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川上の神社と神主

おじいさんとおばあさんは、太郎に産まれてきた時の説明をしました。その話を聞いた太郎は最後に「話してくれてありがとう」と言って布団に戻っていきました。2人はしばらくしてから太郎が眠れてないんじゃないかと様子をみましたが、太郎は寝息をたてていたので安心し布団に入りました。


次の朝、3人は家の前にある畑の手入れをしていました。ひと段落し、おじいさんが竹の水筒から水を飲もうとしていると、太郎が口を開きました。


「ワイ、川の上に行きたい」


2人は、その言葉の意味をすぐに理解しました。川を流れてきた桃がどこから来たのか。川の上流へ行けば、川の源流付近に行けば何かわかるかもしれない。

おじいさんとおばあさんは頷きました。


おばあさんが作ったお粥を食べて、太郎とおじいさんは川を辿って山を登って行く事にしましたが、足腰に不安があるおばあさんは家に残る事にしました。普段から山に行く事が多いおじいさんも、夏が目前の山は暑さもあって辛かった。太郎はおじいさんのペースに合わせてゆっくり歩き、道に迷わないように枝を折ったりしつつ川の音を聞きながら登っていきました。


疲れたおじいさんが、何度目かの休憩を太郎に提案しようとした時に、太郎が声を発しました。


「あ、見て!神社かな?」太郎が指をさす方を見ると、木で作られた鳥居の向こうに古びた建物が見えました。2人は鳥居をくぐり建物の前まで来ました。短いしめ縄があり、ここで太郎達は手を合わせました。


2人が目を開けて後ろを振り向いた時、建物の横から男が現れ太郎達に声をかけました。「おや、珍しい」男は髪も髭も白いものが混じっていて、顔にシワも多くおじいさんと歳が近い風貌でした。2人は会釈をしておじいさんが質問しました。


「ここの方ですか?」


「ええ。この社で神主をやってます。まぁ、もうこの中には神様はおらんのですが」


「あぁ、なんと。盗人に入られたのですか」


「いや、ちゃいます。襲われたんですわ。150年程前になると思いますが、それは惨かったと聞いてます。村が急に襲われて、女も子供も関係なく・・・。

あった物はほとんど全部持っていかれたそうです。この社に逃げ込んだ者もみんなやられてしまって、逃げ延びたのは何人かしかおらんかったとか」


「なんちゅう事や。血も涙もあらへん」


「まぁ、そういう訳で、祀られてた神様も取られてしまったっちゅう事です・・・。それはそうと、ここへ何しにきはったんです?旅の者には見えんのですけど」


「あぁ、それはこいつの為で」そう言っておじいさんは太郎の背中をポンポンと叩きました。「変な事言うなと思われるでしょうけど、こいつは赤子の時、桃に入っとったんですわ。その桃がそこの川の上から流れてきたのをうちのばあさんが見っけまして。だから、川を上流へ辿って行けば、何かわかるんちゃうかと思いましてな」


「・・・」神主はおじいさんの話を聞いて神妙な顔で考え込みました。


「どうかされましたか?」おじいさんは神主の顔を見て聞きました。


「ちょっと、ついて来てくれまへんか」そう言って神主は元来た道へ歩き出しました。


「どうしたんやろか?」太郎はおじいさんに言いました。


「さぁなぁ。でも、なんかあるんかもしらんし行ってみよか」


「うん」


太郎とおじいさんは神主の後ろをついて行きました。社の正面から左に曲がるとすぐに1軒の家が見えました。そこまでは30m程の距離で、草木が生い茂った所ではありましたが、神主が歩く道は草1つ生えておらず、この道を毎日歩き踏み固めてきた歴史を太郎達は感じました。

今回も読んで頂きありがとうございました!

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