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名もなき村で

申し訳ありません!投稿する話を間違えて投稿してしまいました!

改めて続きのエピソードを投稿いたします!

 アレンとシエルが商人たちのキャラバンに乗って、村を出発してから一月ほどが経っていた。

 出発してからの一ヶ月でキャラバンは二つの村に立ち寄り行商を行いながら、着々と首都へと向かって進んでいった。

 その間、キャラバンは魔物や星獣に襲われることもなく旅路は至って平和であった。

 そんなある日のこと、見晴らしのいい平原を横断中に一頭の馬がなにかに驚き突如走り出した。

 馬は御者の静止の声も聞かずに暴走し草原を走り抜け、その途中で馬車の車輪が大きな岩を踏んだことによって横転してしまった。

 幸いと言ってはいけないが、横転した馬車は御者以外は乗っておらず商品の殆どはダメになってしまったが、御者も馬も怪我は大したことはなかった。



「ミカ姉、馬の治療は終わった?」

「終わったわ。それで馬が暴れ出した原因は何だったのか分かったの?」

「うん、御者のおっちゃんの話じゃ、茂みから出てきた蛇に驚いて手綱の操作を誤ったらしい」

「それは災難だったわね」


 本当にそうだとうなずきあったアレンとミカエラは、治癒魔法で回復した現況である馬を撫でながらそばで半壊している馬車を見ている。

 転倒した衝撃で車軸が折れて脱輪、修理はできないことはないそうだが工具は最低限のものしか積んでおらず、仮にあったとしても修理に必要な材料がないため現状で直すのは難しいそうだ。


「馬車は置いてくの?」

「いいや、無事なのだけ載せ替えて押して次の村に向かうって」


 村自体はあと数時間ほどで着く距離にいたため、壊れた馬車は持っていくことになった。

 今は商人たちは無事な商品を選別して載せ替えている最中だ。作業にはまだ時間がかかるので先に昼食を食べてから出発となった。


「ミカ姉、アレン、ご飯持ってきたわよ」


 片手に三人分の器を持ってやってきたシエル。


「ありがとうシエル」

「昼飯、なに?」

「いつもと一緒。シチューと硬いパン」


 受け取った器を見てアレンはガックリと肩を落とした。

 食料は持ってきていたが、護衛として雇われている手前食事も出てくる。塩味の強い干し肉やチーズなどは少しでも足しになればと渡してしまった。

 スープは美味しい、毎日変わった物が出てくるから飽きない、しかし問題はパンだ。

 日持ちさせるためにと固く焼き上げられたパンは、単体で食べようとすると歯が折れるのではないかと思うほど硬い。なのでシチューに付けて食べるのだが、それでも硬くて顎が疲れる。


「シチューはうまいのに、パンに台無しになってる感じ」

「本当、食べて疲れるなんて思わないよね」

「次の村についたら柔らかいもの食べたいわよね」


 早々に硬いパンに辟易としているアレンたちは、さっさと昼食を片付けて馬車の方へと戻った。


 ⚔⚔⚔


 出発できたのはそれから一時間後、壊れた馬車を人力で押しているため進行速度は遅く次の村についたのは日が暮れた頃であった。

 村についてすぐキャラバンの代表であるヴァルドがこの村の村長と話をしていた。


「おい、お前ら喜べ。壊れた馬車は村の大工が直してくれるそうだ」

「それは良かったな」

「だが軽く見てもらったが直すのに十日ばかりかかるそうでな、しばらくはここに滞在だ。商売の期間は二日!それが終わったあとは出発までは自由だ。ただし羽目を外しすぎねぇこと。以上!」


 ヴァルドから簡単な説明を受けてその日は解散となった。


 村には行商人たちが泊まるためのゲストハウスが男女別で二軒用意されていた。

 少し手狭ではあったが、アレンたち護衛も止まらせてもらった。

 ちろん大切な商品になにかがあってもいけないので、交代で馬車の見回りをしながら休憩を取ったアレンたちは、朝になると同時に始まった市場を馬車のそばで見ていた。


「うちの村でも思ったけど、すごい人だかり」

「こんな世界だからね、少しでも外から入るものがほしいのよ」

「そうだな。んでもって、問題を起こしてキャラバンが来なくなると困るから、問題を起こす人もいないか」

「まぁ、零じゃないでしょうけどね」


 今のところは問題がなさそうだが、間違いが一つでも起これな喧嘩が起こる。

 そうなったらアレンたちの仕事になるのだが、暇なことはいいことだと二人はのんびりと商人と村人たちのやり取りを見守っていた。


「おぉ~い、坊主たち!交代だぞぉ~」

「待たせたな」

「平気っすよ、平和なもんでしたし」

「じゃあ後はよろしくお願いします」


 交代に来た護衛のおじさんたちと交代してアレンとシエルは休憩に入った。


「あぁ~、腹減った。昼なにかな?」

「今日は新鮮野菜たっぷりのスープと、川魚のパイだって」

「美味そうだな。ってか、あの硬いだけのパンじゃなかったらなんでもいいや」


 切実な願いとして、しばらくはあのパンは食べたくないと思ったアレンだった。


「確かに硬すぎるわよねあのパン」

「噛み切るだけで葉が折れそうなるしな」


 二人揃ってあの保存のためにしか利点がない硬すぎるパンの酷評を口にしながら、この村の中に用意されていたゲストハウスに向かうと、遠くからでも料理のいい匂いが漂ってきた。

 腹も減っていたので、急いで向かおうとした二人だったがその時何やら揉めている声が聞こえてきた。

 遠くからではあったが同じ護衛の一人と、剣を持ったアレンたちと同じくらいの歳の少年が言い争いをして周りが止めようとしているのが見えた。


「なんか揉めてるな」

「そうね、行ってみましょ」


 小走りでゲストハウスまで向かったアレンたちは、ようやく言い争いをしている二人の声が届く距離までたどり着く。


「だから良いじゃねぇかよ!」

「ダメだって言ってるだろうが!」


 揉めている彼らの側に駆け寄った二人は、周りで見ている人たちになにがあったのかを訪ねた。


「ねぇ、なにがあったの?」

「ん?あぁ、なんかあのガキが俺達のキャラバンに乗せてほしいんだと」

「乗せてあげればいいのに」

「バッカッ!俺たちの一存じゃ決められるわけ無いだろ。リーダーの承認がいるんだよ」


 確かにとアレンたちは思った。

 二人もこのキャラバンに同乗させてもらえたのも、村長とキャラバンの責任者であるヴァルドに許されてのことだ。護衛が勝手に決められることではない。

 護衛ではあるが、一応は他人である二人はここにいても邪魔にしかならないので、速く昼食を取って休もうと思いその場を立ち去ろうとしたその時だった。


「おいそこの銀髪のお前お前ッ!」

「ん?なに」


 掛けられた声に反応したアレン、一応ここに銀髪は自分ひとりなので間違いではないだろうと思い振り返った瞬間、アレンは背後にいた少年が自分に向けて剣を振り下ろすのを目にする。


「────ッ!?」


 完全な不意打ちに避けるのは間に合わない、だからと言ってこのままなにもしなければ切り殺されてしまう。身を守る手立てを考えようとしたアレンだったが、考えるよりも速く体が動いていた。

 剣が振り下ろされる間際、アレンの左手が左腰の下がっている深紅の剣を逆手で握ると、引き抜きながら振り下ろしの軌道に向けて付き出す。

 ギリギリのところで深紅の剣の柄頭が少年の剣を受け止めた。


「お前ッ!なにするんだよッ!!」

「ウオッ!?」


 剣を押すと少年の身体が後ろに傾いた。

 その隙を突くように空いた胴へ蹴りを放ったアレンは、少年が後ろに下がったのを見て左手で深紅の剣を引き抜くと、逆手で深紅の剣を構えながら少年を牽制する。


「おいッ、危ねぇだろ!いきなり何しやがるッ!」


 叫びながらアレンは横目でシエル達を見ると、彼女たちも困惑しながらも全員が武器に手をかけていた。

 何を思ってあの少年が剣を抜いたのかは分からないが、辺鄙な村と街を行き交う唯一の交易キャラバンの護衛を襲うなど、もはや頭がおかしいとしか思えない。

 いったい何を考えてこんなことをしたのか、アレンたちが少年の返答を聞く。


「お前、護衛なんだろ?俺が勝ったら護衛として雇ってくれッ!」

「あっ、こいつバカだ。なにも考えてない、スッゲェバカなんだ」

「あぁ~ん!?誰がバカだって!人にバカって言う方がバカなんだよ、このバァ~カッ!」

「語彙のレパートリーが近所の子供並みしか無いよこいつ」


 少年のバカさ加減に呆れて物が言えなくなったアレンは、牽制する馬鹿らしくなったので剣をおろしてソッと深紅の剣を鞘に戻した。


「おいッ!ッテメェ、なに勝手に剣を収めてやがるッ!俺と戦えよッ!」

「やるわけ無いでしょ。ってか、君さぁ。キャラバンの関係者をいきなり斬り付けたりして、村にキャラバン来なくなったらどうするつもりなんだよ」

「そんなわけねぇだろ!」

「いや有るからな?」


 アレンが他の護衛仲間に視線を向けると、みんな揃って頷いている。

 旗色が悪くなり奥歯を噛み締めた少年、その一瞬の隙を突くように駆け出したシエルは、移動しながら矢筒から矢を一本取り出した。


「───ッ!」


 シエルが動いた事に少年も気づいたが、不意をついたシエルの動きを少年が読めるよりも早く取り出した矢を弓に番えて即座に放った。

 放たれた矢が少年の握っていた剣の腹を穿つと、押し負けて遠くへと飛ばされていった。


「あっ」

「よし坊主ッ!確保だッ!」

「了解ッ!」


 護衛のおじさんの言葉に答えたアレンは、飛ばされた剣を拾おうとした少年の手を掴むと足をかけて地面に転がし、そして腕をひねって押さえつける事によって無力化した。


「ぐっ、クソっ!テメェ離せこのッ!」

「うるさい!大人しくしてろッ!」

「いっ、いででッ!?やっ、やめっわかった、わかったからッ!?」


 暴れる少年の腕を強めに曲げところで降参の合図が来たので、力を緩めながらこの場のまとめ役であるおじさんの方を見る。


「それで、こいつどうするの?この村の村長のところにでも連れてく?」

「被害者のお前がそうしたいんならそうすりゃいいが、面倒だからお前が連れてけよ」

「説明が面倒なんだけど」

「んじゃあ、無罪放免ってことで行っていいぞ坊主」


 被害者であるアレン自身、この少年を罰するつもりもなかったのでその決定に従って拘束を解くいた。

 拘束が解かれて起き上がった少年は、締められた腕を抑えながらアレンのことを睨んでいた。


「フンッ!これで勝ったと思うなよ!」

「別に勝負なんてしてないんだがな………」


 やはり村長に突き出して厳重に講義をしたほうが良かったのではないかと思い直しかけたアレンだったが、そこに割って入るようにミカエラによって注意がそれた。


「あの子、さっきから騒がしいけどなにしてるの───って、アレン!あんたまさか、その子と喧嘩なんかしてたんじゃないでしょうね!」

「ひっでぇ!ちょっとミカ姉!いったい僕のことなんだと思ってるんだよ!?」

「そりゃ、常日頃の行いがあれじゃあねぇ」


 被害者であるはずのアレンが悪者のように扱われたことに反論したところ、近くにいたシエルがボソッと呟いた。


「誰が素行不良者じゃ!それを言ったらシエルもだろッ!」

「はぁ~?こんなにか弱い女の子の私を!喧嘩っ早いあなたと一緒にしないでくれるかしら?」

「あぁ~?どこがか弱いんだよッ!弓ばっか引いてるせいで筋肉付きまくってるくせに!」

「アレン、それ禁句だって前に言ったわよね?全身くまなく矢で射るわよ?」

「やれるもんならやってみろよ、全部切り落としてあげるからさ」


 唐突に喧嘩を始めるアレンとシエル。そしてこの騒動の原因となったミカエラは唖然としていた使用の方に歩み寄る。


「ごめんなさい、あの子達あれでいつものだから、気にしないであげて」

「いや………あの、その………はい」


 元を正せば自分のせいなのだが、ここは下手なことは言わないほうがいいと思いギュッと口をつむぐのであった。


 アレンとシエルの喧嘩が終わると、ミカエラが昼食の乗った皿を持ってきてくれたのでお礼を言うと、適当なところに腰を下ろしてようやく昼食にありつけた。


「喧嘩するほど仲がいいとは言うけど、いいかげんにしなさいよ」

「別にシエルが喧嘩ふっかけてくるから買ってるだけ」

「アレンが大人しくしてくれたら文句ないわ」


 アレンとシエルが同時にメンチを切ると、ミカエラは呆れている。


「それはそうと、お前なんでまだいるの?」


 アレンはミカエラの横に腰を下ろしている少年を見る。


「なんだよ、いちゃわるいのか?」

「悪いというか、護衛隊に入りたいならキャラバンのみんなが帰ってきてからのほうが良いよ」

「それはさっきあのおっさんに聞いたよ」

「じゃあ、なんでいるのよ?」

「謝りたかったんだよ………その、すまなかった」

「気にしてなよ。ってか、今更だけどお前名前なんての?」

「レンだ、お前はなんてんだ」

「アレンだ。よろしく」


 差し伸べられた手を取って握手を交わす二人、その光景にさっきまで本気でやり合おうとしていたあの光景はどこに?っとシエルは思った。


「それでこっちがシエルとミカエラ姉」

「よろしく」

「よろしくね」


 簡単にアレンが二人の紹介もしたところで、後の時間はどうするかを考えているとレンがある提案をした。


「なぁアレン、暇なら稽古に付き合ってくれよ」

「稽古?まぁいいけど、シエルはどうする?」

「ミカ姉と散歩してくるわ」

「そう。念の為、これ持ってきなよ」


 アレンは腰に挿していた短剣を投げ渡すと、短剣を受け取ったシエルはお礼を言って立ち去った。

 散歩に出かけるシエルとミカエラを見送ったアレンは、稽古をするためにと剣と鞘を紐で結んでいると同じように剣を固定していたレンが話しかけてきた。


「なぁなぁあのシエルって娘、お前の彼女か?」

「幼馴染であって彼女ではない………はず」

「なんだよそれ?」

「ちょっと複雑で、微妙な関係ってこと」


 あの星獣との戦い以降、アレンの中でシエルトの関係性にうまく説明が出来なくなっている。

 あのときのあとから特に話題にはしておらず、シエルも特に気にした様子もなくいつも通りの態度で接してくるのでどう説明していいのかわからないのだ。


「微妙な関係ねぇ、いいなぁ~そんな子がいるなんて」

「お前にはいないの?」

「この村、俺以外に若いやつがいねぇの………いや、一人いるんだけどな」

「いるけど、なんだよ?」

「妹なんだよ。双子の」


 双子と聞いてアレンは少しだけ表情を変えた。


「お前、双子なんだ。珍しいな」

「初めて聞くやつはだいたいそんな反応するよ」

「見かけることが殆どないからな。ちなみに僕は産まれて初めて出会いました」

「そうかいそうか。んじゃ、そろそろ始めようぜ」


 お互い剣の鞘がしっかりと固定されているのを確認すると、少し離れたところに立ち剣を構える。

 向かい合うように立った二人は開始の合図として小石を真上へと放り投げると、それが地面に落ちた瞬間激しい撃ち合いが開始されるのだった。


 ⚔⚔⚔


 村の中を散策していたシエルとミカエラは、初めて見る故郷以外の村に新鮮な気持ちになっていた。


「なんというか、ちょっとワクワクするわね」

「ミカ姉、村の外なんて普段出ることないもんね」

「だからはじめの夜なんて眠れなかったわよ。いつ星獣に襲われるか、そればっかり考えてたもの」


 村を出てしばらくミカエラは眠ることができなかった。

 護衛が守ってくれているからと行って、ここは村の外、いちでもどこからでも星獣に襲われる危険性がある。もしこそうなったときの事を考えたときの恐怖は今でも感じている。


「あのときのミカ姉、目の下の隈とか、色々と酷かったわよね」

「やめてよ、年頃の乙女としてはずかしいから」

「恥ずかしいといえば、水浴びができないのが辛かったわね」

「そうそれよ!贅沢は言わないからできるなら二日に一回は水で身体を拭きたいわよね」


 うんうんと頷き合うシエルとミカエラ、年頃の女の子としてはやはり身綺麗にしておきたい。


「あっ、ねぇシエルあそこ」

「ん?わぁ~、すごいお花畑だ」


 ミカエラが指さした先にあった花畑を見てシエルは小走りで走っていく。

 二人の見つけた花畑は誰かの土地のものなのだろう。取り囲むように柵で囲われていたため、二人はそれ以上中には入らなかったが柵のそばから美しい白い花を見ていた。


「あの花、月下草ね」

「月下草……どこかで聞いたような名前ね」

「昔教会で育てたことがあるわよ。覚えてない?」

「そう言われれば手伝ったことがあるような………なんだっけ、光るんだっけ?」


 なにせ十年ほど昔に一度だけ育てたことがあったような花だったため、記憶がかなり曖昧だったシエルにミカエラはあの花について追加で説明を行った。


「あの花はね、月の光を浴びて光を放つのよ。花の蜜には疲労回復や免疫力を高める効果があって、栄養剤の材料になるわ」

「あぁ~、なんとなく思い出してきた。あれって失敗しちゃったのよね?」

「違うわよ。悪ガキ共が密を全部食べちゃって受粉できなくなったのよ」


 そうだったとシエルは当時のことを思い出した。

 あれは確か六歳か七歳のころ、アレンと共にシスターたちの手伝いで育てた月下草の密を兄貴分たちに飲み干されてしまったのだ。

 元々月下草の密は薬として用いられる他に、甘味としても重宝されていたそうで手伝ったお礼にとシスターから少しだけ飲ませてもらったが、とても美味しかった思い出があった。

 しかし、普段甘いものなど食べる機会の少ない少年たちはこっそりと密を飲むどころか、花まで食べてしまったのだ。


「あのときのシスター、怖かったわ」

「お兄ちゃんたち、大泣きだったもんね」


 昔のことを懐かしく思いながらも花畑を見ていた二人、そこに誰かがやってくる気配を感じた。


「あの、あたしの花畑になにか用ですか?」


 声をかけられて振り返った二人は、大きな麦わら帽子を被った黒髪の少女を見て彼女がこの花畑の主なのだと察した。


「ごめんなさい、懐かしい花だったからつい視ちゃってたの」

「ならいいんですけど……もしかして商人の方ですか?」

「いいえ、護衛と同行人」


 厳密に言えばシエルも同行人なのだが、説明が面倒なのでこれでいいかと思った。


「ねぇ、この花畑はあなたが?」

「まぁ、はい。本当はあたしの兄もいるんですけど」

「兄妹で作ってるんだ」

「っと言っても、殆どあたしがなんですけど」


 なんだかどこかで似たような話を聞いた覚えのあったミカエラが、隣のシエルを見ると怒りの表情を浮かべていた。


「なにそれ、酷いお兄さんね!女の子一人にこんな大変な作業させるなんて!」

「わかってくれる!?」

「もぉ~わかるわかる!ホント、痛いくらいよくわかっちゃう」

「まさか、あなたも苦労して?」

「私は幼馴染なんだけどね、私が何度言っても畑仕事しないし、迎えに行ったら逃げるしで最終的には毎回強硬手段よ」

「あたしだってそうよ!あいつ、すぐ逃げるから引きずって連れてきても逃げるし、今日だって朝から手伝ってって言ってるのにどこか行っちゃたし」


 彼女たちが件の幼馴染と兄の話をしているとき、その二人は同時にくしゃみをしていた。


「なんか、気が合うわね。私はシエルあなたは?」

「あたしはリンよ。よろしくね」


 改めて名乗りあったシエルと黒髪の少女リンは改めて握手を交わすのであった。

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