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1.先に言ってやりました
新連載です。
よろしくお願いします。
「あなたを愛するつもりはございませんので」
結婚式を終えて、邸に戻った直後のことでした。
気の乗らない初夜に悩まれる前に、こちらから先に伝えておいたというわけです。
「……どういうことだ?」
「そのままの意味ですわ。どうぞ、私のことはお気になさらず。初夜だろうと気を遣うこともございませんので。こちらもその方が有難いですし」
「ふむ」
夫となった侯爵様は難しい顔をして、しばし黙られましたが。
「君とはよく話し合う必要がありそうだ」
と言うと、ふわりと軽やかに微笑まれました。
そしてまた、「では、また後ほどに」と言葉を残して、その場を去っていかれたのです。
「奥様、どうぞお入りくださいませ」
どうやらこの場所は、夫人用の部屋の前だったようです。
開かれた扉の中へ入りますと。
「わぁ、素敵……」
思わず呟いてしまったのでした。