第8話「諦めない、」
“おっす、あけおめ”“あけましておめでとうございます”
そうか、今日は正月だ。でも親に会いたいという気持ちはまだないかな…
今日は正月だから今年の抱負を決めなくてはならないと思う。しかし、僕にはそんなものを決めても実行する力がない。実行しても継続する力がない。例えば今年ダイエットをしようと決めるも、明日からでいいやと先延ばししているうちに一年が終わる。そして後悔をしてしまう。そんな感じだから今年の抱負なんて決めない。
“本ちゃんは抱負決めないタイプなんだ。でも、それわかるかも”“それを決める意味なんてあるのでしょうか?”“やっぱりなしだな。今年の抱負は”
みんなわかってくれるんだ…その代わりに僕とこみさんは小説をみんなの前で披露した。一週間で評価が少しだけ来た。どれも暖かい物ばかりだった。
“やった!私たちの小説、そこまで悪くないって!”
職員の前で自慢するようにそういうと、職員は少しだけ悔しそうに涙を浮かべて立ち去った。こうなれば次は出版社に売り込みに行くのだが…障壁はかなり多かった。まず、何かしらのコンクールの新人賞を取るのが必須条件だ。次にコンスタントに小説を作る力や文才など、まだまだ技術を上げなければいけない。
“今年の抱負ってわけじゃないけど、コンクールに出してみない?”
こみさんがそんな感じで提案してきた。もちろんこの案には大賛成だからとりあえず乗っておいた。しかし、カレンダーは一月を指し、そんなに悠長な考えではいられなかった。
“進路は決めたか?もちろん、小説家以外でな”
職員は皆、小説家に対して妙に反対してくる。披露したはずの小説も、いつの間にか破られていて何もなくなった。小説家という職業に何が不満なのだろうか。
“たぶんですけど…”
みっちゃんが教えてくれたのは、この施設の裏の顔だった。表では「あなたの夢を応援します」とか「もう一度やり直しませんか?」といった宣伝文句を謳っているが、実態は夢に現実を突きつけ、ブラック企業にあっせんして自分たちは報酬で豪遊するような闇企業である。騙された家族がかわいそうなのか、わかってて入れたのかそれは自分にはわからないが、この施設に少しの恐怖感を覚えた。
“素直にしていた方がいいよ”“反抗するとこうなるよ”
と言って僕たちの小説を見せものにして破る光景を見てしまった。これではただの独裁政治だ。恐怖で人をコントロールして思考を奪うのはどんな聖人でも許せない。しかし、この詐欺師たちから逃げ出すなんて考えには至らなかった。
“逃げ出したら、また親の下ですよ?”
みっちゃんに冗談でここから逃げることを言ったらこう返された。あの家族には会いたくない。なら逃げ出すこともできない。しかし突然心が揺らいだ。夢の中でこんなことを言われたのだ。
“夢はあきらめないで。絶対にかなうから”