2XXX年 シブヤ③
「あ、もしもし。ロートレック?今どこで飲んでんの?」
「歌舞伎町のNo.8ー!」
「げ、新宿か。しかも、あのホストクラブ?」
とにかく手っ取り早く酔いたい気分だったので、、ほぼ確実に飲んでいるであろう知り合いに電話をかけた。このロートレックというお嬢様は毎晩どこかしらで飲み歩いており、いくら使っても尽きることのない財産で経済をまわしているのだった。居酒屋ならまだしも、ホストクラブとは。
「そだよ、サトーも来なって!ルノワールの生誕祭、一緒にぶち上げよーよ!」
「無理むり。どうせ派手に金とぶやつだろ。」
「もー。あたしが払うから、気にしなくていいって!」
一方的に切られたスマホを握り、そのままタクシーをつかまえて乗り込んだ。行き先を告げると機械的に車が発進する。角度的に運転手の首元がよく見えるので無意識に目をやると、キリル文字のようなものが書いてあった。ロシア人だろうか。
「エルダニズ・アブドゥラエフと読みます。まぁ、無名のタクシードライバーですよ。」
「はぁ。」
凝視していたことがばれ、少し気まずい。そういえば、先程別れたばかりのボッスという男も、西欧風の高い鼻を持ち合わせていたっけ。嫌でも頭に浮かんでくる顔を忘れるために外を見やると、一瞬少なくなった光の量が増え始め、新宿歌舞伎町への到着が近いことを悟った。