いつもの時間
初夏の季節の昼下がり、3時を示す教会の鐘が鳴り響く時間。豊かな海の幸や山の幸、輸出入に秀でたユカルタ帝国のはずれに大きなお屋敷があった。この時間その屋敷の図書室に1つの影ある。今日もいつものように影があった。その影の正体はミプリカ・ファン・オリヴィエというユカルタ帝国子爵家の4女であった。この娘は女性らしい可愛らしい容姿をしていながらも見た目や背格好といったオシャレにはあまり興味がなく、勉学の方に興味をもっていた。ミプリカはいつも通り哲学やら地どう熱やらの本を読み漁っていた。
一方その頃、書斎ではというととある争いが起きていた
「ですから此方で買っている魚介類をもう少し減量していただけないかと言っているのですよ?」
「そのようなこと出来る訳がないだろ。アルフレッドくん。他の屋敷の者は何と言ったかい?」
「それは…出来る訳がないと…」
「やはりな。だいたい何故魚介類の購入を減らせなどと無茶を言うんだ」
「国王一家、貴族を除いた国民の日々の食事をご覧になったことがありますか?毎日毎日固くなった古パンで生活をしなければならない国民をご覧になったことがありますか?ないですよね?貴族が魚介類をたくさん購入するばかりに国民に渡る魚介類はほとんど無いに等しいんですよ!?」
「わかったわかった。検討してみよう。これは私の一存では決められないからな。また後日来てくれ」
「わかりました。次は来週のこの時間に来ますので。では失礼します」
そこまで言うとアルフレッドは書斎を出ていった。
「どうしたらいいのか…。あやつにはいずれ我が子爵家を継いで貰いたいとは思っているが…」
廊下を歩いていたアルフレッドはひとつの扉に目を向けた。その扉は他の部屋とはちがっていた。
(この部屋はなんだ?)
扉を開けてみるとそこは図書室だった。
(バカでかい図書室だな。こんなとこ誰も来ないだろ)
そう思い部屋から出ようとすると、奥から物音がした。怪しく思い近寄ってみると、本棚の片隅に分厚い本を持った少女がいた。少女はアルフレッドが近くにいることに気がついていないようだ。
「やあ、ミプリカさん。こんにちわ。お久しぶりです」
俺が挨拶をすると彼女の肩がビクッっとなった。
「あっ…カルミナーヤさま…ご無沙汰しております。お元気そうで。本日はなにか私にご用ですか?」
「いや、今日は旦那さまに用があってね。とは言っても先程部屋を追い出されたざまですけど」
「お父様にでしたか。それはもしかしてここ近年の身分格差による経済問題についてですか?」
「まあそうだね。ミプリカさん詳しいんだね」
「学生時代ラフィアにも情報は流れていましたもの。ユカルタ帝国は王族、貴族ばかりが得をして一般庶民にはまともな食べ物さえ手に入らないと。ユカルタ人としてその話を聞いたときは顔から火が出るほど恥ずかしかったですわ」
ミプリカさんは昨年学校を卒業されたばかり。学校もユカルタ帝国の学校ではなく隣国のクルトン国にある有名校ラフィア学園に通われていた。
「クルトン国にも情報はあったんですね。」
「帰ってきてみてうんざりしましたもの。経済だけかと思いきや政治も王族、貴族ばかりが有利になるものばかり。高い税を払っているのは国民だけだというのに、その国民のことを考えないバカなお貴族様たちばかり。イラついてしかたありませんわ。」
「ごもっともな意見ですね。貴女が男性であればどれ程よかったか…」