第6話「変わろう、」
“お誕生日おめでとう!”
みんな祝っている。今日はみっちゃんの誕生日だからだ。僕もプレゼントのポッキーを送ることにした。誕生日を祝うのは久々だ。もっとも、祝われた経験はないのだが。
“おぉ、人気者だねぇ~”
こみさんもプレゼントを持って近づいているが、列になっているようで近づけない。近づいてプレゼントをもらって、とてもうれしそうだった。しかし、僕の場合はどうなるだろうか…
僕の誕生日は11月1日、明日である。森もどうやらプレゼントを贈っていたし、僕には誕生日のプレゼントはないのか…少し憂鬱になった。
誕生日で思い出すのは苦い過去ばかりだ。中学3年の時までは普通だった。高校に入ってから誰にも祝われなくなった。いちおうみんな知ってるらしかったが…僕を無視することが普通になっていたため、誰にも祝われなかった。
その日のことは覚えている。僕が祝われなかったことを言うと…親は何も言わなかった。強いて言うなら朝に父が“誕生日おめでとう”と言っていた。それぐらいである。それから少しして文化祭の係決めとなった。僕は頑張っていろいろ買ったのだが、失敗してしまった。それから僕に対してのクラスの見る目が変わった。でも、すぐにそれは解消されたのだが。
“お誕生日おめでとうございます!プレゼントを持ってきました!”
…もう朝か。ネガティブなことを考えるといやでも疲れるから眠れる。しかし、要はトラウマを想起することで眠ることになるのでお勧めはできない。
“本ちゃん、久々に小説を書いてみたよ。良ければ読んでね”
こみさんの小説は幸せな感じがする。明るくて、笑顔になるような感じ。
“お誕生日おめでとう!本ちゃんにはこれだよ!”
森にはブラックサンダーをもらったよ。美味しいけど…好きなのかな?
“プレゼントを開きましたか?”
…みっちゃんのプレゼントは開けてなかった。何かいい物でも入っているのか…それとも何か問題でもあったのか?とにかく開けてみることにした。
“ふふっ、驚きました?”
中に入っていたのは優しい色のネックレスだ。まるでそれはみっちゃんのようだった…
“それと…あとで職員のところに来てくださいですって。”
そう言われ職員のところに行くと誕生日を祝うよりも早く進路のことについて語った。僕は小説家になりたいという夢を捨てきれなかったので職員の前でもそういった
。
“すごくいい夢だね。でも親の前でも言えるかな?”
…言って見せる。絶対に言ってやる。僕はで見る。絶対にできる。やる気持ちの問題だから。
“お待たせ…あの職員って酷いよね。私も夢を言ったら笑われちゃった。”
…夢を笑うのはいい物なのか?僕の夢を笑うのは構わないが他人の夢を笑うのは許せない。
“もう大丈夫ですよ。どうせ水商売上がりの女ですから…”
…詳しく聞くとこうだ。みっちゃんは親のギャンブルのせいでできた借金を18の時に背負い、夢だった女優の道も大学の明るい道も捨てて夜の街に落とされた。ここに来たのは親と決別するためだそう。
“どうせ優しくされたって何もできませんよ…”
それはできない。放っておくことはもっと許したくなかった、その時だった。
“変わろう、私たち。”