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Aに至る病  作者: 龍谷新生
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「きっと、あいつは頭がおかしかったんだ」











思考が停止する。時間にして数秒だった。ただ目の前に現れたそれがあまりにも現実離れしていて、特殊な場所と俺の個人的嗜好および興味を差し引いたとしても、それは異質や異端ではないものの異様であり、不可思議という言葉を当てはめても尚足りず、欠落した意識を補完するために長々とした時間を要したのである。


さて。

一体どんなものと出会えば人は脳が止まるほどの衝撃を受けるのだろうか。


憧れのスポーツ選手? 否。

麗しのアイドル? 否。

長年離れ離れになっていた友人? 否、断じて否である!


誓って言おう。そんな程度で俺は動じない自信がある。いや、正確にはそうだといま気付いた。


開場から少し経った今でも入っていく人は見られる。日本最大級イベントの異名は伊達ではない。開け放たれたホール入り口のドアを背景にして俺はソイツと対峙しているわけだが、次々にすれ違う通行人は「俺たち」には目もくれず、いぶかしげな顔どころか顔色一つ変えず、はたまた手にしたスマホから目を離すことなく過ぎ去るものまでいる始末。これだけの人たちが目の前のこれをどうして無視できるのか不思議で不思議でたまらない。


軽い目眩をおぼえる。それが人であることを証明するかのごとく口を開いたからだ。ああ、だから。と俺は思う。


人が真に驚くのは、


「どうもですぅー! ネネといいます! 未来からはるばるやってきたの! よろしくね! よろしくしてくれないと動脈切断しちゃうゾ!」


ゲームの中にしかいなかった人間が目の前に現れたとき……ああ、ちょっと違う。ゲームの中でなければ有り得ない人間が現れたときである。


「ちなみにネネは、しめす偏を二つ書いてネネですからね」


生まれて初めてカタカナを語呂で教わった気がする。


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