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異世界から「こんにちは」  作者: 青キング
民族とサラリーマンの夏
50/100

歴代No.2剣士の放浪記ー時代の錯誤ー

 剣士と青年は音を極力立てないように、青年が不審人物に唆された街の中を早足に歩いていく。

 音を立てないようにするのに意味があるのか、と問われたら剣士は敵に居場所を特定されないようにだ、と生真面目に答えるだろう。傍目に見たら公的な場所でこそこそしていて悪目立ちしているだけの変人である。逆に居場所を特定されるだろ__。

 そんな常識を知らぬ剣士が、喫茶店の店前看板を陰に身を隠して石畳の道の先を鋭く見据えながら、後を着いてくる青年をノールックで手招きする。

 しかし青年は動かない。


「すごい目立ってますよ」


 呆れた声で青年は剣士に言った。自ずと目もバカを見る目に変わる。

 そんな青年の視線など気づきもしない剣士は、顔も見ぬまま真剣な声で追跡のいろはを説明し始める。


「敵の追跡においてのタブーは、自らの位置を悟られることだ。君も極力姿を晒さず、慎重に行動するといいぞ」

「臨機応変って言葉知ってますか?」

「君は俺をどう思ってるんだ?」

「歴代No.2の剣術の実力者、ですよね」


 それを聞いて、剣士は片眉を上げた。


「そうなのか知らなかったぞ」


 青年は、この人が伝説の剣士なんだもんな世界って不思議だなぁ、と世の中の意外性に少々驚いていた。

 そんな矢先__。


「おい、お前ら見ねー顔だなぁ? どこのもんだ?」


 ピンク髪のどこかチャラついた髪型の不良っぽい若い男が、青年を後ろから意を唱えたそうな目付きをして話し掛けた。

 突然掛けられた声に、青年はぎょっと振り向く。


「なっ、なんですか!?」

「どこのもんだって聞いてんだよぉ!」

「なんだ、お前は」


 若い男に目の前に剣士がさっと立ち塞がり、鋭い目力で睨み付ける。

 元より、悪目立ちしていた剣士と青年の周りには、騒動を聞いてか野次馬が人垣を作り始めていた。

 それとは正反対に、関わりたくないと店を閉めたり、逃げ出す人たちも散見された。

 野次馬達のざわつきなど気にもならない様子の剣士と、明らかに苛立たしさを覚え始めている男は、共に睨み合う。


「俺達に用があるのなら聞こう」

「剣なんぞ持ち歩きやがって、どこのもんだ!」

「旅人だ」

「ああん、旅人ね。かなり物騒な旅人だなぁ」


 男は何幻いかを悟ったような笑みを、軽口を叩きながら浮かべた。

 険悪な雰囲気を変えようと、二人の睨み合いに口を挟めずにいた青年が、解釈してもらおうと詳述を試みる。


「あの僕達の行く先々には、物騒な地域も多くて自衛用に剣を持ってるんです!」

「くたばれ!」


 狂ったような奇声で、男が唐突に叫んだ。

 その瞬間と同時に、剣士が長剣を霞むような速さで斜めに振った。

 男の周りの空間が歪み、明滅した男が耳障りな声を掠れ気味に出しながら消えた。

 青年は目の前で何が起きたのか理解できず、呆然として言葉を失った。


「幻を見せたところで、さして俺には影響力がないぞ」


 落ち着いた声で剣士は言う。

 青年は改めて目の前で泰然とする剣士に、感服の意を持った。

 弾んだ声が青年の口から零れる。


「さすがですね」

「何に感心しているか知らないが、君に変な話を吹きこんだのはあいつなのか?」


 うーん、と青年は思案顔になる。


「もしかしたら、そうなのかも知れません」

「なんだ、その曖昧な答えは?」

「だって僕、その人の姿をはっきり見たわけじゃないですから……」

「そうか、そうだったな。では、さっきの幻は君がやったのか?」


 青年の家でその話を聞いたことを思いだした剣士は、青年を唆した犯人を突き止めることが八方塞がりだと、薄々感じた。

 幻法は一度見た人物ならば、使用者の意思でその場に居なくても幻を見させることができる。

 すなわち、使用者がどこにいても念じるだけで人を幻の世界に送る、ということだ。

 とはいえ幻法も、幻の鮮明さは熟練度によって皆それぞれに差があり、付け加えて幻法は相手の身体自体には干渉できない。

 剣士は幻法の知識が全くない、と発言から見受けられた。

 青年が幻法の説明を要点だけ踏まえて説明すると、剣士は驚愕に打たれた顔をした。


「それは幻術ではないのか? 俺の体を触れた何者かが、幻術師だったのか?」

「時代錯誤があるんですね、やっぱり。仕方ないことなんですけど……」


 時代錯誤、という単語を耳にして剣士はムッとなる。


「俺は時代錯誤してないぞ! 最近の俗話も知っているぞ」

「えっ、そうなんですか!」


 自身ありげに言う剣士に、青年は予想外過ぎてあからさまに驚く。

 剣士は自身の知っている俗話を切々と語り出した。


「新種のマレロという果物の、農園栽培が始まったそうだ。マレロは健康にいいと巷ではちょくちょく噂になって……」

「それ、百年前の出来事です……」


 青年は呆れて溜め息を零すが百年前の出来事を詳細に話している剣士を見て、歴代No.2剣士っていう確証を持つのには十分だな、と内心信頼感も余計に湧いてきていた。


高校生になって、ついに花粉症になったかも知れません。

嫌ですねぇ、鼻水が止まりません。喉の奥がチリチリします。

それでも執筆は頑張ります。

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