記憶の図書館
普通の図書館は記録を見る。
ただ、ここは少し違う。
そんな図書館に、今日も人がやってきた。
どうやら何か探し物をしているようだ。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか」
受付は一つ、そこに私はいる。
「妻を、妻を探しているんだ。正確には妻に贈るべき誕生日プレゼントを」
「以前お約束されていたプレゼントでしょうか」
「ああ、そうだ。大切なものなんだ。探してくれないか」
「承りました。では、そちらの椅子にお座りください」
彼の左手に安楽椅子が一つ、まるでスポットライトに照らされるようにして彼が座るのを待っていた。
私は様々な準備をすると、白紙の本を一冊準備する。
「では、これからあなたの人生を本にします」
「ああ、頼む」
椅子に座る彼、そして裏表紙を彼の額に当てる。
催眠術、といえば聞こえはいいが、彼の記憶をこの本にコピーするという魔法だ。
私が呪文を唱えている間、彼は意識が混濁する、その瞬間に、さまざまなデータをコピーするわけだ。
知りたかったこと以外にも、さまざまなことが本は教えてくれる。
それこそ、相手が忘れているようなことでさえも。
「……ありがとう。今回は助かったよ」
後日、彼は私の図書館へと本を寄贈にやってきてくださった。
普通の、いわゆる一般的な図書館もここではしており、私はそのために司書の資格を持っている。
「いえ、ありがとうございます」
ついでに運営資金も、いくばくではあるが心づけとして置いてくださった。
「では、またのご利用をお待ちしております……」
これらについて礼を言うと、彼は笑って片手をあげて、挨拶を返してくれた。