第二話☆気付いた気持ち☆
何があってすぐに助けてくれたのは先生だった。何もしてないのに先生はすぐに私の心を読み取ってくれた。私は先生に全てを奪われた。
この世に産まれてきて
運命の人は
きっと決められていたの
きっと出逢える
きっと結ばれている
あなたに出逢えて
そう思えた
-気付いた気持ち-
『集合っ!』
体育館の匂いは
独特な匂い
汗の匂い
木の匂い
ワックスの匂い
先生が集合をかける
『体育委員!あとよろしく!』
私は体育委員になった
正式に言えば
やらされた
先生はいつもそう
集合はかけるが
それから全て体育委員に任す
だから生徒とは
あまり会話しない
『はい』
体育委員は体操もランニングも全て
先頭にたってやる
元気のいい優子ならできるよ!
友達に逆らえず
やったはいいものの
人には限界と言うことがある
今日はバスケ
試合をすることに…
先生は片手に
ボールを持っている
『浅村っ!』
『はい』
また何かの頼みだろう
正直コキを使う先生は
嫌いだった
『教官室行って俺の机の上に笛置いてあるからもってきて』
なんと言う先生だ…
と思いながらも
返事をし、教官室へ行った
一応ノックをして
教官室に入った
そこには男の先生が1人
『どうした?』
きっとこの先生は
素敵な先生だろう
直感でわかった
『窪田先生の…笛…』
そう言い中へ入った
窪田先生の机は
正直言って汚い…
飲みかけのコーヒーカップ
山ずみの紙の束
開きっぱなしのパソコン
机の上にあるとか言っといてないし…
机の前でチラチラ笛を探していたら
その先生が一緒に探してくれた
『あっ…これ、窪田先生の笛』
一緒に探してくれた先生が見つけてくれた
『ありがとうございます!』
やっぱり
やっぱりこの先生いい先生
もう一度お礼を言って
教官室をあとにした
『先生!』
そういい笛を先生に渡す
『浅村、遅い』
礼も言わず遅くなったことに怒る先生
『すみません…』
『試合始めるぞ〜』
この人には私の言葉が届いているのか
この人はなんて最悪な人なんだ
せっかく探して持ってきたのに…
イライラが募る
『優子!一緒のチームだから頑張ろう!』
智香が私にナンバリングを渡す
『うん』
『なしたぁ?顔が怖いよ』
『…ちょっと…あとで話す』
そう言い試合が始まった
バスケは得意
楽しいし…
智香がいて力強かった
次々に点が入る
審判をする先生
ちょっと押しただけでも
ファールを取る
試合も終盤
疲れも見え始める
そのときだった
―――バンッ!!
――ズドンッ!!
相手チームの人に
倒された
――ピーッ!
先生が笛を吹く
『優子っ!』
倒れた私に智香が声をかける
『…くっ…っ…』
足首が痛い…
倒れながらうずくまって
足首を抑える
『…保健室行こう…浅村』
そう言って先生は私を軽々持ち上げた
『…少しの間みんなで協力して試合してて』
そう言い残し
私をお姫さま抱っこして
体育館を出ていった
『……おろして…先生』
『怪我人が文句言うな』
『恥ずかしい…』
『暴れるな』
何を言っても先生は降ろしてくれない
『重いから…』
『…知ってる』
チーン…
『…最低…』
そう言い先生の頭を叩いた
『…冗談だ』
そう言い先生は微笑んだ
先生の顔をこんなに近くで見たのは初めて
始業式以来の笑顔
それは輝かしい
爽やかなスポーツマンな笑顔だった
『失礼します』
器用に先生は保健室のドアをノックする
『どうしました?』
保健室のおばさんが
私を見る
『バスケの試合をしてて足捻ったみたいなんですよ。結構腫れてて痛がってるんで病院に行った方がいいと思いまして…』
先生は私を降ろし
ベッドに座らす
『…そうね、腫れてるわ。歩けない?』
足首がヒリヒリする
『捻挫もあるかもね…病院行きましょう』
『……はい』
我慢できないくらいの痛みだった
『…じゃあ授業戻るんで、あとよろしくお願いします』
そう言い先生は保健室を後にした
『お大事にな』
ドアの前で一度振り向き
また微笑む先生
クールな先生は
いつもクールなのかと思ってた
だけど違った
笑うと素敵な人
優しい笑顔
こっちまで笑顔になるくらい
『…痛い…』
そのあとタクシーに乗って病院へ向かった
翌朝…
『骨折っ!』
智香が朝から驚きの声
『あんたどんだけ骨弱いのよ、カルシウムとれー!』
私の右足首には包帯
二本の松葉杖
『…やっちった!』
苦笑いをしながら
友達に報告した
『アホーアホー!』
からかう友達
確かにアホだ
あれだけで…
朝学校の階段はキツい
友達に荷物を持ってもらい
もう1人の友達には
松葉杖を持ってもらい
手すりをつかみながら
苦労して三階まで
登ってきた
『バスケできないね、てか体育できないね、体育委員!』
智香が言う
『そうだぁ〜智香かわりに頼む!』
『いやだよ、窪田先生の言いなりにはなりたくない』
そうとい嫌われているであろう先生
確かにそうだ
『よく耐えられるよね〜優子。私なら無理!無理!』
私も限界まできてるんだ
あの先生は偉すぎる
『……私も嫌だよ』
そう口にしながらも
あの時微笑んだ笑顔が
頭に残っていた
『ご覧の通り骨折でした、先生』
体育が始まる前教官室へ
私の足元を見ながら
腕を組み
唸る先生
『…骨折か…全治は?』
『…二週間くらいです』
その私の言葉に
ため息をする先生
『二週間体育出来ないぞ、体育委員!』
『すみません…』
『困ったな……ともかく安静にしてなさい』
そう言い先生は授業の準備をしはじめた
何…この胸の痛みは…
何なの…
『…なにしょ…』
他の皆は楽しくランニングしている
それをステージ上から眺める私
暇…暇すぎる…
見学を二週間もしないといけないとかありえない…
怪我した自分に腹をたててたら先生がやってきた
『…浅村〜暇そうだから手伝いして』
そう言い先生が持ってきたのはプリントの束
『これ一枚一枚重ねてホチキスで止めといて。会議に使う資料なんだ。』
私の返事を聞かないまま
私に作業を教える先生
足には負担がかからない仕事
暇だからいいか…
そう思い
体育中はずっと内職みたいなことをしていた
響き渡る…体育館の床と上靴が擦り付き合うキュッキュッとした音
皆楽しそうに試合してるな…いいな…
そう思いながらも
手を休めるわけにはいかない
終了五分前にプリントの束はなくなった
『はぁ…終わった』
それと同時に授業も終わった
集合をかけ礼をする
『…終わったか?』
『はい』
『どれどれ…』
そう言い先生は確認し始めた
『うん、ありがとう、助かった』
片手を上げ教官室に戻る先生
顔に笑みはない
『…笑ってよ…』
あのときみたいに
お姫さま抱っこしてくれたときみたいに…
骨折してからの
日々は出来ることが
出来なく暇で
しょうがなかった
「おはよう」
玄関から教室に
向かう移動も大変
「いつもごめん、カバンお願い」
智香にカバン持ちを頼む
松葉杖を片手でもち
もう片方は手すりを掴む
「んっ!」
朝から疲れる……
そんなとき
「ほぃ!」
私の片手から
松葉杖を取り上げた男
「窪田先生」
「この間のお礼だ。教室までな。」
この間…
あぁ〜プリントのことか
「ありがとうございます」
そう言って両手で手すりを掴み登り始める
少し先に進む先生
それを追いかけるあたし
まるで恋の駆け引きのよう
一生懸命登っていると
先生がピタッと立ち止まった
「浅村」
その声に先生を見る
「…夢にお前が出てきた」
何を言ってるんだ
先生は
「…そぅ…そうですか…」
返す言葉がなかった
「夢ってさ、叶うものもあれば叶わないものめあるよな」
私の顔を見て
真面目な顔をして…
吸い込まれそうな
瞳
「…そんなことないですよ、先生」
そう、夢は
願い続けたら叶う
諦めなければ
叶うんだよ
「叶いますよ、先生」
先生の目を見て
笑ってみせた
そしたら 先生も
私を見て
微笑んだ
あっ…
私…この人と…
その時
気付いた自分が居た
そして先生も
夢を叶えようと決めてた
先生
あの時
二人だけの時間
止まった気がしたよ
胸騒ぎがした
胸騒ぎが始まった
更新遅くなりますが頑張ります!