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歓迎会と大喧嘩

 用意された部屋から最初に案内された食堂に戻ったアレンは、すでに集まっている先輩衛士たちの姿を眺めていると、アレンに気づいたキラに招かれた。


「おいアレン!こっちだ、早く来い!」


 キラから名前を呼ばれると周りにいた先輩衛士たちの視線が一身に集まる。分かってはいたことだが、見知らぬ人たちに無言で見つめられると言うのはなかなかに居心地が悪い。

 名前を呼ばれて前にと進んでいくと、先に来ていたのか同じように居心地の悪そうにしているシエルと目が合った。

 こんなシエルも珍しいなと思っていると、キラは両手に持ったグラスを二人へと押し付ける。


「ようしッ!お前ら主役もそろった!グラス持ってこっちを見てくれ!」


 キラが声を張り上げると先輩衛士たちがこっちをみると、自分の分のグラスを持ったキラが声を張り上げる。


「改めてお前らに紹介する。この度新しくこの部隊に着任したアレンとシエルだ。みんな前の任務で一度あってるが、改めて紹介させてもらう。ほれ、なんか一言、あいさつしろ」

「アレン・ガルシアです。よろしくッス」

「シエル・ラミレスです。頑張ります」


 ぶっきらぼうに挨拶をしたアレンとシエルにキラは苦い笑みを浮かべながらも、挨拶も済んだということですか持っていた盃を掲げてみせる。


「まぁ挨拶はこんくらいにして、飯食うぞ!お前ら、カップを持って掲げろ!新しい仲間に───乾杯ッ!」

「「「乾杯ッ!」」」


 カチンッと掲げられた盃を重ね合わせて乾杯を済ませると、アレンとシエルの歓迎会が始まるのであった。


 歓迎会の食事は立食形式になり、皿を片手に並べられた料理から好き物を取って食べていく。アレンもカップを片手に料理をつまもうとすると、背後からバンッと背中を叩かれた。


「おい後輩!楽しんでるか?」

「あっ、どうも」


 始まったばかりでそんなのわかるかと言いかけたアレンは、声をかけてきた衛士のことを見る。

 一人は歳の近そうな赤毛の男、もう一人はアレンよりも一回り上くらいな壮年の男だった。

 名乗り合っていないので名前が分からないでいると、赤毛の男のほうから名乗りを上げてくれた。


「俺は大先輩のウルクだ!いいか、後輩!分からないことがあればどんどん俺に聞くように!」

「バカ、何が先輩だ。二年目の新人のくせに。あっ、俺はガルドだ。よろしくな」

「アレンです。よろしく」


 赤毛の男がウルク、壮年の男がガルドの二人に挨拶を返したアレンは、近くにあったボトルを差し出そうとしたが、ウルクがそれを奪った。


「んなことしなくていいぜ。それより飲め飲め!訓練所じゃ中々飲めなかっただろ?」

「あっ、僕そんなに酒は好きじゃないんで」


 飲めないことはないがあまり酒は好きではないので、この一杯を飲んだらあとはジュースでもと思っていたがウルクは構わずにアレンのカップに酒を注ぐ。


「多少は飲めるようになっておけ、仕事で飲むこともあるからな」

「うへぇ、嫌な職場」

「そういうなって、仕事で飲むと経費になるから金がかからない。酒飲みにはいい職場なんだぜここ」

「うわ、ろくでもねぇセリフ」

「いうねぇ~。だがなぁ、いくら経費で飲めるからって飲み過ぎはダメだぜ、アレン」


 もう酔ってるのか、あるいは先輩風を吹かせたいのかウルクは聞いてもないないことをベラベラと喋ってくる。

 これいつまで続くんだろうか、そんなことを考えているとチョイチョイとガルドが手招きをしてウルクの背後を指さした。


「なにせ昔、ソニアの姉御はそのせいで───」


 饒舌に喋っているウルクの背後にユラァ~と黒い影が現れる。

 それを見たアレンとガルドは、カップを持ってそぉ~っとその場から離れる。


「あっ、おい。お前らどこに?」

「ウルク?」

「はい?───あっ」


 名前を呼ばれ振り返ったウルクは、冷めきったソニアの目を見て顔を真っ青にする。

 ガシャン!

 止めるまもなくソニアが振り上げたカップがウルクの頭を直撃し、無残なカップの残骸が飛び散り哀れなウルクが膝から崩れ落ちた。


「ウルク、いい加減その話はやめなさい。次は殺します」

「あっ……あぃ………っす」


 ガクトと気絶したウルクをサリエルはさっさと回収して、手慣れた様子で治療を施していく。なぜあんなに手慣れいるのだろうか、という言葉はすぐに飲み込んだ。

 避難ところでチビチビと飲んでいたアレンは、同じように移動していたガルドに問いかけた。


「ウルクさんって、結構なバカ?」

「お調子者ものと言ってやってくれ。あいつはあのネタですでに三度やらかしてる」

「なんだ。ただ、学ばない方のバカか」

「わかっていたが、お前かなり口が悪いな」


 田舎育ちなのだから仕方ない、そう答えて酒をあおっているとドンッと急に背中を叩かれた。

 誰だと思って振り返ると、そこには少し顔の赤いキラが肩を組んでいた。


「おいガルド。俺の弟、イジメてないだろうな?」

「イジメてねぇよ。ってか、マジでこいつお前の弟だな。口調とかそっくりだぜ」

「はぁ?誰がこんな───」


 キラと似ているなど心外でしかない、そうアレンが苦言を呈しようとしたがそれを遮るようにキラが声をかぶせてきた。


「いやぁ~、わかるか?さすがはガルドさん!伊達に長く生きてない!」

「伊達には余計だ。後、お前とは五つしか離れてねぇよ!」

「えっ、ガルドさん。二十三?三十代半ばくらいかと思った」

「よしテメェらぶっ飛ばす」


 もう我慢ならんと言わんばかりに拳を握りしめたガルドは、逃げ出したアレンとキラを追っていく。


 アレンたちが追いかけっこを始めた横でシエルはソニアとサリエルの三人で飲んでいた。


「ガルドさん、キラ兄のせいで苦労してるのね」


 結構大きな声だったので、多少離れたところからでも会話が聞こえていた。

 ちなみにシエルもアレンと同じことを思っていたが、本人も気にしているようなので絶対に黙っていようと決めた。すると、同じように飲みながら会話を聞いていたソニアが一つ訂正した。


「勘違いしてそうだから言っておくのだけどね、彼の老け顔は元からよ」

「なんだ、キラ兄は関係ないのね」


 危うく冤罪をかけるところだったと反省したシエルだったが、すぐにその考えを返された。


「いいやそうとも限らんよ。実際にあいつはこの隊に来て、頬がかなりコケているからな」

「あぁ、言われてみれば少しやつれたわよね」


 可哀想に、そう思いながらシエルは空になったカップに酒をついで飲んでいると、料理を食べていたはずのソニアがこちらを見ていることに気がついた。


「どうかしました?」

「ごめんなさい。あなた、かなりいける口だと思ってね」

「まぁ、それなりにですけどね」

「うれしいわ。隊内で一緒に飲める女の子、サリエルくらいだったから」

「へぇ~そうなんですか……ん?」


 グビッと残っていた果汁酒を飲み干そうとしたシエルは、ソニアの言葉を思い出してカップを下ろした。


「はっ、えっ?女の子?サリエル先輩が?女の子??」


 カップから口を離したシエルは、ソニアとサリエルの顔を何度も見ながら盛大に疑問符を浮かべる。

 表情からシエルが困惑していることを察しのか、サリエルは苦笑しながら口を開いた。


「勘違いはされているとはわかっていたが、正真正銘の女だ」

「えっ、あっ!すみません!私ったらとんだ勘違いを………!?」

「良いんだ。この体格と口調だ。初見で見抜かれることなど、ほとんどないからな」


 サリエル本人は笑っているが言ってしまった身としては気にするしかない。居た堪れない気持ちになりながら、シエルがチビチビと酒を飲んでいる。


「気にしなくてもいいわよ。彼女、これでして結構したたかだから」

「女だとわかって舐めてかかった男は、この手でひねり潰してきたからな」


 男顔負けなその肉体なら納得だとシエルが頷いている。


「良いシエル。彼女はね、それをやり過ぎて問題になって除隊しかかったのよ」

「それはあんたもだろ。酒のせいで除隊しかかった副隊長殿」

「あなたね。それは冤罪だと何度も言ってるでしょう」


 さっきウルクも言っていたが、いったい何をやったのか気になってしまったシエルが眉を潜める。それを表情から読み取ったのかサリエルがニヤリと口元を歪める。


「ソニア副隊長は昔、酒場で乱闘して店を半壊させたんだよ。しかも酔っぱらってね」

「なんでまたそんなことしたんですか?」

「違法薬物の取引を張ってたのよ。そしたら酔っぱらいの乱闘に巻き込まれてね、衛士だと分かると私を殺そうとして酒樽に頭を押し込まれたわ」


 だから冤罪なのかと思ったが、だったらなぜ店が半壊になるまでの被害が起きたのだろうか。


「酒樽に入っていたお酒ね。火酒だったのよ。おかげで闘気が暴走して爆発したのよ」


 これはまさに冤罪、ソニアはただの被害者と言われてもおかしくないが、酔っ払った状態で半壊した酒場の中にいたのなら疑われてもおかしくない。

 しかし、当初の目的であった違法薬物の密輸犯には逃げられ、前の部隊内では酒を飲んで暴れた隊律違反者として部隊内では鼻つまみ者にされていたそうだ。


「辞める辞めないの話をしていときに、新しく隊を発足したキラに拾ってもらいこの部隊の副隊長に就任して今に至ります」

「それで未だに噂だけが残ってるってわけね」


 いい例がウルクだろうが、毎度あんな強硬手段で否定していれば真実味が出てしまうのではないかとシエルは思ってしまった。


「しかし、私はこの部隊だから救われたと言っても過言ではないわね」

「それって、どういうことですか?」

「黙っていてもいつか分かるから言っておくわね。この部隊の隊員は程度はあれど、何かしら問題を抱えているわ。もちろんあなたたちもね」


 問題を抱えているのはわかるが、なぜ自分も含まれているのかわからないシエルは、どういうことなのかと問いかけようとしたが突如、ガシャンッと何かが割れる音が聞こえた。


「コラァ!キラテメェ!逃げんなッ!」

「バカ、やめろ!?おい、逃げるぞアレン!!」

「嫌に決まってんだろ、バカ兄ッ!全部あんたの自業自得だッ!」


 未だに続く喧騒に呆れてものが言えなくなったソニアは、サリエルと目を合わせて頷き合うと持っていたカップを置いて騒ぐアレンたちの方へと歩み寄る。


「えっ、うわって、えぇっ!?なにを!?」

「おいサリエル!なにしやがる!!」

「そっ………ソニ、アざ……ん……苦じぃ……」


 歩み寄ったサリエルはアレンとガルドの頭をつかみ上げると、ガツンッと二人の頭をぶつけて昏倒させる。

 ソニアはキラの首を絞めて落とし、ついでに気絶していたウルクの足を掴んだ。

 静かになったと思ったら二人は男三人を引きずってどこかへと連れて行った。

 しばらくしてバァーン!ッと力強く扉が閉められる音が聞こえてきかと思うと、何事もなかったかのように涼しい顔をして戻ってきた。


「えぇっと………アレンたちはどうしたの?」

「気絶させて空いてる部屋に放り投げてきたわ」

「いつものことだ、気にするな」


 いつものことなら仕方ないと、シエルが思っているとサリエルは新しい瓶を持ってやってきた。


「さぁ、主役は減ったがお前の歓迎会は続けよう」

「そうね。バカな男どもは放って置いて、ここからは女の時間よ。飲みましょ」

「あっ、いただきます」


 差し出された酌を受けたシエルは二人に勧められるまま飲んで料理を食べて女たちの夜は老けていくのであった。


 ⚔⚔⚔


 次の日の朝、ガンガンガンッと頭に響く音に飛び起きたアレンは、困惑しながら剣を探した。


「うわわっ、なんだ敵!?」


 辺りを見回して手探りで剣を探そうとしたアレンだったが、続けてかけられた声でハッと我に返った。


「敵じゃなくて朝よ」

「あっ、シエル………ここって………うわっ、なんでキラ兄たちも寝てんだ!?」


 アレンは自分の側で転がされていがキラたち三人を見て顔をしかめる。

 よくもまぁ今の騒音で起きなかったものだと呆れながら、アレンは頭をかきむしりながら見覚えのない部屋を見回していた。


「ってか……ここどこ?」

「部隊の宿舎よ。昨日の歓迎会で暴れてるあんたらをソニアさんたちが気絶させてここに押し込んだの」

「思い出した……瘤になってないよな」


 髪を梳きながら頭をペタペタと触りコブが出来ていないかを確認していると、シエルはアレンの顔にタオルを投げた。


「朝食できてるから顔洗って着替えてきなさい」

「うぇ~ぃ……ところで、キラ兄たちはどうすんの?」

「起きなきゃ後で水をぶっかけるみたいよ」


 そうなのかと起きたアレンは、あくびを噛み殺しながら部屋を出ると自分の部屋に戻って着替えを済ます。

 井戸で歯を磨いて顔を洗ったアレンは、食堂に足を運ぶとすでに朝食を食べ終えたらしいソニアたちが座って出迎えた。


「おはよう。よく眠れたかしら?」

「おはようございます。爽やかとはいきませんが」

「それはよかった。それと食事は当番制だから、そこのボードちゃんと見ておきなさいよ」

「ウッす」


 どこに座ればいいのかと迷っていると、シエルが手招きしてくれたので隣に座って用意された朝食を食べ始める。


「アレン、シエル。それを食べたらあなたたちの初仕事よ」

「仕事って、警邏ッスか?」

「残念だけど捕物よ。それもあなたたちにかかわりの深いね」


 含みのある笑みを浮かべるソニアにアレンとシエルは小首を傾げるのであった。

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