8 うひひひ、これでオーケー
館内に設置された丸型のカウンターテーブルにもたれたまま幼馴染を待つメイ。その前をカップルが楽しげに通り過ぎていく。
一人はメイと同じ高校のメンズ制服。もう一人は私服姿の年上女性だった。
メイはその女性をどこかで見かけた気がして、遠巻きにじっと眺めていた。
すると向こうも気づいたのか、一秒ぐらい目が合った。
「誰だろう? 私のこと知ってる人かな?」
メイは必死に思い出そうとした。学校や家の近所、ハム交での顔なじみの人人。日常のひとコマひとコマをさっと脳内照合してみたが、一致する顔は思い浮かばない。捜査に行き詰まった警視庁捜査一課の刑事のように頭を抱える。
「もしかして、普段は違うスタイルの人物?」
メイは何度か記憶を呼び覚まそうとしたが、中三から成長していない16ビットの脳みそでは処理しきれなかった。
「ガッコで三緒に聞いてみよっと」
切り替えの早いメイは自転車修理中の豊が来るまで、気晴らしにモール内をうろちょろすることにした。シアターのすぐ脇に煉獄さんのガチャやグッズを取り扱うお店が並んでいる。
メイは鼻スキで商品を眺めていた。
「うー、これ欲しいけど、買っちゃうと映画が見れない。うー、でも欲しい」
真剣に悩んだ末、メイは遅れて到着予定の幼馴染にねだることにした。
「でもぉ、さっきメクドナルドで奢らせたのに、煉獄さんグッズまで買ってくれるかなぁ」
メイは逡巡したのち、今日はボトムスがパンツなので、おっぱい作戦でいくことにした。お花畑へ行くと個室でトップスを脱ぎ、偽パイ工作をする。
「うひひひ、これでオーケー」
こうしてワンランク上の胸を入手したギャルは、控え室からピッチへと入場するサッカーのイングランド代表のごとく胸を張り、女子トイレを出た。