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異世界から「こんにちは」  作者: 青キング
民族とサラリーマンの夏
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探索の最中に地下階段

 ユリリンと謎の魔法を使う男が去ってからもナレク達一行は街の探索を続けた。

 建材の瓦礫を慎重に魔法で屑にしていった。

 街の中央辺りの瓦礫だけは黒い光沢持ちの建材で、表面に薄く魔力の膜が張られていると見解を出した。


「どうやら、ここの瓦礫は組織の建物のだったらしいな」

「なんでわかるんだ?」


 しれっと断言したナレクにブルファが理由を尋ねた。

 ナレクは黒い表面に触れながら答える。


「認証用の魔法障壁だからだ。十七年前にはそんな魔法は開発されていなかった」

「誰かが新しく建設したってことか」

「だから断定できる。とはいえ資料の文献で覚えた知識だがな」


 組織の建物の瓦礫を見つけてからは、同様の造りのものを一つずつ破砕していった。

 小規模な爆発で瓦礫を破砕したリアンが、瓦礫の下から現れた何かに首を傾げる。


「これは何でしょうか?」

「リアン、見せてみろ」


 近くにいた藤田がリアンの見つけた何かを覗き込む。


「これは階段だな」

「階段ですか」

「それも地下階段だ。何のためにこんなものが?」


 ナレク、ブルファ、バルキュスも集まってくる。

 ナレクが真っ暗な地下階段の穴を覗いて言う。


「奥に誰かいるのかも知れんな」

「入ってみるか?」


 ブルファが判断を問う。

 ナレクは頷く。


「先に俺が行く、壁や地面の状態を確認したら戻ってくる」


 そう深くはない階段を降りて奥へと進むが走れる長さもなく行き止まりに当たり、その右手に黒い瓦礫と同種のドアを認めすぐに引き返した。

 外に出てきたナレクに藤田が訊く。


「どうだった?」

「ドアが一つあっただけだ。それも証明用の黒い素材で破るのには骨が折れる」

「人のいる気配は?」

「入ってみないとわからないな。しかし認証用の素材を使っているということは安易に入られては困るのだろうな」


 ドアを破る気でいるブルファが方法を尋ねる。


「どうすれば破ることができるんだ」

「ブルファ、あの素材を破るのにどれだけ手間がかかるか知ってるのか?」

「それを聞いてるんだ」

「まあ、理屈は簡単だ。証明機能を失くせばいい」

「どうやって?」

「強い物理の衝撃ならば魔力の膜に亀裂が入り機能を失う」

「強い衝撃ってどのくらいよ?」

「詳しくは知らんが体術などの技では厳しいだろうな」

「俺に任せてくれないか」


 思案顔になったナレクの肩に藤田が手を置いた。


「ああ、あれか」


 バルキュスが藤田の考えに思い至って声を出した。


「私は貫通するのをすぐ目の前で見たからな」

「なんだ、あれとは?」

「そうだ、なんだよ?」


 バルキュスのしたり顔にナレクとブルファは理解に困った。

 藤田がスーツの懐をまさぐり、あれを取り出した。


「これだ」


 藤田が取り出したのは先程、ユリリンの左胸を貫通せしめた銃弾を放った拳銃だった。

 ああー、と合点がいきナレクとブルファは思わず声を漏らした。


「だから任せてほしい」

「わかった、藤田に任せる」


 誰からも異議はなく一行は藤田を先頭に地下階段を下った。

 行き止まりに当たり、藤田は右手を見る。瓦礫と同じ素材のドアがある。

 藤田はすぐ後ろのナレクを振り返る。


「撃ってはいけない箇所はあるか?」

「ないな、どこでも構わない」

「そうか」


 ドアを正面に向き直り両手でがっしり拳銃を持ち銃口を突きつける。

 拳銃がはね上がり銃声がうるさく反響した。

 銃弾が嵌まり込みドアの表面に放射線状の亀裂が行きわたる。

 突入の合図にナレクが首を縦に振った。

 藤田は特殊機能を逸してただのドアと成り果てた黒いドアに蹴破って転がり込んだ。

 薄ぼんやりとした暗闇の空間に人の動く気配を敏感に感じ取る。


「誰だ?」


 暗闇の中、誰何して人が接近してくる。

 ナレク達も音を忍ばせ藤田の近くまで踏み入った。

 藤田は拳銃を構え直す。


「今は危険だよ」


 暗闇からバスローブの若い男が姿を現した。

 銃口が若い男に向く。

 男は物怖じせず自身の背中越しに奥を指さす。


「計画の最中なんだよ」

「……手を挙げろ」

「誰か知らないが願い下げだ」


 計画の実現に没頭し疲れたきった顔に反抗の色を浮かべた。

 期せずして室内に冷気が漂う。


「冷えてきたな、お前何をした?」

「無駄な抵抗は身のためにならんぞ」


 ナレクが魔力を身体の外に醸出しながら警告する。

 男は俄然片頬笑んだ。


「ついに叶ったんだ。俺の十七年の願いが」

「十七年だと?」

「そうだ、十七年間ずっとこの願いを実現させるために過ごしてきた」


 男は恍惚たる表情で言葉を並べる。


「姉さんを生き返らせることだけが願望だった。理不尽な死別なんて納得できない。姉さんと一緒に居たいんだ、俺は。だからこんな大掛かりな施設まで造って計画を進めた」

「……ユリリンに殺人を指示したのはお前か?」

「そうだ、村の女性を一人殺せと命じた」

「マライ村での殺害は?」

「知らない、命じていない」


 男はユリリンにマライ村での殺害は命じていないと断じた。つまりあの惨事はユリリンの意思によるものと考えられた。男の誣告の可能性を除けば。


「連れていけ」


 ナレクが藤田に指示する。

 藤田は銃口を向けたまま男の後ろに回った。

 男も黙ってされるがままに従った。

 藤田とバルキュスが男を連れ出すのを見届けて、ナレクは室内を見渡す。


「実験に使う器材ばかりだ」

「ああ、あも男の実験に対する執念がわかるな」


 共に居残ったブルファも歩き回って物色する。

 そこでつと鉄鎖に脚を引っ掛けてつんのめる。


「なんだよ、こんなとこに鎖って。被虐の癖でもあったのか?」


 皮肉りながら鉄鎖を目で追ったブルファが、突然息を呑む。


「おいナレク、人が繋がれている」

「なんだと?」

「見てみろよ」


 ナレクは鉄鎖のあるところまで来ると目をかっぴらいた。


「拘束衣と鎖で捕縛されている。今すぐ解放するぞ」

「わかった」


 青年を束縛している拘束衣と鉄鎖を手分けして二人は外していく。

 その間、青年は身じろぎもしない。


「気を失っているようだ、保護するぞ」


 ナレクは束縛を解いた青年を肩に担ぎ上げ、ブルファと外に出る。

 地下階段の外では若い男に同伴する藤田とバルキュス、不安そうに萎縮するリアンが佇んでいた。


「ケガとかしませんでしたか?」


 リアンが帰ってきた二人を気遣って尋ねる。

 ナレクが青年を降ろして微笑む。


「心配し過ぎだ。罠には手を出さない」


 ブルファが鼻を鳴らす。


「ナレクはプロなんだ、罠ならすぐに気づく」

「それならいいんです」


 ほっとしてリアンは肩の力が緩む。

 ナレクはバスローブの男を見る。


「はっきりしないことは後で吐かせばいい」


 その後ナレクの一決で男と青年を藤田とブルファ同伴でナバスへと先に帰し、バルキュスとリアンを伴って瓦礫の下に埋もれた死体を見つけ出す手助けを請うた。


「血の匂いがするにはするが位置が特定できない。虱潰しに捜すのか?」


 バルキュスが当然の疑問を投げかけた。

 ナレクはいや、と首を振る。


「魔力を帯びているのは一所だけだ。そこを徹底的に捜す」

「何を探すんですか?」


 リアンが根本の目標を問う。

 ナレクは事実が重たげに言った。


「シャムの死体だ」














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