」
海斗には、今の状況が理解できない。
自分がぬこに押し倒されているということも、ぬこの帽子が外れて頭にネコ耳が生えていることも、全部だ。
全部理解が出来ない。
普通の人間の理解を超えている。そう思った。
海斗はまたため息をついて、自分の上に座るぬこを軽々と持ち上げて立ち上がった。
「何するでし!」
ぬこは海斗に持ち上げられ、宙に浮いた体をバタバタさせながら嫌そうな顔をして、海斗の腕に噛り付いた。
「離すでし」
「何すんだよテメェー!」
海斗は噛り付かれ、ぬこを離した。
ぬこは尻から地面に落ちたが直ぐに体制を立て直して、立ち上がり海斗を睨みつけた。
その後ぬこは海斗の腕を覗き込み、自分の歯型がある事に気が付いて、耳を下に少し向かせて、しょぼんとした表情をしだした。
「あ、ごめんなさいでし」
ぬこがこぼした言葉。
海斗はそんなぬこを見て反省していると思った。
主に判断する要素となったのは、ぬこの耳である。
昔、瑠奈が飼っていたあのネコも悪い事をして反省すると耳を下にしたからだ。
ぬこは少し涙を流した後、その涙を服で拭き取り笑う。
「海斗さん、ぬこのお兄ちゃんになってくださいでし」
「はぁ?」
海斗には、とんでもない言葉が聞こえた気がした。
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