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月桂樹
第3週
ぱらりぱらりと落ちる音。
彼の手が強く握りしめる。私に、信頼という名の助けを求めて。
「勇者様……!」
私は、彼の後ろの、光をも吸い込むような深淵を見つめる。あの闇に飲まれたが最後、自分の存在は消え落ちるだろう。そんな無意味なことさえ考えてしまう。これが恐怖というものか。
冷や汗の滴る顔で、彼の苦しそうな表情を見る。
私のやることをやらなければ。
歯を食いしばり、足を踏ん張り立ち上がる、そして、彼の体を引き上げ——
「——さようなら。勇者様」
絡んだ指を、離すのだった。
多忙のため超短編となっております、申し訳ありません。
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