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教師と学園と大切な人と

 教師と言うのは傲慢で、いつも人を見下している人物のことを言うと、トジはずっと思っていた。


 少なくとも、当時のトジが通っていた学園ではそうだった。


 自らが正しいと決めつけ、トジが新しい理論や魔法の効率化を発見しても、決してそれを認めず、次の日にはまるで自分が見つけたかのように自慢げに話す。


 トジがこちらが先に見つけた物だと言っても、教師にとっては関係ない。


 教師には見えない権力があった。


 誰も逆らえず、黒を白と言えば白になるような力。


 皆分かっている。


 教師がずる賢く、卑怯な連中だと。


 けれど、それを口に出せば、その後の人生がどうなるか保証は出来ない。


 学園を辞めさせられ、魔法界に悪い噂を流され、まともな職にはありつけなくなるだろう。


 魔法界を追放された魔法使いは、噂の届かぬ田舎に行くか、冒険者になるかの二択。もしくは悪の身となるか。


 リーライン魔法学園はそれほどの力を持った学園であり、その権力を意のままに操れるのが教師たちであった。


 学園は一種の治外法権だった。


 トジのような生意気で、能力のある者はすぐに標的になる。


 どれだけ良い点を取ろうと、真面目に授業を受けようと、新しい魔法を発見しようと、全てが教師のおかげ。


 教師がいるから出来たこと。


 生徒が理論を見つけても、論文に名前が載るのは教師であり、生徒の名前は小さく協力者の一人として書かれるのみだ。


 ふざけるな。


 そう声を上げた次の日には、その者の席はない。


 だから、トジは教師に対し敵対心がある。


 失くせるはずがない復讐心。


 絶対に許さないと心に決めていた。


 けれど、当時トジをいたぶった教師たちは皆死んだ。


 時の流れには逆らえなかったのだ。


 あれだけ、威張り散らし、人の物を横取りし、自分の利益しか考えない奴らも、時の流れには勝てなかったのだ。


「ワシは違う」


 トジ・ウジーノは違った。


 時を戻す魔法。


 神の御業と呼ばれ、禁忌ともされている魔法を、発明した。


 そして、今ここに、トジは十代の肉体で二度目の学園生活を送っている。


 これがすでに復讐なのではないか?


 時々そう思う。


 けれど―――


「まだじゃ。まだ足りぬ」


 そうだ。こんなものであの時の恨みは晴れない。


 何もせずに、満足するなど出来るはずがないのだ。


「ワシはやらねばならぬ」


 絶対の復讐を。


 狂気の復讐を。


 大切な人の為の復讐を。


 トジは晴れ渡った空を見上げる。


 気持ちの良い空だ。澄み切って晴れやかな気持ちにすらなってくる。


 それでも、トジは拳を握り込み、睨みつける。


 黙って目を瞑り、息を吐く。


 それから呟くように言う。


「……ミラ先輩」


 学園によって失った大切な人の名を。


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