4 おなクラの三緒ちゃんの方が神だよ
「もしもし、ゆー君? あさって空いてる? こしょったデートプランを実践してみようと思うんだけど」
「土曜か。部活が終わった後なら空いてるよ」
「ん、じゃあ、駅前で。あとで時間教えてー」
***
土曜日の駅前。
「あっ、いたいた」
メイは部活帰りのほどよく疲れた表情の豊の元に駆け寄ると、いそいそと数学IAのノートブックを取り出した。
「えーと、コンビニはスキップして、秋冬の新作アウターのチェックね」
「ここらへんショップとかないよ」
豊が辺りを見回す。
「いいの、いいの。スマムラで」
「スマムラ? ま、いっか模擬デーだし」
「そうそう。流れだけ掴めばオッケーよ」
するとメイはリュックにトップシークレットをしまいながら、ファッションセンターへと足を向けた。後を渋渋、豊が追う。
「ねえ、初デートで王子様と手をつなぐのってアリ?」
「うーん。最初からはないかも。映画の後とかイベントクリアしてからでいいんじゃない?」
「そだね。手繋ぎフラグ必要だよね、チョメるからちょっと待って」
するとメイは本体より遥かに大きなケースをつけたスマホを操作して二秒で入力を終えた。
「メイちゃんの指捌き、神だな」
「えー、そんなことないよー。おなクラの三緒ちゃんの方が神だよ。右手で字を書きながら左手でツイートして、フラペチーノ飲むらしいから」
「うおっ」
豊は驚愕の表情でメイの横顔を見た。
「あっ、着いた。とりま一周しよっか?」
二人はブラブラしながらスマムラの店内を周遊する。まるで止まったら死んでしまう太平洋のマグロのように。
「意外とスマムラも若者向けあるね」
豊が上から目線で言う。
「まあね。インナーとかは、ここでもイケるよ」
「もしかしてメイちゃん・・・、スマムラーなの?」
「えっ!? 男子的にNG? でも下着ならバレなくない?」
「でも、イザってときに・・・」
「ちょっと何想像してんの! 勝負下着は特注よ!! オートクチュールだから!」
「何それ?」
「ううん、なんでもない・・・・・」
唐突に大声で下ネタを叫んだメイは周囲の冷ややかな視線を浴びたように感じ、中華鍋で炒めた後のほうれん草のようにシュンとなってしまった。