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3スパ 特定ギリギリの赤スパを投げて復讐することにした

あまりにも大きいショックと全力疾走のアドレナリンに破壊された脳を働かせ、罰の内容を考える。


 正体をネットにバラす? いや、それは洒落にならない。別に殺したいほど憎んでいるわけではないのだ。ほどほどに痛い目にあってもらえればそれでいい。



「スパチャありがとにゃーん♡」



 流しっぱなしになっていたスマホからま~や様……いや、長津田の声が聞こえた。スパチャ……そうだ、これだ。


 特定されないギリギリの情報を含んだスパチャを送って長津田に心理的な負担をかける。これなら罰としてぴったしだ。ていうかやばい。めちゃめちゃ面白そ…………クソッ、なんて過酷な罰なんだ!


 俺だってこんなことしたくねぇよ! こんなま~や様を傷つけるよな真似っ。でも……でもよ! 仕方ねぇんだ……。


 金額は……まぁ5万でいいか。金ならいくらでもあるし。


 俺はウキウキでYoutbe用の口座に入金し、満面の笑みで送る文章を考える。まぁ大勢の目に触れるものだし、キモさを抑えて真面目な感じで行くか。


 ワクワクを抑えきれない俺は、つらつらとスマホに文章を打ち込んでいく。


『ま~や様の飼い犬

 ¥50000


ま~や様観察日記 幸せスクールライフ編01


夢を見たんだ。幸せな夢を。俺とま~やは幼馴染で同じ高校に通ってる。幼馴染だから登下校はいつも一緒。

いつもみたいにイチャイチャしながら二人で登校すると、妬んだクラスメートが野次を飛ばしてくる。「お熱いねぇ、お二人さん!」ってね。まぁ、よくあることさ。

そんなかわいそうな野次に見せつけるかのように俺は耳元で囁く。「愛してるよ、ま~や」。照れたま~やは俺の首を絞めた挙句足蹴にして罵るんだ。「公衆の面前で愛を囁くんじゃないにゃっ!」ってね。

やれやれ、困ったお姫様だぜ……(続く)』



 俺は高鳴る鼓動が導くまま、投稿ボタンを押した。


 突如として出現した赤スパに気が付いたま~や様は、



『この怪文書はどういうことなのにゃ……あまりにもキモすぎて鳥肌がぶわぁってなったにゃん……』



 今日の昼の出来事を盛り込んだ自信作だったのだが、普通にキモすぎて俺の意図は気付かれなかったらしい。しょんぼり。



『キモすぎ』『5万払って送る内容がこれかよ』『死んだほうがいい』『敗戦国の末路』



 コメント欄は大荒れだった。やめてよお前ら。傷つくだろ。俺は静かに泣いた。





 翌日はテスト返しだった。といっても俺は成績のいい方なので、ぼんやり外を眺めながら今日送るスパチャの内容を考える。



「おい長津田。もう少し頑張れ」

「はぁい……」



 眼鏡をかけた数学教師が呆れた目で長津田を見る。どうやら点数があまりよろしくなかったらしい。



「ちょ、ユナぴ16点て! やばみざわ超えてやばみ湾なんだが!」



 長津田が席に戻ると、テスト用紙を見た淵野辺が半笑いでそう言った。



「う、うっさいなぁ! つーか、アンタの教えてきた範囲が間違ってたからでしょ!」

「自己責任なんだが~?」



 あ、これにするか。



 

 夜。ま~や様のゲーム配信にて。 



『ま~や様の飼い犬

 ¥50000


ま~や様観察日記 幸せスクールライフ編02


ヤッホー

今日はテスト返しだったネ。僕は96点だったけど、ま~やちゃんは赤点⁉️‼️

配信大変だけどお勉強はサボっちゃメッ!だゾ(^^)/

おじさんも鬼じゃないから、今度勉強教えてあげるネ(*´ω`*) 

明日も元気にガンバロウ(^^♪ (続く)』


『うわ、ガチで反応し辛いタイプのやつがきたにゃ……にゃ?』



 昨日と同じくドン引きされたが、今日は少し様子がおかしい。どうやら気が付いたらしい。スパチャを読み上げたま~や様は、5秒ほど無言になった。

 


『にゃ……なんでもないにゃ』



 が、ここは流石のプロ。すぐさま通常モードに戻り、配信を再開する。



『……は、配信続けるワン』



 冷静かと思ったらめちゃくちゃ動揺してた。




 翌日。長津田は少し様子がおかしかった。教室につくなりキョロキョロと辺りを見回し、まるで何かにおびえているようだ。


 かわいそうに。一体誰が長津田を追い詰めたんだ……許せねぇ! 正体を現さない悪漢に復讐を誓っていると、亮が登校してきた。



「あ、蓮也。おはよー」

「はろはろにゃ~ん♡」



 挨拶返しは大事だよね。


 びくぅっ! 長津田の肩が大きく跳ねた。あと蓮也が心底気持ちが悪いものを見る目で俺を見てきた。



「それ、ま~や様への侮辱?」

「いや? 賛歌だな」

「ならいいや。許すよ」



 何様だよ……。





 五限目の体育。今日は跳び箱だった。とはいえ俺は運動も得意なので、ぼけーっと順番を待ちながらスパチャの内容を考える。



「次! 長津田!」

「はいっ」



 体育教師に呼ばれた長津田が跳び箱に向けて疾走する。が、



「うぇぇっ! ムカデいるんだが!?」



 淵野辺が叫んだ。どうやら虫が出たらしい。



「ひぇっ!?」



 それに驚いた長津田が跳躍の瞬間にバランスを崩す。



「いったぁ……!」



 コケた長津田は普通に痛そうだった。かわいそうに。


 ……あ、これにするか。

 




 夜。今日は雑談配信だった。



『ま~や様の飼い犬

 ¥50000


ま~や様観察日記 幸せスクールライフ編03


とびばこ(笑)』



『にゃ……』



 俺の赤スパを見たま~や様は黙ってしまった。それからしばらくして……



『き、今日の配信はここまでにするにゃ~』



 さすがのま~や様も事態の異常さに気が付いたらしい。配信を切ろうとするが……



『と、思ったけどやっぱり続けるにゃ』



 どうやら決めた配信時間は守るつもりらしく、そのまま続行した。そこから先、ま~や様は一切ボロを出さず、動揺した様子もなかった。


 プロ意識たけぇ。さすがま~や様だぜ……。


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