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69.どうにかならないのでしょうか


「すべてわたくしが悪いのです。妹がこうなったのも、わたくしの責任です」


 頭を下げたまま、レーネはそのように言いました。

 ミーネは姉の様子に困惑しているようです。


「お姉さま、何を言い出すのよ」


 するとすぐにお母さまはミーネを叱りました。


「あなたは本当にお黙りなさい。今はわたくしがレーネと話しているのです。口を挟むことは許しませんよ。レーネ、あなたは妹の後始末をしてきたのですね?」


「いいえ、すべてはわたくしの不徳の致すところですわ」


「ほら、聞きまして?お姉さまがすべて悪いんだわ」


 つい先ほどは困惑しておりましたのに、この変わり様にはまた驚かされてしまいました。

 ミーネは笑顔で皆を見渡しましたけれど。


「あなたは黙りなさいと言っているのです。物理的に口を閉じてあげてもよろしくてよ」


 ぴしゃりと言われて、ミーネはむすっとした顔ではありますが、口を閉じます。

 お母さまがそう言ったなら本気だと分かっているのでしょう。


「訴訟についてはすでに調査済みです。あなたの二件の訴訟についても、先にミーネが関わっておりましたね?」


 レーネは答えませんでした。

 代わりにミーネへと皆の視線が集まっております。


「な、何よ。わたくしはお姉さまには何もしていないわよ!」


 ミーネはどうしても黙っていられないようです。

 言った後に口を押さえるくらいですから、今は話さない方が良いと分かってはいるようなのですが、どうしても口を開いてしまうのでしょう。

 そういうことは、私にも覚えがあります。


「黙らっしゃい!」


 お母さまの強い声に、私はやはり背筋を伸ばしてしまうのでした。

 ジンも気のせいか、同じように背筋を伸ばしているように感じるのですが。

 ちらと見ましたら、壁際に立つハルの背中も真直ぐです。


「レーネ、あなたの処遇に関しては、わたくしたちにも考えがございます」


「いいえ、おばさま。わたくしを助けるには及びませんわ。わたくしは常々ミシェルお姉さまに酷いことを言ってきました。今日だってこちらに来て、侯爵様の前でもミシェルお姉さまを悪く言いましたもの」


「娘に意地の悪い言葉を掛けてきたことを認めるのね?」


「認めますわ。事実ですもの」


「何故そのように?親の件に関しては、疑っていたのでしょう?」


「それは……わたくしはミシェルお姉さまが羨ましかったのですわ。ミシェルお姉さまは両親に愛されて、弟とも仲が良く、領内の皆様にも可愛がられて……。どうしてわたくしの両親はこうも違うのかしらと思ったら、悔しくもありましたの。それでも分かっておりましたわ。ミシェルお姉さまが何も悪くないことは。でもミシェルお姉さまはどんなに酷いことを言っても、変わらずにわたくしに笑い掛けてくださって。愛されている方はこうも違うのかと思いましたら、ますますみじめになって、口が止まらなくなってしまいましたの」


 胸がきゅうっと縮んだように苦しくなりました。

 私は何も知らず、ただレーネを可愛い子だと思っていたのです。


「だからこそ結婚に憧れがございました。この家から逃れ、わたくしも愛し合える家族を築くのだと。ですのにどこに顔を出しても、あの両親の娘か、あの妹の姉か、そう囁かれ、王都ではわたくしの結婚は絶望的なものでした。けれども領地に戻って結婚することは、両親のどちらもいい顔をしませんでしたので願うことも無理なのだろうと。そう思いましたら、またミシェルお姉さまが羨ましくて悔しくて」


「レーネ……」


「ミシェルお姉さま。同情はやめてくださいましね。余計に傷付きますわ」


 せめていつものようにきつく睨んでくれた方が嬉しかったです。

 

 悲しそうに微笑まれたら、どうにかしたくなってきます。

 本当にどうにもならないのですか?


 つい縋るようにお母さまを見てしまいました。




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