第9話「チャンス、」
“おっす…本ちゃん…”
森がそんな悲しそうにしているのは初めてだった。聞いたところによると、昔の友達や仲間にあったらしい。最初は戻してくれると希望のあった森の前で、突き付けられたのは悲しい現実だった。
“仲間が…みんな死んだ”仲間さんは暴走族同士の抗争に巻き込まれ、一人残らず死んでいった。待ち構えていたのは悲しい現実なのに、どうしてわざわざ教えてくれたのか。
“職員が友達がきているといったんだ。でも、そこにあったのは仲間の一人の遺骨の入ったツボで…”“そんな…”“ひどすぎます…”
でも森は仕方ないと言って笑った。昔から弱虫で強くなれなかったからこんな天罰が起きたのだと。
“進路は決まったか?ふざけてると殴るよ?”
職員は話している僕たちに向けて半笑いで脅してきた。こんな職員がいるから夢なんて語れないんだと感じた。
“そんな夢を見たんですね。不思議です…私も少し前に見ました”“奇遇ね。私も見たよ”“俺だってその夢は見たぞ”
…将来の夢なんて語れないが、昨日の夢を話すことは大丈夫だろう。夢を捨てずに諦めなければ叶うと、そう教えてくれたからだ。
次の日、僕は職員に呼ばれた。進路診断の時間だ。僕は小説家になりたいという夢を諦められずそのまま言ってしまった。殴られる、その瞬間に聞こえたのはこんな言葉だった。
“諦めないのか…その夢を叶えるために努力して…バカみたいじゃん、無理じゃん”
そんな言葉、聞きたくなかった。無理なんて言葉も…否定されることも…どうして…どうして…職員が嘲笑してからは何も覚えてない。気が付けばブラック企業で働くことを志望させられていたらしい。しかし、それはすぐに取り消された。森と岡本がどうにかしたらしい。しかし、それをさせられて職員も黙っていられなかった。
“え…親を呼ばれたんですか?”
…助けたはずの二人は親を呼ばれて強制帰還されたそうだ。その時の顔はどこか幸せそうだったらしいが、自分を批判する…そんなやり方は好きじゃない。
自分だけやけに批判されることは普通だった。小学校の時は先生に目をつけられたからやってなくても注意され、無意識のうちに注意されて…やってないと言っても信じてもらえずに誰にも言えなかった。いいことしても誰にも気づかれず、気づけば僕は教室に入れてもらえなくなった。最初はクラスメートの悪ふざけだと思っていたが、のちにこれが先生の指令でやったと知ると、とても悲しくなった。それ以来誰を信じることもできなくなった。中学時代も物を投げられたり殴られたりして制服にも泥が付いていたのに誰にも助けてもらえず…気づけばそれを夢に見ていたから寝落ちしたんだろう。
“本ちゃん!職員が呼んでたよ!”
寝ぼけ眼ですぐ職員室に向かうと大笑いした職員が僕に会いたい人がいると伝えられた。別室に行くと、そこにいたのは…
“どうして…”