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サムーイン国にて


上半身裸の男にお姫様抱っこされて早数時間。


状況が飲み込めなくて呆然としていたら、いつの間にかかなりの時間が経過していた。


そして私は今、雪景色の美しい大自然の中にいる。


「あの……。」


「どうした?長時間の移動で疲れたか?」


くっ、カッコイイ。


名も知らぬ上半身裸の男なのに、笑顔は優しげで素敵だ。


何故かおでこを怪我しているが。


顔の良い男は上半身裸でも、言動がよくわからなくても許される。


おでこに真新しい傷があっても、イケメンに罪はなし!


「って、私!違うでしょ!!」


イケメン最高ー!な思考を払い除ける為、自分の頬を2回ペシペシ叩くと、名も知らぬ半裸のイケメンの男は目を輝かせて私を見ている。


「かにゃでの1人脳内ボケ&ツッコミの仕草!!モノローグが見えないのは残念だが、ツッコミを実際に見られるとは幸せの極みがここに!」




感動された?


何故?


それよりもどうしても気になる事がある。



「あの……寒くないんですか?」


どこの誰だかは知らないけど、この雪景色の中で半裸は寒いと思う。


「大丈夫だ。鍛えているからな。」


「………そう、なんですね?」


体を鍛えれば寒さは感じなくなるのだろうか。

まさかとは思ったが、至極真面目な顔で言われてしまっては、そうなのかと納得してしまう。


「冗談だ。」


「へっ?」


してやったりと言った感じで笑う上半身裸の男が憎らしい。


一瞬ポカンとしちゃったじゃない!

睨んでやる。


「くっ…、推しが尊い。」


睨む私から顔を逸らす上半身裸の男は、半裸だけどやはり顔が良い。


「かにゃでには馴染みはないだろうが、オレ達の周囲はかにゃでが寒くないように魔法で気温コントロールをしているんだ。」


「まほ…う?気温コントロール?」


魔法……って、弟がやってたゲームのキャラクターとかの攻撃方法、よね?


「体感してもらった方がわかりやすいだろう。」


「えっ?寒っ!!」


急に寒くなった。

今までどちらかと言えばぽかぽかして暖かかったのに、いきなり冷凍庫内にいるかのような寒さだ。


「寒いだろう?」


本っ当に寒い!!


よくよく考えれば、雪景色の中を猛スピードで走っているんだから、上半身裸の男のように半裸じゃなくても寒いはず。


「これが魔法だ。」


私の周囲の気温がまたふわっと温かくなった。


これが……魔法。


「もしかして、私がここにいるのも魔法なんですか?」


「かにゃでがここにいる理由はわからないが、何かしらの力が関与しての事だろう。」


この上半身裸の男にも、何故私がここにいるかはわからないらしい。


「かにゃではここに来る直前の事は覚えているか?転移の魔法……光に包まれたとか。」


上半身裸の男に言われてここに来る直前の事を思い出そうとする。





「私……何してたっけ?」


光に包まれた記憶もなければ、ここに来る前に何をしていたかはわからない。

私の荷物は、楽器ケースに入った私の愛用のフルートだけ。


服装は、高校の制服。



ここに来る前の記憶はない。

 



「高校の制服って事は、45章以降か。」


「45章?」


45章って、連載してる漫画みたいな言い方ね。


「貴方は私の事を知ってるみたいですけど……どこかでお会いしましたか?」


名前も知ってたし、弟がいる事も知ってたし。


「……、詳しくはオレの住居に到着してから話そう。」


上半身裸の男の家?

私、この上半身裸の男の家に連れ込まれるの?


「警戒するなと言いたいが……女性はいても圧倒的に男が多い世帯だ。男に声をかけられたらぶん殴る位はした方が良いだろう。」


「ぶん殴る?!」


「いや、男なんぞ殴ったらかにゃでの手が汚れる。」


至極真面目な顔してるけど、この上半身裸の男の家の男の人達はそんなに汚いの?


そんな不潔な所には行きたくないなぁ。


「大丈夫だ。かにゃではオレが守る。」


かにゃではオレが守る……上半身裸だけど。


はい!イケメンにオレが守るをいただきました!!


オレが守るなんてパワーワード初めて言われたよ。


オレが守る。オレが守るかぁ。


しかもイケメン!!


「って!そうじゃない!!」


危機感を持て、奏!!


殴っただけで手が汚れるほど汚い男達よりも、上半身裸で雪景色を猛スピードで走ってる名前も知らない、この男の方が不審だからっ!!


「くっ、モノローグが見たい!!」


2回頬っぺたを叩く私の姿を見た上半身裸の男がギュッと目を閉じると、感動の涙が飛び散った。

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