ネコ耳少女現る!?
風が吹く、夕日が綺麗な墓地の前。
黒いドレスに可愛らしい白いフリルの付いた服を着て、その上に大きな赤いリボンの着いたケープを纏った、黒いネコ耳帽子をかぶるまだ10歳ぐらいの少女がじっと墓地を見ていた。
その小さな腕の中には、綺麗な赤いバラが咲き乱れる花束を持ち、そっと墓地の最上階を目指して歩きだした。
「ぬこは、しなくてはならないでし」
ネコ耳帽子の少女は、自身の小さな体をゆっくりと動かし、石階段の上へ上へと上がっていく。
その瞳には、大粒の涙が溢れていて、何かを悔やんでいるようだった。
ぬこが石階段を上がろうとした同時刻。
海斗は、妹瑠奈の墓石を磨き終えたところだった。
いつも、海斗が綺麗に磨いているのでそれほど汚れてはいなかったが、海斗は一生懸命想いを込めて磨き上げた。
「よし、あとは花瓶の水を変えるだけだな」
海斗は墓石を撫ぜ、そこに置かれている綺麗な白い花瓶に挿している花を一度水の入ったバケツの中にいれ、花瓶に入っていた水をその場に捨て、なにも入っていないことを確認して、花瓶をもって水汲み場まで歩きだした。
風が冷たくなってきた。
空を見上げればもう薄暗くなっていて、空気が綺麗なこの場所では星が見え出していた。
海斗は少し急がなければ、学園寮の食事の時間に間に合わないと思い、小走りで水汲み場に走っていった。
「鈴の音か?」
リンと鈴の音が聞こえた。
海斗は、嫌いな鈴の音に少し耳を塞ぐ。
鈴の音といえば、瑠奈が大切にしていたネコに付いていた鈴。
あのネコが死んですぐに、後を追うように瑠奈は原因不明の謎の交通事故で死んでしまった。
たしかにあのネコは何もしていない。
ただ、背中に大きな切り傷をつくって勝手に死んだ。そう海斗は思っている。
だけど、海斗はそう思っているけども、そうではない?と思っている部分もある。
あのネコが着てから、瑠奈はおかしかった。
何がおかしかったのかは、海斗自身よく分からない。
ただ、瑠奈の体に傷が増えた。
もしかしたら、それが原因なのかもしれないと海斗は思っている。
海斗は水汲み場に着くと、花瓶に綺麗な水を入れだした。
「嫌だな」
小さなため息をつき、目を擦ると、白いフリルの付いた黒いドレスが見えた気がした。
『海斗さんでしか?』
リンとまた鈴の音と共に、海斗の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「なんだよ」
海斗は一瞬気のせいだと思ったが、その声はあまりにもはっきりしていたので、声をだしてしまった。
花瓶の水を入れ終わると、またため息をつき、鈴の音と声が聞こえた方に顔を上げた。
「うわ!顔すぐにあげないでくださいでし」
そう、海斗の顔すぐ前に、すごく顔を真っ赤にして慌てている、背の小さい黒いネコ耳帽子を被った少女が立っていた。
「だれだよ、お前」