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猫より役立て‼ユニオンブレイブ  作者: がおたん兄丸
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第15話:冒険者はとりあえずビールのノリでとりあえずダンジョンを探検する06



 四層目へ行くためには当然ながら途中にある三層目を通らねばなるまい。各地のダンジョンによっては階層を飛ばすことができる隠し通路や転移の魔法陣などがあったりもするが、あいにくそんなものはこのダンジョン洞窟茂りにはなかったのだ。仮にどこかに隠されているのだとしてもそれをチンタラ探す手間はもない。そんなわけでクロノス達は三階層目を律義に攻略中である。


 二層目から三層目になって罠もモンスターも種類が増えた。

 罠は目に見えないほどに細い紐が張られていてそれを体のどこかに引っかけて切ってしまうと草陰に仕掛けられた毒の塗られた矢が飛び出してくるようなものであったり、草の多少茂っている場所の足元に狩猟に用いられるようなトラバサミ(噛みつかれると並のブーツでは貫通してしまい足に食い込んですごく痛い)が隠されていたりなど。

 モンスターは木の振りをするお化け樹(ドロンジュ)の近づくと正体を現して襲ってくるタイプだったり、森の中ではよく見かけられる狼のモンスター「ウルフ」の群れなどと戦った。しかし罠の複雑さも敵の強さそのものはそこまで変わりはなく、同じものを二度三度と相手をしていくうちにリリファは罠の解除が。アレンはモンスターを素早く倒せるようになっていた。


 そして目立った負傷もなく三層目の攻略も既に後半戦の尻の方。確認されている出現モンスターの魔貨をすべて集めてこれ以上戦う気が起きないとのアレンの発言により、次の階層へ続く階段までの道のりの中でもモンスターや罠の最も少ないルートを選んで通ったのだが、しかしそれでも素通り同然というわけにもいかず、いくつもの大きな戦闘を行った。

 

「ギャヒヒ…‼」

「ギヒャヒャ‼」


 今度襲ってきたモンスターはゴブリンの集団だった。しかしそれはただのゴブリンではない。彼らは頭に木の皮でつくったヘルメットをかぶり、手には槍を持っている。更には突進猪(ラッシュボア)に跨り、それの腹を蹴って操り走っていたのだ。それが全部で四組。

 このゴブリンの正体は「ゴブリンライダー」だ。他の四足モンスターに騎乗したゴブリンで、乗っている生物はダンジョンごとに異なるが、今回はこのダンジョンで多く見られるアレン達も何度か戦った猪のモンスター突進猪(ラッシュボア)に乗っている。素早く移動を行い奇襲をしかけてくる厄介なゴブリンなのだ。


「ギャギャギャッハー‼」

「くっ…‼」


 ゴブリンが大きく前へ突き出した槍の先。それをリリファがすんでのところでバックステップで避けた。カウンターで手に持っていたナイフを投げたが、それはゴブリンのいる高さより低く、走っている突進猪に当たりそいつの固い肉体にはじき飛ばされてしまう。はじかれたナイフはくるくると回転して近くの木に刺さった。


「槍の攻撃範囲に近づきすぎた…‼それだけじゃない…突進猪にぶつかればそれだけでお終いだよ‼」

「ギャギッ‼」

「わっ今度はこっちに…あぶなっ‼」


 自分へやってきたゴブリンの槍での薙ぎ払い攻撃をアレンは屈んで避けた。

 ゴブリンも突進猪も体格的にはそこまで大きくない。それらが合体したゴブリンライダーであっても、ゴブリンの頭の先が大人の男であるクロノスの胸の高さまでやっと届くくらいにしかないだろう。しかし騎兵。それも槍持ちは白兵戦にて最強とされる組み合わせだ。たとえモンスターといえど相手には苦労するのは当たり前の話だ。それが四匹もいるならなおさら。アレンもリリファも敵の攻撃を躱して受けることで精いっぱいだった。


「おい大丈夫か?」

「クロノス兄ちゃん…かなり強いよこいつら。たかだかゴブリンが猪に乗っているだけなのに…くそっ、次の階層までの階段はこの先なのに…‼」


 いらつき混じりに舌打ちをして、アレンはゴブリンライダーたちの奥の方を見つめる。地図の通りならその先はもう次の四階層目へ通じる階段があるはずだ。しかし突進猪に乗ったゴブリンライダーのスピードはアレンの足よりも速い。走って階段まで逃げてもすぐに追いつかれて無防備な背中から槍で串刺しにされてしまうだろう。リスクをとってまでそのような作戦はとれなかった。


「なんでこんなのが四匹もいるのさ!?一番モンスターが少ない道じゃなかったの!?」

「…うーん、確かにモンスターの出現率はそこまで高くないルートなはずだけどな。ゴブリンライダーはレアモンスター。それなら更に確率は低いはず…それを四匹も同時に出すとは…うん。どうやら運が悪かったらしいな。レアモンスターに同時に出会えたのだからこの場合は幸運なのかな?これはこのダンジョンを創った神様に見初められたかな?美人の女神様だといいなー‼はっはっは‼」

「笑っている場合!?仮に神様がけしかけたのならその神様かなり性格悪いよ‼」

「落ち着けよアレン。神を汚すとあるかもわからんそいつの加護を失うぞ。冒険中にとって予想外なんて歩いていたら靴ひもがほどけるくらいに当たり前の話。大事なのは起こってしまった不運を技術と知恵を使いどう挽回するかだ。さてさて…」


 クロノスは頭の中に天秤を生み出して、それぞれに敵の戦力とこちらの戦力を乗せて量る。ゴブリンと突進猪の一組を一匹としてカウントするのなら数の上では四対四。しかし一匹一匹で見るとアレンとリリファはそれぞれゴブリンライダー一匹に劣る。それに乗っているゴブリンを倒したとしてもフリーになった突進猪はまた独立した一匹のモンスターとして襲ってくるだろう。実質一度だけ死なないモンスターとして見るべきだ。

 しかもゴブリンライダーたちは統制がとれている。リーダーに当たる個体はいなさそうだがお互いに声を掛け合い見事な連携攻撃を繰り返してくるのだ。自分勝手で連携をとれない冒険者は見習ってほしいものである。


「(進むも引くも許されない。戦って倒すのみ。ならばこちらも連携をせねばなるまい。とはいえ槍持ち騎兵の四匹は過剰か…おっと、)」

「ギャガッ‼」

「ギャギッ‼」


 立ち止まるクロノスを隙だらけだと二匹のゴブリンが同時に槍で突いてきたが、クロノスはそれらの柄をそれぞれの手で捕まえ、槍の先を眼前で停止させる。ゴブリンは仕切り直しだと槍を引き寄せクロノスの手をひっぺがそうと試みたが、柄を握る手は力強くまったく動かない。


「ギギッ‼」

「放せって?やだね。ゴブリンの腕力で普人族の成人の男の力に勝てるかよ…よし、俺が二匹抑えておいてやるから、残り二匹は君たちで倒してみろ。セーヌはアレンとリリファをサポート。ダメそうなら君が倒してくれ。下手すりゃ槍で臓器を突かれるからそこだけ気をつけろ。心臓だと即死だぜ?」

「そくし…ええっ‼こんなことで死んでたまるか…‼」

「無理をなさらないでくださいませアレンさん‼」

「わかってるよリリファ姉ちゃん‼おいらだって未来のスーパー冒険者になる前にくたばりたくはないからね…よし、できた‼」

 

 アレンはこれまで戦闘に使っていた鎌の部品では相手が悪いとがちゃがちゃと取り外して改造を始める。 アレンの武器「大嵐一号」は先端の武器を組み替えることができる。相手にあった武器をにすることで真価を発揮するのだ。改造中はリリファがナイフを何度も投げて二匹のゴブリンライダーの動きをけん制した。


「槍には槍だ…‼」

「あまり時間は稼げないぞ‼」

「わかってる…こんなのすぐ…できた‼とりゃあ‼」


 改造を終え鎌をたちまち槍へ変形させたアレンは、ゴブリンライダーへその切っ先を向けて構えた。槍の扱いは冒険者の先輩に教えてもらっているのでそれを実践で試すときがきた。


「じゃあ任せたぞ。俺はこっちを…」

「ゲゲッ‼」「ギッ‼」

「はよ来いって?悪いけど律義に相手してられねぇんだわ。そらよっと。」


 クロノスがゴブリンと突進猪二匹ずつの地面に写る影に、それぞれ細い木の枝のようなものを刺した。それは先ほどまで彼が口に咥えていた爪楊枝(つまようじ)だったのだ。なんの意味もなさそうな行為だが、ゴブリン達がそう思っていたのはこの瞬間までだった。


「ゲプッ?」「ブモッ!?」


 二匹のゴブリンライダーは爪楊枝を気にすることなく進もうと、乗っていた突進猪の腹の横を蹴って走らせようとしたが、突進猪はまったく動かないのだ。…いや、そもそも足で蹴ることができない。足どころか全身が動かせない。二組のゴブリンライダーはまったく身動きがとれなくなってしまったのだ。自らの意志ではない硬直という未知の経験に四匹は狼狽えるがやはり瞬きひとつすることもできない。


「どうだ?俺の魔力たっぷりの「影縫(かげぬ)い」のお味は?」


 クロノスが放ったのは影縫い。自身の魔力を籠めた武器で対象者の影を刺し貫くことで、しばらく身動きを封じる技である。本来であればそれは暗殺者(アサシン)(クラス)の最上位の技で、それもほんの一瞬だけしか動きを封じられず武器の質が悪いと魔力が暴走して武器が破損してしまう。しかしクロノスが放てば爪楊枝一本でも暴れん坊の大型牛モンスター闘牛(ブルホーン)すら小一時間固まったままにできてしまう。


「爪楊枝はそうやって使うために持ってきたのか。」

「というか爪楊枝を地面に刺しただけでモンスターを封じれるって…」

「そらそらよそ見しない。こいつらは俺が相手してやってるからさっさとやりたまえ。そんな奴らシャキーンとやってスパーンとやってホーン…さ。」

「だからもっと的確なアドバイスをしてよ‼なんでそういつも抽象的なのさ‼ああもう、とにかく行くぞっ‼男は度胸だいっ‼」


 クロノス・リューゼンの実力は天才的だ。天才的ゆえに常人には理解できない。ようは基本に忠実に学ぶ新人冒険者にとってはなんらお変わりなくクソの役にもたってねぇ役立たずってことだ。

 相変わらずの教える気があるのかないのかようわからんクロノスのアドバイスを真には受けず、アレンはとにかく突っ込む。敵もアレンの動きに呼応するかのように突進猪の尻を蹴ってまっすぐに走らせた。


「うぉおおおお‼」

「ギャギャ‼」


 雄たけびをあげて突っ込んだアレンに向って、ゴブリンが槍を横に薙ぎ払って攻撃する。アレンはそれをバックステップで避けてから、間髪入れずにもう一度前で飛び出す。


「(ゴブリンライダーの厄介なところは乗り物の素早さだ。まず敵の機動力を落とす…狙うのは…‼)」

「ギャギッ‼」


 先と同じように近づいてくるアレンへ、ゴブリンも先と同じように槍の横薙ぎ攻撃を繰り出す。まるで過去の映像を繰り返し流すかのような一人と一匹の完全再現。しかし今度のアレンは後ろへ下らない。身を屈め地面を蹴りながら前へ滑っていく。スライディングだ。そうすることで槍の下を潜り抜け、同時に突進猪の横へ滑りこんだ。


「ギャギッ!?」

「お返しだよっ…「槍刃(そうじん)」っ‼」

「ブモオオオオ‼」


 アレンが振るった槍の斬撃。それは先ほどのゴブリンの攻撃への意趣返しのつもりだったらしい。それとも同じ槍の使い手であっても人間である自分の方が優れていると伝えたかったのかもしれない。とにかくその斬撃は彼の狙い通りに突進猪の右前脚を見事に斬りつた‼

 猪の傷口から血がまき散らされ、自らの血の色を目にして突進猪は興奮する。前に後ろに地団太を踏んで暴れまわる突進猪の上に載っていたゴブリンは、猪が前のめりになった拍子にとうとう吹っ飛んでアレンの目の前の地面を転がった。


「ググ…‼」

「へへっ、猪から落ちればただの槍もったゴブリンさ。これで終わりだっ、喰らえっ‼「瞬突(しゅんとつ)」‼」

「ゲゲッ‼」


 アレンがゴブリンの胸元目掛け突撃の技をぶちこむ‼これで決まったように思えた…が、


「ギャ‼」

「なに…ぐわぁっ‼」


 それよりもゴブリンが一枚上手だった。アレンの槍の先が刺さるよりも前に、ゴブリンの槍の先がアレンの腕を腕を突いたのだ。そこは関節の部分である防具と防具の隙間の弱いところ…アレンの腕から血が出てくる。


「ゲゲッ‼」

「くっ…‼」

「アレンさん‼」


 怯んだアレンにもう一撃加えようとゴブリンが槍で突いてくるが、セーヌが飛んできてアレンを抱きかかえて後ろに飛びのく。先ほどまでいた場所の地面にアレンが転ばせたゴブリンと、もう一匹のまだ突進猪に乗った状態のゴブリン。その二匹の槍の追撃が突き刺さった。セーヌが助けに入らなければアレンは二本の槍で串刺しにされていただろう。


「ありがとうセーヌ姉ちゃん…助けは借りないつもりだったのになぁ…‼」

「仲間なのですから助けるのは当たり前でございます。ともかく、いま治しますので…ヒール‼」


 セーヌがアレンにヒールをかけた。傷は浅かったのでアレンの腕の出血はそれで止まる。幸いなことに出て行った血はまだ少ない。傷が塞がれば戦える。


「とりあえず血が止まれば…どうします?私がやりましょうか?」

「ありがとう。でももう治ったしおいらがやる。やんなきゃクロノス兄ちゃんにからかわれる。次はやってやる…‼」


 男の子には意地があるのだ。交代を申し出るセーヌへ礼を言ってアレンはまた前に出る。そこにゴブリンとゴブリンライダーの二匹がまたも同時に突っ込んでくる。


「ゲヒャッ‼」「ゲヒヒッ‼」


 回復したとはいえ一度劣勢からも巻き返すことができた楽な相手だ。そう考え下品な笑みを浮かべながら二匹のゴブリンライダーはアレンへ槍を構え突進する。


「…いまだよリリファ姉ちゃん‼」

「…ッ‼」

「ゲガッ!?」


 猪に騎乗していた方のゴブリンが首筋にずどんと強い衝撃を受けたことに気付く。猪を止めそこに手を伸ばすと、いつの間にかナイフが深く突き刺さっていた。そしてそのナイフの柄を掴んでいたのは…リリファだった。戦いの中で気配を消して様子をうかがっていたリリファが、隙を見て背後から奇襲をしかけていた。アレン一人に意識が集中していたのでゴブリン達はまったく気づかなかったのだ。

 ついでに言えばリリファはアレンの攻撃で脚を怪我して暴れていた突進猪も既に一人で倒していた。奥の方で目にナイフを突き立てられて倒れている突進猪がぴくぴくと体を痙攣させてじわじわと消滅しているところだった。

 

「プ、プゲッ…‼」


 自分の身に何が起きたのかようやく理解したゴブリンは腕を振ってリリファを殴ったが、彼女は身をひるがえして猪の上から降りた。ゴブリンはナイフを引き抜こうとするが時すでに遅し。体を支える力を失って猪からずるりと滑り落ちたゴブリンは地面に頭を打ち付けてそのまま消滅した。


「ナイスだよリリファ姉ちゃん‼」

「それぞれのゴブリンライダーの相棒は倒した‼あとはゴブリンと猪が一匹ずつだけだ‼」

「グゲゲッ‼」

「…ブモッ‼」

「…あっ‼あいつら生き残りでコンビを組もうとしてるよ‼」


 相棒を失ったゴブリンと突進猪はそれぞれ生き残ったお互いを新たなパートナーとして再びゴブリンライダーとなろうとする。そんなチャンス与えてやるものかとアレンとリリファが迫る。


「させるか…「アシッドナイフ」‼」


 リリファが太腿のナイフホルダーから紫色の液体で濡れたナイフを投げた。それはゴブリンと合流しようとしていた猪の目元に当たるが、ナイフは突き刺さらず弾き飛ばされてしまった。


「ブモ…ブモモ…‼」


 だが、徐々に猪の様子がおかしくなる。パニックを起こして暴れ出してそのままゴブリンへ向かって走り出す。自分に迫る突進猪へゴブリンが来るな来るなと叫び声をあげていたが、苦しみ暴れ狂う突進猪にそんなもの聞こえるはずもなく、ついにゴブリンは突進猪にぶつかり吹っ飛ばされてしまった。そして、飛ばされたゴブリンのその先にはアレンが槍を構えて待ち構えていた。


「瞬突‼」


 すっ飛んできたゴブリンの腹に槍の先が貫通し、ゴブリンが串刺しとなる。重みでアレンは槍を落としてしまった。


「グ、グゲッ…‼」


 刺さった槍ごと地面にぶつかり呻き声を上げたのち、ゴブリンは動かなくなって消滅した。


「やったぁ‼ゴブリンライダー二匹撃破だ‼」

「…よし‼」

「二人ともお見事でございます。」


 E級冒険者の二人にとっては格上の相手だったはずだ。それを二匹同時に倒すのは快挙だろう。セーヌはリリファとアレンへ駆け寄って二人を褒めていた。


「ねぇ、さっきのは何のナイフを投げたの?」

「フフ、恰好をつけてアシッドナイフと叫んだが、ようは毒液のついたナイフだ。目元に当たれば飛沫が飛んで目に入る。熊でも苦しみのたうち回る猛毒だ。普通の狩りなら肉に毒が残ってギルドで買い取ってもらえなくなるが、ダンジョンのモンスターはどうせ死んだら消滅するからな。遠慮なく猛毒を使わせてもらった。」

「ブヒイイイイイ‼」

「まだ猪の方が残っていたな。」

「おいらに任せてっ、とうっ‼」


 残る猪はリリファのナイフによって与えられた毒で体を蝕まれ、地面に倒れて息も途切れ途切れの状態だ。そんな猪へせめてこれ以上苦しまぬようにアレンは一撃で決めることにする。猪の喉元を槍で思いきり掻っ切ってそれで突進猪は力尽きて消滅した。


「よーし、ナイスだ二人とも。格上を倒すなんてやるじゃないか。」


 二匹のゴブリンライダーを抑えながら二人の戦いを見ていたクロノスは、戦いの結果が満足なものであったようでうんうんと頷いていた。


「ギギギ…‼」「ギッ‼」

「こいつらはどうするかな?…ああ、そういやアレについて説明をしていなかったな。」


 クロノスは何かを思い出して二組のゴブリンライダーをそのままにしておき、アレン達へ合流することにする。影縫いの技は投擲した道具に魔力が籠っていてそれが残っている限り相手を押さえつけるので、使用者がその場を離れても問題はない。


「あれ…?」

「どうした?」


 戦いの後で、アレンはドロップアイテムや魔貨を集めていた。しかしその中であることに気付く。


「ないんだ…ゴブリンライダーの魔貨がどこにも‼魔貨は必ず落ちるんでしょ?なんで!?」

 アレンが拾ったドロップアイテムはゴブリンが使っていた槍や木の皮のヘルメット。それに突進猪の牙と(ひづめ)だ。そしてゴブリンライダーの魔貨を見ようとアレンが落ちていた魔貨を残らず集めたのだが、ゴブリンの魔貨と突進猪の魔貨が二枚ずつしかなかったのだ。


「魔貨なら持っているだろうに。そのゴブリンと突進猪のヤツ。」

「倒したのはゴブリンライダーだよ。どうしてそれがただのゴブリンと突進猪の魔貨なのさ。」

「それには秘密があってな。君たちは突進猪からゴブリンを落として別々に倒していただろう?その場合はゴブリンと突進猪として扱われるからゴブリンライダーの魔貨は落ちないんだ。」

「そうなの!?ちぇー、ゴブリンライダーの魔貨欲しかったなぁ。」

「ご褒美に見せてやるか…」


 クロノスが拘束をしっぱなしにしていた二組のゴブリンライダーの前へ行く。

 アレンとリリファは何をするのかと彼を見ていたが、クロノスが今回の相棒に選んだペーパーナイフを取り出してそれを軽く縦にふるうと、ゴブリンと乗るラッシュボアは縦真っ二つにぶった切れた。おそらく彼らは自分の身に起きたことを知らずに即死だっただろう。哀れだったのか幸せだったのか果たしてどちらなのやら…


「うっわえげつな…というかペーパーナイフをどう振ったらモンスターが真っ二つになるのさ。」

「そんなこと今はどうでもいい。ほら見ろ。」


 奴らが消えたところに二枚の魔貨が転がっていた。アレンが拾い上げてよく見るとそれはゴブリンのでも突進猪のでもないこれまで見たことない色と大きさの魔貨だったのだ。


「なにこれ?見たことのない色だ…それに二枚だけ?四匹倒したんだから四枚出るはずでしょ?ゴブリンが二枚と突進猪が二枚。あっ、まさか…‼」

「それがお望みのゴブリンライダーの魔貨なんだ。奴らは本来ゴブリンとその乗り物のモンスター二匹からなるモンスターだからそれぞれ別に倒すと一匹ずつとして扱われる。ところがこんな具合でいっぺんに倒すことで一匹のモンスターとして扱われ、そうなった場合のみこのゴブリンライダーの魔貨を落とすんだ。これを知らないとゴブリンライダーの魔貨は一生手に入らない。ちょっとした裏技だな。」

「そうだったんだ…倒した方の違いで手に入る魔貨も違うんだね。」

「ゴブリンライダーだけではない。ゾンビの腐肉を焼いて骨だけにして倒すとスケルトン扱いになったり、複数のスライムをくっつけて一匹にまとめて倒すとビッグスライムの魔貨になったり、倒し方や手順を踏むことで違うモンスターになるのさ。」


 説明を終えてから、「そらもってけ」とクロノスは二枚のゴブリンライダー魔貨をアレンへ手渡した。


「ゴブリンライダー撃破のご褒美ということにしておこう。魔貨がないと帰っても倒したことの証明にならないだろうしな。」

「やったぁ‼じゃあ一枚はおいらがもらうからもう一枚はリリファ姉ちゃんね。」

「私は魔貨を集めはしないが…売れば金になるからな。もらえるだけもらっておこう。」

「よかったですね二人とも。」

 

 こうして三層目の攻略も完了だ。四人のパーティーはもう一つの調査場所である四層目へ突入する。




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