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2XXX年 ホストクラブNo.8

 ホストクラブNo.8の重厚感のある扉を開けると、贈られた花束たちの匂いにむせ返りながら中へ進む。上客であるロートレックの連れだと言ったせいか、黒服は上機嫌で迎えてくれた。ちょうど生誕祭のメインイベントが始まったところだから貴女は運がいいですね、と興奮した声で言われたが、こんなところで運を使うなんてまっぴらだ。


「今日は来てくれてありがとう!なんとなーくお店に来たら、たまたま俺の生誕祭だったとか、そんな姫もいるだろうけど。そんなの、関係ないから。今この時一緒にいるみんなで、素敵な時間を過ごしてこ~!」


 赤、青、黄を始めとした色とりどりのグラスに 溢れんばかりのシャンパンが注がれていき、名物であるシャンパンタワーが完成した。


 歌舞伎町の大型ホストクラブNo.8の主任ルノワールの生誕祭というだけあって、内装も豪華だ。身につけるものを始めとして決して暗い色を使わない、というのが彼のポリシーらしい。横でスマホで写真を撮りまくるロートレックが教えてくれた。


「ここには、二種類の姫がいると思う。絵から出てきた姫と、絵とともにこちらへ喚ばれた画家の姫たちだ。俺は、姫たちの美しいボディに文字があるかないかなんて、一切気にしない。そもそも、この暗がりじゃ見えないしね?」


 出自が”画家によって描かれた絵”か、”実際に絵を描いていた画家”かの判別方法は、体のどこかしらにサインがあることだ。キャンバスから出てきた絵たちは、どこかしらに画家の名前が刻まれており、これを気にしている者が多いのも事実なのであった。


「前置きが長くなったけど、楽しもうね~!かんぱ~い!」


 ルノワールの綺麗なソプラノが響き渡り、場が一気に明るくなる。フルーツの盛り合わせをつまみながら、話しかけてくる隣のホストに生返事を続ける。気も頭も使わずにひたすら酔いたかったので、ここに来たのは正解だったかもしれない。


 だいたいの問題は、時間が解決してくれる。自分であがいても一人では大したことはできないし、何より相手に自分の思考を奪われることがもったいない。このまま夜が更けてしまえば良い。そして朝には、今日に起きたことなどすべて忘れていますように。


 この時はまだ、主役のルノワールがこちらをずっと見ていたことなど、気づきもしないのだった。



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