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11.ペルラの奮闘記 B

 ペルラは、両親が憎み合っていることを知っていた。互いに愛人を持ち、冷めきっていることも。


 それでも、幸いにも彼らはペルラのことを溺愛している。

 貴族らしい欲深さは持ち合わせていたが、彼らがつまらないプライドからすれ違っているだけで、じつは互いに愛を持っていることもペルラは知っていた。


 だから、そこを取り持つだけで父の命はかんたんに救えた。



 けれども、母が父に向けた刺客。

 あの出来事は再現しておきたかった。それは、妹がほしかったからだ。ペルラのことを純粋に慕ってくれる、愛らしい妹がほしかった。


 前の生で目をつけていた少女がいた。

 ヴィオレッタ・ファイルヒェン。すみれ色の髪に金の瞳を持つ小柄な少女。


 ほとんど夜会にも出て来ない深窓の姫君。

 男爵令嬢という身分で辺境住まいではあるが、その瞳が王家の色であることから調べさせてみると、王族の傍系であることがわかった。


 その日、ペルラは父の馬車に無理やり同乗した。そして、行き先を変えた。


 ファイルヒェン家がわずかな護衛を連れてピクニックを楽しんでいるという情報を得たからだ。あらかじめ雇っておいた破落戸に襲われているふりをする。


 エメリーを介してしておいた破落戸への命令は「貴族を皆殺しに」。


 破落戸たちは喜々としてペルラたちを、そしてファイルヒェン家を襲った。あやうくヴィオレッタにまでその手が伸びそうだったので、御者に紛れさせていた男装のエメリーを差し向けた。


 ヴィオはずっと錯乱していたが、何年もかけて落ち着かせ、どろどろに甘やかした。人形のように着せ替え、貧乏男爵家では食べられないようなおいしいものをたくさん与えた。


 ままごとをするように。


 いつのまにかヴィオもペルラのことを慕うようになっていた。ーーふたたび悪夢を見て錯乱するまでは。奇しくもそれは、ペルラが前の生で処刑された花宵の夜であった。





 キャンディスとトルペについても同じように。男たちを悪者に仕立て上げ、心を傷つけ、優しくしてやればすぐにペルラを慕うようになった。



 問題は母の病だった。これは父の愛人で母の侍女でもある女が、こっそりと遅効性の毒を飲ませ続けたことで、難病である星点病にかかってしまっていたもの。


 ペルラが戻ってきたときには、すでに病を得ていたので、どうしても早めに特効薬を作っておく必要があった。だから、キャンディスへの接触を優先した。


 この一件は、のちにセオドリク様に飲ませる毒にも役立った。毒を少し変質させてみたところ、飲ませている間だけ体調不良を引き起こすものができあがった。


 一応解毒薬も作ったが、それがなくとも毒の投与をやめるだけで事足りるだろう。


 しかし、キャンディスにそれを知られては困る。彼女には、王子は病にかかっており、星点病と同じく難病と言われている月紋病ではないかと伝えておいた。



 また、前の生で、聖女アレッタの母方の実家が営んでいた商会の人気商品を覚えていたので、それを何年も早く開発し、利益もあげた。


 両親ともに存命しており、いろいろ後ろ暗いことをやっているからお金も貯まる一方だった。


 こうしてペルラは、着々と自分の王国を築いていったのである。

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