序章 ネコ耳少女現る!?
真っ白な大きなお城の中。
すごく大きな中世ヨーロッパ風の城の中には、何人ものメイドや執事が忙しそうに働いている。
その忙しそうに働いている者たちの横を笑顔で通り過ぎ「頑張って」と声をかける、まだ20代後半の茶髪の青年が、ゆっくりと大広間にある自分が座るために用意された王座に座った。
「これを見るのは久しぶりだ」
そう青年は呟き、その横に設置されている机に置かれた、古ぼけた2枚あるうちの一番上にある古ぼけたアルバムを手に取った。
そこに写るのは、王座に座る茶髪の青年と良く似た容姿をした、青年より10歳ほど若い、学制服を着た少年たちが写っていた。
「もうすぐだ、もうすぐ進める」
そう青年は悲しそうな声で呟き、近くにいた蒼い毛を持つネコを抱きかかえた。
すごく大切そうに青年は自分の膝の上にそのネコを置き、頭を撫ぜると、ネコはニャーと気持ち良さそうに鳴いた。
「さて、始めるか」
そう青年は一言ネコに言うと、自身の体を小さなナイフで刺した。
季節は秋の終わりで、風がとても冷たい。
学生服に身を包む少年は、夕日がすごく綺麗な墓地の最上階を目指し歩く。
桜丘学園高等学校2年、幾宮海斗は先日謎の交通事故で最愛の妹、幾宮瑠奈を亡くしたばっかりだった。
瑠奈が死んだ事は、原因不明の交通事故や謎の交通事故と世間では言われている。
世界の今の技術では、人が乗っていない無人車では接して事後など起こるはずはない。そう人々が思っていた最中の事故であった為、ものすごく大きくメディアから取り上げられた。
だが、なぜ死んだのかは分からないままだった。
そして妹を亡くした海斗は、それ以来毎日お墓参りに行くようになった。
海斗以外の肉親や親戚がいない瑠奈にお墓を作ってくれたのは、海斗の親友である桜丘学園高等学校の理事長とその孫息子、桜丘隼人だった。
もし海斗が隼人と親友でなかったら、瑠奈の遺体はきっと海に捨てるか警察に持って行かれるかのどっちかだっただろう。
だから墓を作るように理事長に頼んだ隼人に感謝している。
それ以外にも家族が居ず、お金のない海斗を学校に通わせてくれたり、学費を払ってくれているのも彼らである。
そんな彼らのお金を少しでも返すために、海斗は父親を病気で亡くしてから、学園内でバイトをして毎日働いている。
高校生になってからは、学園外の所でも朝バイトをするようになった。
だけどそれはあまりにも過酷だった。
まだ大人になっていない海斗の体には、沢山の疲労がたまりいつも限界ぎりぎりだった。
だけど、頑張らないといけない。
妹を死んでしまった原因を突き止めるまでは。そう思い今生きている。
「瑠奈、お兄ちゃんが来てやったぞ」
海斗は桜丘墓地の最上階にある瑠奈の墓の前にしゃがみ、瑠奈の大好物だった苺大福を墓に置いた。
毎日何かを持ってきては、瑠奈の墓を磨く日々を送る。
瑠奈が天国でも寂しくないように声をかけに来ている。いや、自分が独りだという事実を和らげるために毎日来ている。
海斗の母親は瑠奈を生んだ後力尽き、その後父親も疲労がたまり、病気に罹ってで死んでしまった。
海斗はいつも自分の周りにいる人を亡くしている。
そう、海斗は恐れている。
自分の周りの人が死んで行く事を。
そしてそれが自分のせいだと言う事にもなんとなく気が付いていた。
2010年始まりました。予定通りに、序章開始します!!
まだ準主人公のぬこ登場していませんが、まあ次登場します。
これからじゃんじゃんキャラの濃い人たち沢山でますので、お付き合いいただければうれしいです。
今年も宮燈緋色をよろしくお願いします。