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ゆうたを止めろ!

 それから何日か過ぎました。

 ゆうたのクラスではカードゲームが流行っていました。点数の高いカードが売っているとうわさの「ルミナス」には小学生たちがあふれていましたが、ゆうたもまことも「ルミナス」には近づきませんでした。

 あのひげを生やした小太りの男の人も、ゆうたのまわりには現れず、ゆうたは何日か前の心配を忘れかけていました。


 ある日、ゆうたがいつものように郵便受けから家の鍵を出そうとした時、いつもの場所に鍵がないことに気付きました。おかあさんは、仕事に出るときはいつも鍵を郵便受けの内側の上に貼り付けておくのです。それが、今日はなぜか郵便受けの下に落ちていました。その時はさほど気にしなかったのですが、家に入って、いつもどおりおもちゃ箱を見た時、何か違和感を感じました。そして、ルーベンカイザーを手に取ったときにそれが何だったかわかりました。

 ぼくのルーベンカイザーじゃない。

 星に突き刺さる雷のマーク。

 それがルーベンカイザーのトレードマークでした。ゆうたはすぐに気付いたのです。ルーベンカイザーの胸にはりついたそのトレードマークの色がほんの少し違っていることに。

 足の裏を見ると、DC97654と刻まれています。

 番号が違う!

 すぐに「ルミナス」のひげを生やした小太りの男の人がゆうたの頭に浮かびました。ゆうたは、ビュートルグラスに聞きました。

「ひげを生やした小太りの男の人だね?」

 ビュートルグラスは、うなづきました。

「その男は、鍵を開けて入ってきた。どうして鍵が開けられたのかは我々にはわからないが、その男はルーベンカイザーの足の裏を確認すると、青いバッグから取り出したものとすり替えて持ち去った」

 ゆうたは、いても立ってもいられませんでした。

「待つのだ!ゆうた」

 ビュートルグラスがゆうたを止めようとしましたが、ゆうたはもう外に飛び出していました。アンジェリエッタが授けた王国の住民を守る力のことなど、今のゆうたの頭から消し飛んでいました。

 このままでは、おもちゃたちが心配していた危険な目に、ゆうたが自分から飛び込んでいってしまいます。


           ◆


「ルミナス」へ行くには、小学校の前を通ります。ちょうど小学校の前をゆうたがかけ抜けようとした時、部活動が終わった野球部の部員たちが出てきました。

「おい、ゆうた!」

 ゆうたのお兄さんが、ゆうたを呼びとめました。

「そんなに急いでどうしたんだ?家にいたんじゃなかったのか?」

 ゆうたが走る姿なんかめったに見ないお兄さんは何かあったと直感して聞きました。

 ゆうたは、お兄さんに言うべきかどうか迷っていました。ぼくの言葉を信じてくれるだろうか?あのルーベンカイザーは僕のじゃないって。「ルミナス」の店員が盗んだんだって・・・。もし、お兄さんが信じてくれなかったら、僕はどうしたらいいんだろう。

 色々な思いが、心の奥底から突き上げてきて、ゆうたの目から涙がこぼれおちました。

 お兄さんは、何も言わずゆうたの肩に片手をかけると、野球部のみんなに言いました。

「今日はゆうたと帰る。みんなごめんな」


 今走って来た道を、ゆうたはお兄さんと歩いています。

 泣きやんだあとも、ゆうたはお兄さんに何も話せずにいました。お兄さんも、ゆうたを問い詰めませんでした。

 もう少しで家に着くというところでふいにお兄さんが言いました。

「・・・また、おもちゃたちが戦争を始めるって言い始めたのなら、俺はお前に味方するぜ」

 お兄さんを見ると、にっこりゆうたに笑いかけます。ゆうたは、せきを切ったようにお兄さんにすべてを話しました。


「どうしてこれがゆうたのルーベンカイザーじゃないって分かったんだ?」

 お兄さんの問いに、ゆうたは星に突き刺さった雷のマークを指差しました。

「このマークの色が違ってる」

 お兄さんはマークの色を見ましたが、首をかしげました。

「おれにはよくわからないなあ。だけど、ゆうたが言うんだったら、おれはそれを信じるよ」

「じゃ、ぼくとルミナスに行ってルーベンカイザーを取り返してくれる?」

 お兄さんは首を横に振りました。

「そんなあぶないことはできないよ。警察に届けるしかない」

 お兄さんは言いました。

「俺みたいに、このルーベンカイザーがゆうたのじゃないってすぐには信じてくれないかもしれないけど、それしかない。おかあさんに話をして警察に届け出よう」

「でも、警察の人が信じてくれなかったら?」

「信じてくれるかどうかは、まずやってみなくちゃ分からないだろ。ゆうた、あぶないことは大人に任せるんだ」


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