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ひっくり返った車と遭遇

 北海道出張の4日目。周りに草か朽ち果てた家しかないような道路を通過中、前方にひっくり返った車があった。さすが北海道、車の捨て方も豪快だこと〜と笑いながら通過しようとしたが、なんと中で誰かが動いている!


挿絵(By みてみん)


 慌てて車から飛び出し中を覗くと、おじいさんがモゾモゾ動いている。意識ははっきりしているが、足が痛くて出られないらしい。こりゃレスキューの人に任せようということで、119番と110番に電話をかけた。一緒にいた上司がおじいさんの容態の確認や、世間話担当をやってくれた。


 警察と消防に来てもらうには、我々の現在位置を教える必要がある。生憎周りに目印となるような建物が一切なかったので、地図アプリで座標を確認し、それを伝えた。座標を伝えながら、俺ってなんて有能なのだろうと悦に浸っていると、上司から車の中にいるのがおじいさんじゃなくておばあさんだという情報が入った。すぐに「あの!すみません!!!おばあさんでした!!!はい!!!」と伝えたが、救急の人はおじいさんとおばあさんが乗っていると理解したらしく、しばらくの間会話のすれ違いが発生した。僕がジジイになったら、一目でジジイとわかるようなジジイになろうと決心した。


 ちなみに通報するときにケータイの位置情報がケーサツに伝わって云々という話を聞いたことがあったけど、今回はその機能は使えなかった。理由は不明。


 電話が終わったので、おばあさんの元へ行った。よく見ると間違いなくおばあさんだったので、心の中で謝罪した。おばあさんは足の付け根を痛めているものの、そのほかにダメージはない。この辺りに熊って出ます?と尋ねると、弱々しい声で「ここらは出ない…」と答えてくれた。今思えば「いつ事故ったんですか」とか「お名前は?」とか聞くべきだったんだろうと思うけど、僕はそこまでの有能さは持ち合わせていないのである。許してください。基本的に北海道にいる間はずっと、熊に怯えていたのです。


 車は完全にひっくり返っている。事故った時の衝撃のせいか、クラクションが絶えず鳴り続け、めちゃくちゃ耳障りだった。クラクションのせいで電話の時もおばあちゃんとの会話も、ほぼ叫びながら話していた。でかい音を聴き続けると、体力を消耗する。おばあちゃんも大変だっただろう。


 5分後、地元の警察署から電話があった。火災の恐れがあるので、可能であればおばあちゃんを車外へ運び出して欲しいとのこと。仕方ないので上司が引っ張り上げ係、僕が下から持ち上げ係となり、おばあさんを引っ張り出すことにした。後部座席から車内に侵入し、おばあさんの脚を支えるわけだが、生まれて初めて車の天井を踏むという経験をした。普段ひっくり返った車の中に入るチャンスは滅多にないので、非日常感がなかなか楽しかった。そういや110番も119番も初めてだ。初めてづくしである。むしろラッキーなのかもしれない。


 持ち上げる時、おばあさんが痛い痛い言ってたけど、僕ちゃん素人なので許してやってほしい。


 おばあちゃんが車外に出てすぐ救急車が到着した。この時車内にいるのは僕だけだったので、お笑いだったら僕が間違って救急搬送される流れだよなぁと思ったが、現実はそこまでアホではなかった。

 救急隊の方は脈や意識の確認をテキパキと済ませ、あっという間におばあちゃんを担架で運んでいった。救急隊の方は誰一人として僕を見なかった。ちょっと悲しい。


 救急車に遅れてパトカーがやってきた。警察の方との会話は上司に丸投げしたので、どんなやりとりがあったのかは不明である。会話が終わり、お巡りさんが車の中に侵入、ハンドル付近をいじっている。どうやら鳴り響くクラクションを止めようとしているらしい。5分くらい格闘の結果、どっかの内部コードをぶった斬らないと音が止まないことが判明。悲しい。


 そんなこんなで警察の方に名前と住所を伝え、我々は解放された。事故の発見〜解放までに1時間かかったが、その間誰一人としてこの道を通った人はいなかった。もし我々がこの道を通らなかったら、おばあちゃんは長時間車から出られなかっただろうし、助けも呼べなかっただろう。おばあちゃん、なかなかの強運の持ち主だなぁ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アーーーー北海道イッテミタァァァァィィィ!!!!!!!!!!!! 何やったらそんなとこに落ちるんだよって思ったんですけど、これもまたアクセルとブレーキ間違えた感じなんですかね⋯⋯(;´・…
[良い点] おじいちゃんじゃなくておばあちゃんだったというところで、不謹慎にも笑ってしまいました(笑) にしても良いことしましたね(*´▽`*)
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