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少女は魔王に夢を見る  作者: 狂える
二巻
11/62

十一話

女王の話を聞いた後、四人は別の部屋に通された。

執事服の男に導かれてそれぞれが席に座ると、その中心である台の上に一通の手紙らしきものが置かれる。女王が言っていた、例の手紙だ。

我先にとそれを手に取ったのはレオだった。早速目を通していると、ローデがいきなり大声を上げる。


「俺は行くぜ。お前ももちろん行くよな?」


新しく通された部屋はそこまで狭くもなかったが、その大声はあっという間に部屋を満たした。

ローデがここでいったおまえとはレオのことだったが、当の本人は手紙を読むのに夢中で声をかけられたことに気づかない。

それに、レオが顔を上げる前にその言葉にあきれてライクがため息をついていた。


「話を聞いていなかったのか?拒否はできないといっておられただろう」


「俺は雇われだ、お前らみたいに国に忠誠を誓ったわけではない。だからこれを受けるかどうかは自分で決めるってわけだ。安心しな、今言ったのは一種の意思確認みたいなものだ。拒否するきはさらさらない。だがそれにしても噂どおりの美貌だったな」


「ああ、その通りだ。だからこそあの方はあのように苦悩に顔をゆがませてはならないのだ。私はこの任、全身全霊を持って望む気だ」


ライクはそういうと、意気込みたっぷりに深く頷いた。

どうやらローデと意気投合したらしく、お互いに頷きあっているあたり意外と相性のいい二人なのかもしれない。

ルーシャも何も言っていないが、顔つきからやる気は十分なようだった。

しかし手紙を読みながら考え込むようにして沈黙を守っていたレオは、手紙から顔を上げずにひとりでにつぶやいた。


「グラウンドさん、ひとつ女王様をよく知る人物として質問なんだが」


だがその問いに返事する声は、レオがしばらく待っていても聞こえることはなかった。

レオが不審に思い顔を上げると、ライクはレオとは反対方向を向いている。

分かりやすい反応に思わずレオは苦笑しながらも、再度声をかけた。


「おいおい無視かよ。仲良くしようぜ?」


「女王様にあのような態度をとった人間と行動を共にしなければならないとはな。女王様の寛大な処置に感謝することだ」


「ああ、あの対応には本当に感謝しているよ。さすがに肝が冷えたからな」


レオにとっては、今思い出しても寒気のする出来事だった。

冷静になって振り返ればなぜそんなことになったのか――――――まるで見当がないわけではないが、不思議な出来事ではある。

だが今はそれよりも気になることがあるレオは、とりあえず話を続けた。


「俺の質問の答え、女王としてという言葉がやけに気になったんだ。捉え方によっては変に捉えられる言葉、普通ならあんな場面で使わないだろ?それに言葉も大変悩んでいたようだし、何かわけがあるのか?」


「・・・・・・女王様はつい数年ほど前に友人を亡くされて、それ以来心をふさぎこませたままなのだ。先代女王が退位なされて今の女王様が冠をかぶった時だって、女王様は微笑しか浮かべていなかった。女王様は正直な方だからな、自然とそういう言い回しになったのも、そういう経緯があるためだろう」


初めて耳にする話に、レオは素直に驚きを見せていた。

というのもレオはこの手の話に疎いわけではなく、むしろ有名人のゴシップに関しては詳しいくらいなのだ。少なくとも市民がいたずらに口に出すような世間話なら大概のことは知っていると自負しているくらいだ。

つまりレオが知らなかったということは、この話は酒場で偶然耳に入るような市井に出回っている話ではないということだった。


女王の印象が変わりそうな話を、よりにもよって近衛騎士のライクがあっさりと話したことはレオにとって意外だった。

だがもちろんそんなことは本人の前では触れずに、相手の気が変わる前にとりあえず頷く。


「年単位も前の話なのにいまだに引きずるとはよほどだな。女王の友人なんで普通の人間ではないだろ?どうして死んだんだ?」


「戦争で国が滅びたそうだ。他国の王女だったらしい」


「それはまたこのご時勢に珍しいことだな。となるとセントリーのやつらは、女王にとっては仇ってわけだ」


レオの言葉にライクは頷いた。

戦争中の国はいくつもあったが、この数年で相手を攻め滅ぼすまでにいたった国というのはセントリーランページ国しかない。

自ずとどこを目の敵にしているのかもわかることであった。


「・・・・・・で、それだけか?」


「なにがだ?」


「いや、ないならいい」


レオは聞きたいことが聞けたのか、満足げに首を振ると手に持った手紙を手放した。

四人がこれからこなさなければならないことが記されたそれは、テーブルの上にひろげられる。

そして、三人の視線はその手紙に集中した。











ウォタロンの偉大なる女王、リア様へ。


このような形での自己紹介もなんですが、はじめまして。魔王といいます。


この際この手紙が本物かどうか、その判断はあなた方に任せます。信じれば何事も無いでしょうし、信じなければ何かが起こるかもしれません。というわけで信じてもらえるかどうかは問題ではありませんので、早速本題に移ります。


このたび、私魔王は催し物を開催したいと思います。


催し物の内容は内緒です。気になる方はぜひ参加されてみてください。


参加人数は手紙一つにつき四人までとさせていただきます。多くても少なくてもだめです、必ず四人でご参加ください。


賞品もたくさんございます。きっと皆さんのお眼鏡に適うものもあるでしょう。


集合場所はセントリーランページ国の血まみれの森、その中にたたずむ小屋です。集合時間は葉月の二十四日です。セントリー国側には話を通しておりますので、手紙さえ見せれば入国させてもらえると思います。


最後に、この招待はすべての国に送られます。そのことを踏まえ、それにふさわしい身なりと心構えでい

らっしゃてください。



魔王より   

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