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トシデンセツ  作者: 矢野三ツ矢
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三番目の花子さん

1900年代、日本で流行った都市伝説。こんなものを聞いたことがないだろうか。

夕暮れ時、一人家に帰っているとマスクをつけた若い女性が近寄ってきて

「私、キレイ?」

と聞いてくる。「キレイ」と答えるとマスクを外し、口をはさみで裂かれ、そのまま斬り殺されてしまい

「キレイじゃない」と答えると、怒り狂い、はさみで斬り殺されてしまうというモノだ。

そして2018年、現在。それら都市伝説は忘れ去られていた。

そんな電子化JAPANに一人の少女がいる。名前は東美夏。都市伝説の本を見つけた好奇心旺盛な高校一年生である。


「美夏、何読んでるの~?」

幼なじみの波山楓(はやまかえで)がニコニコしながらこちらに近づき聞いてきたので、こちらも笑顔で返す。

「トシデンセツの本~」

そう言って掲げたのは、少し大きめの紙製の本だった。

「トシデンセツ?なにそれラノベ?どういうストーリーなの?」

波山の問いに美夏はほほえみながら返す。

「違う違う、ライトノベルじゃないよ。これは、たくさんのトシデンセツとその解説が書いてある本。21世紀前半に流行ったんだって~」

波山にもわかりやすく言ったつもりだったが、うまく理解してもらえなかったらしい。波山がなおも疑問げに聞いてくる。

「へー。んー、ところでトシデンセツってなんなの?」

まさかそこを聞かれるとは思わず、しばし考え込んだ後に、確かに知らない人が聞くと意味が分からないなと納得し説明する。

「えーっと、トシデンセツっていうのは....伝えられている噂話のうち、現代発祥のもので、根拠が曖昧・不明であるもののことかな、」

美夏は本のページをめくりながら続ける

「例えば、このページのトイレの花子さんとかなら、放課後でもできるけど....してみる?」

そういうと美夏は赤くて大きい文字で『トイレの花子さん』と書いてあり、その下にオカッパの女の子の絵と解説文のようなものが書いてあるページを見せてきた。

「ただの女の子じゃん、うちの学校にいるの?」

波山が聞くと、美夏は解説文を読みながら説明する。

「いる....と思う。隣の県の山口にはいたみたいだから、広島にいても...。あ、あとマンガとかにでてくるユウレイと同じような存在らしいよ。」

それを聞いた波山は確認するように美夏に聞いてくる。

「ねえ美夏、ユウレイって確か()()()()()()()()()()()()()、電波とか赤外線とかそういう普段見れないモノが偶然見えた、ってだけだったよね。本当にいるのかな?」

美夏は波山の問いに首を傾げながら答える。

「う~ん、正直微妙なところだけど....でも、ソレってただの噂でしょ?本当かどうか分からないし、私はしてみる...」

そこで美夏はクラスメートがみんな居なくなっている事に気づく。そして何かを思い出したのか、机の中から理科の教科書を取り出しながらこういった。

「どうしよう楓、次の授業理科だ。」

そこで波山も何かを察したらしい。三秒後、廊下には理科の授業道具を持ち、理科室へと全力疾走する二人の女子高生の姿があった。

~放課後~ 

「じゃあね~美夏〜。」

クラスメートが手を振りながら言ってきた。

「うん、また明日~~~。」

もちろん美夏も手を振り返す。すると波山が近寄ってきてこう言った。

「放課後になったし、トシデンセツ調査、はりきって行くぞ~~」

どうやらあの後、なんだかんだ言いながら波山も都市伝説調査に行くことになったらしい。美夏は「おー」と返し、都市伝説の本を一番窓際の一番後ろにある自分の席まで取りに行き、花子さんの事について書かれているページを開きながら、波山の方に戻ってきた。

「花子さんってどうしたら会えるの?」

波山の問いに対して、解説分を読みながら答える。

「えーっとね、三階のトイレを三回叩いて、花子さん遊びましょって言うと、はーいって返事が返ってきて、ドアを開けるとそのままトイレに引きずり込まれる。らしい。」

最後の方は声を小さくしながら言い、それを聞いていた波山は驚きながらこう言った。

「と、トイレに引きずり込まれる!?そんなこと、やっても大丈夫なの?」

美夏は落ち着くように促し、廊下に出て、波山にこう言う

「大丈夫....だと思う。さあ、行こう三階に。」

波山は不安な思いを抱えながら廊下に出て、こんな調査に参加するんじゃなかったと、今更ながら思う。

「ねえ美夏、私やっぱり...」

今からでも断れば美夏は帰らせてくれるだろうが、美夏にもしもの事があったらと考えると、どうしても途中で言葉が詰まってしまう。

「楓、何か言った?」

美夏に聞かれ、慌てて答える。

「あ、いや、何でも無い。」

波山はなんともいえない不思議な気持ちになっていた。階段を一段一段上るたびに緊張は増していく。気がつけば、目的の三階トイレは目前に迫っていた。

「いよいよだね。」

美夏が緊張と興奮を(はら)んだ声で言った。一方の波山は

「そ、そうだね」

声が震えていた。そして二人は女子トイレに入る。勿論、放課後のトイレに人は一人としていない。美夏は全部で七個あるトイレの、奥から三番目、手前から五番目のトイレのドアを叩く。コンコンコンという音が女子トイレに響く。そして美夏は口を開き

「はーなこさん、あそびましょっ」

と言った。トイレが静かになる。入ってきたときには気づかなかった、運動部のかけ声、吹奏楽部の演奏。そのまま三十秒ほど静止していただろうか。ふいに波山が口を開き

「やっぱりいなかったね、トイレの花子さん。」

と、安心した様子で行った。一方(いっぽう)美夏は少し落ち込んだ様子で

「そうだね..まあ、しょうがないか」

と言った。そして二人が諦めてトイレを出ようとして二歩ほど歩いた時、後方でドアが開くような音がした。

「ねえ楓、今後ろで音聞こえなかった?」

美夏は横を向き、波山に問う。

「うん、もしかして.....」

二人は顔を見合わせ、おそるおそる後ろを見る。たっぷり十秒ほどかけて後ろを向いた時、奥から三番目のトイレのドアが完全に開いて、中から白いワイシャツを着て、赤い吊りスカートをはいた、おかっぱ頭の女の子がでてきた。顔立ちは整っており、美人だ。そして二人が驚く暇もなく、その女の子(恐らく小中学生)は口を開き、

「誰よ、あたしを呼んだのはぁ、人がせっかく気持ちよく寝ていたのに...もう。あ、あたし人じゃなかった。忘れてた。」

あくびをしながらそう言った。美夏は驚きのあまり声が出ていなかった。しかし波山は思っていたよりも早く硬直状態から回復、そして花子さん?に対して本人なのかどうか問う。

「もしかして、あなたがトイレの花子さん?」

花子さん?は即答する。

「そうよ、あたしは"三番目の花子さん”。地縛霊(じばくれい)ね。で、あたしを呼んだのはアナタ達?何して遊ぶの?。あ、首締めごっこは無しね〜好感度下がるから。」

ここで今まで黙っていた美夏がようやく口を開く。

「この本には"トイレに引きずり込まれる”って書いてあるんですけど。私達は引きずり込まれなくてすむんですか?」

美夏は花子さんに、都市伝説の本の花子さんの解説ページを見せながら言う。花子さんは当然のようにこう言った。

「トイレの中に引きずり込まないと遊べないでしょ。あとその絵、美化しすぎよ。」

そう言うと花子さんはトイレに入るように、二人に促す。美夏と波山の二人は促されるままトイレの中に入る。すると花子さんもトイレに入ってきて、トイレのドアを閉める。そして花子さんは前髪を持ち上げ、額を二人に見せる。二人は目を見張った。なんと花子さんの額には長さ三センチほどの深い切り傷があったからだ。そして花子さんは言う。

「あたし、生きてた頃に虐待されてたのよね、おかっぱもその傷隠すためにしてたし。さあ、このことを知ったんだし、もう行けるでしょ。」

花子さんはそう言うとトイレのドアを開ける。

「嘘、....」

「え...」

美夏と波山は驚いていた。そう、ドアを開けたときそこは見慣れたタイルの床ではなく、木製の見慣れない床、そしてトイレの外に出てみると見慣れない木製の校舎。グラウンドは信じられないくらい狭い。

「ここはあたしの世界、今アナタ達が見ているのはあたしが生きていた時代の学校。アナタ達からすれば出来ないことが増えた不便な場所だと思う。」

そう言われ波山はポケットからスマホを取り出し地図のアプリを開く。普段ならば周辺地図が出てきてナビゲーションしてくれるのだが、今は反応が無い。

「ソレも今は使えないから。さあ、なにして遊ぶ?」

二人に花子さんが問うてくる。

「あ、私普段出来ないから鬼ごっこがしたい。」

いつの間にか平常に戻っていた美夏が、頬を赤らめながら言う。そこで波山は自分が鬼をする、と言おうとして口を開いたが、花子さんが左手でそれを制止してこう言った。

「いいわよ、あたしが鬼をするから二人は逃げて。」

そして五分後、結果だけ言うと二人はなんの抵抗も出来ず花子さんに捕まった。波山は六秒台後半はあるのだが、それでもあっさり捕まってしまった。その後もかくれんぼ、いつの間にかあった縄で縄跳びなど、色々していた。そして花子さんと二人は奥から三番目のトレの個室に入った。花子さん口を開き、

「はぁー楽しかった。また暇があったら呼んでね、」

そう言った。どうやら遊んでいくうちに仲がよくなったらしい。波山と美夏は揃って

「うん!」

と返した。その言葉を聞いた花子さんは少し嬉しそうな笑みを浮かべ、霧状になり消えていった。

二人が次にトイレのドアを開けた時、そこには見慣れたタイルの床があった。

「他にも調べてみよっか。」

波山がそう提案すると美夏は、

「もちろん!まだまだ沢山あるから途中でへこたれないでね。」

そう言い、二人は女子トイレを後にした。学校を出たとき時計の針は七時を下回っていた。次の日、花子さんに会いに行くことは出来なかった。なぜならばトイレで血痕が見つかったからだ。噂によると同じ学年の一夜快(いちやかい)がトイレで吐血、そのまま何故か屋上まで行き、飛び降りたらしい。美夏と波山は自分たちの知る花子さんはこんなことをするはずが無い、としか思えなかった。というより、そう思うことで自分たちが花子さんを起こしたことを正当化させようとしていた。



花子さんmemo

この物語の花子さんは虐待によってついた傷を見せることによって自分の世界に見せた人を引きずり込むことが出来るよ。また特性として、自分のことを呼んだ人のところには強制的に飛ばされちゃうの。

本編では長年呼ばれてなかったせいか眠そうにしていましたね。


どうも矢野です。

いろいろあってこの物語を書くことになりました。

ところで、僕は花子さんって小学校低学年の頃に流行って、高校ぐらいに上がるとみんなの頭から自然と消え去っていくような気がします。実際、僕もこの話を書くまで詳しく覚えてませんでしたし、皆さんも読んでいただくまで詳しく覚えていなかったと思います。花子さんといえば、山形県の別説で、「花子さんの正体は3つの頭を持つ体長3メートルの大トカゲで、女の子の声で油断した相手を食べる」、というものもあるらしいです。山形県の男子は女子トイレに入るだけで命がけですね。まあ、女子トイレなんて入るだけで学校生活終わるんですが。かなり脱線しましたが次回も見ていただけると幸いです、次回がいつになるのか分かりませんが。

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