『朱き天使』十六夜 真琴
それから2週間後…いつものように学校が終わり下校していると突然
「オイ、貴様。」
と、声をかけられた。
驚いて振り向いてしまった。
そこには凄い筋肉で腕が4本あり、蝙蝠のような翼をもつ大男がいた。
「随分俺の手下を痛め付けてくれたようだな…?」
「い…いきなり襲ってきたのはそっちじゃないか!」
「はぁ?お前らみたいな朱き天使を襲うのは当たり前だろう。」
…?僕には初めて聞く単語が出てきた。
それはなんだと聞こうと思った瞬間、いきなり攻撃を仕掛けてきた。
慌てて4つの拳を受け流して、そこから追撃を貰わないように離脱した。
「ほぅ…流石は朱き天使だな。これくらいは見切れるか。」
そう言って再度攻撃を仕掛けてきた。
しかもさっきより速い速度で。
今度は3つ受け流せたが1つが腹に直撃した。
気が遠くなったが気合いでもたせた。
だが、動けない。
大男は、
「せめて楽に逝かせてやる」
そういって4つの手の平に黒い光球が表れた。
次の瞬間、それぞれの光球が鉈、太刀、斧、金棒にかわった。
「じゃあな。」
そういって太刀が僕の首に当たる寸前…大男の太刀を持った腕が飛んだ。
見ると、僕の前に身長は150cmいくかどうかくらいで、全長2m以上はあるだろう大太刀を持ったピンク髪の少女が立っていた。
少女はこちらを向いて
「ちょっと!あなた大丈夫!?」
碧眼だった。
心配してくれているようだが、答えれる気力はまだ僕にはなかった。
少女はそんな僕を見て少し慌てていたが、大男がまた攻撃を仕掛けてきたので、少女はそちらに集中し始めた。
「オォォォォ!!!!」
大男が雄叫びをあげて来た。
3本にされていた腕はいつの間にか再生していた。
それを少女はそのすべての攻撃を大太刀でいとも簡単に流して、大男の腕を2本斬り落とした。
「グゥ…」と言いつつ大男は跳んで距離を取った。
「貴様…A級以上の実力者だな…?」
と、大男は聞いたが、少女はスルーして僕の方を見て、
「ちょっとあなた!まだそこにいるの!?危ないから速く飛んで逃げて!」
と、言ってきた。
先程と比べれば痛みはましになっていたので答えれた。
「いや…僕…人間なんですけど…」
そういうと、
『え??』
と、少女と大男の声が重なった。
しばらく沈黙が続き、一番最初に少女が声を出した。
「え?あなた、この黒き悪魔達が見える…んでしょ?」
「見えるけど…」
「朱き天使じゃないの?」
「今初めて聞きました。」
「翼はないの?」
「………」
余程信じられないらしい。
「まぁいいわ。あなたを守りつつ闘うから。さて…」
そういって少女は大男を見た。
大男の腕はまた再生していた。
「人間ごときでこの世界に来るやつがまだいたとはな…ちょうどいい!人間は最高の養分になるからな!」
と、言ってまた攻撃を仕掛けてきた。
先程より速い速度で。
少女は、また大太刀で流したが反動が激しかったらしく、手が震えている。
「クッ…」
「オイオイどうした?まだまだいくぞ!」
再び攻撃を仕掛けてきた。
少女は僕をつかみつつ、跳んで距離を取った。
「フッ…逃げるだけか?そんなのでA級が務まるのか?」
すると少女は、
「私まだ本気じゃないよ?まだ朱き天使である証の翼出してないでしょ?」
「フン、翼を出したくらいでそんなに変わるわけが…」
と、言っていたがそれ以降の言葉は続かなかった。
赤い翼がついた少女がいつの間にか大男の後ろにいた。
「これでどうかな?」
「な…こんなに変わるはずが…」
「さっきの発言からしらないと思うけど、朱き天使S級以上の天使は翼に己の力を隠すことができるんだよ。隠すことで気配も消せるからね。」
「そ…それなら貴様は…S級なのか!?」
「いや、私は特S級だよ。」
大男は青ざめた。
少女の言う通り自分は特A級。
自分が勝てる相手ではないとわかったからだ。
そして少女はなにもないところに穴を空け、そこから2つ武器を取り出した。
それは先程の大太刀とは違い、それぞれ50cmほどの小太刀だった。
「フン…!そんな小さい剣で何ができると言うのだ?」
「両手でさばける。」
さらっと答えた。
「なら…!やってみろォ!」
と、大男が全力で斬りかかったが、少女は2つの小太刀で4つの武器を受け流し、そのまま4本の腕をほぼ同時に斬り落とした。
「グアァァァ!」
大男は叫んでいた。
「貴様…いったい何者だ!?」
「私は『朱き天使』特S級“十六夜 真琴十六夜真琴”!」
と少女は言った。
そして大男は、
「…聞いたことねぇ…クソッ!こんなやつに負けるのか…」
と、言っていた。
十六夜 真琴のことは知らないらしい。
それを聞いて真琴は…かなり落ち込んでいた。
「私なんて…私なんて……」ズーン…
再び沈黙が続いた。
そんな空気のなか、黒き悪魔の大男はさっさと逃げていた。
少女はまだ落ち込んでいてほっておく訳にもいかないので、僕の家に連れて帰ることにした。
家に帰り自分の部屋のベッドに乗せてあげた。
そしてそのまま午後9時が来てしまい、気付けば少女の姿は見えなくなっていた。