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異世界から「こんにちは」  作者: 青キング
異世界と現実世界
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刻々の運命

 私は今魔法がうまく使えない。なぜ?

 窓から無数の星が瞬く夜空に向かい小さな光を手のひらから発する。その途端体から力がすぅーと抜けるような感覚に襲われる。

 そして小さな光は消えていく。

 目眩までも起きてベッドに力なく横たわった。

 体に異変が起きているのは確か、あの日が近づいているからだろうか?

 今日の昼間から自分の魔法に違和感を覚えていた。

「あぁ体も重くて……動きたくない」

 魔力も低下しているような気がする。

 体調でも崩したのかな?

 瞼も重くなってきた、疲れて体が休みを望んでいるようだ。

 そのままベッドの上でうずくまって眠りに落ちた。


 俺は衝動に駆られていた。

 お昼時から誰かと一手組みたいと、体が勝負を好んでいる。

 すこぶる力が湧いてきて剣士としての魂が震えている。

 ふかふかのベッドに腰かけてふぅと衝動を鎮めるように吐息する。

 ドアの隣にたてかけておいた剣が視界に入ると余計に衝動が強くなる。

 我慢していると全身から汗が出てきて苦しさも感じた。

「ちょっと素振りでもするか」

 我慢できなくなりベッドから腰をあげ剣を片手に俺は部屋を出た。

 夜の庭は朝の時とは大違いだった。

 館を囲む俺の背丈の二倍はある垣根から獣でも飛び出てきそうな物騒さがある。

 月明かりに照らされ薄暗く真っ暗ではないのでどこに何があるかは把握することはできる。

 そんな中俺は剣を両手で持ち片足を少し後ろにして構えた。

 背筋をピンと立たせて視線を一点に集中し意識を高めて心を落ち着かせた。

 大きく振りかぶって真っ直ぐに降り下ろした。

 何か物足りない。もっと激しく暴れたい。

 俺は地面を蹴飛ばして飛翔した。

 地面目掛けて剣を刺し込みに、両手で持った剣を頭上まで持ち上げ空中から降下する勢いで地面に突き刺した。

 着地して突き刺さった剣を見据える、まだ足りない。

 俺は地面から剣を抜きもう一度構える。

 刺した場所には深く細長い穴ができていた。

 奥にある垣根を目掛けて駆ける。

 片手に剣を持ち途中で一回転して目の前の敵をなぎはらうように右に左に剣を振りどんどん垣根に近づき柄の底に片手を当て垣根に押し込んだ。

 押し込んだのと同時に梢から葉が地面にばささと音をたてながら落ちる。

 スッキリした。

 押し込んだまま爽快感を感じながら、へっと笑ってみた。

 柄から手を離すと、衝動もなくなっていて温まった体から出る汗を袖で拭う。

「気持ち良かった」

 垣根に刺さった剣を抜き取り俺は庭をあとにして部屋に戻った。

 スッキリしたからか安眠できそうだ。

 瞼を閉じて熟睡を体に求めた、するとすぐに眠気がきて意識はなくなった。


 私の運命は変わらないようだ。

 今までそうであったように今回も起床時間は一秒も変化がない。

 時計の針は六時を示していた。

 あと十分もすればあいつらが来る。

 あいつらとは私の命を途絶えさせる勇者たちのことである。

 そして毎回のことでもう体に魔力は感じなかった。

 魔法は使えそうにない。運命はやはり変わらないのか。

 ベッドから降りてデスクに向かった。

 なぜか、それは置き手紙を書くためだ。

 それは今までの運命にはなかったことだ。

 カーテンも開けぬままデスクライトを点けて棚から一冊、本を取りだし最後の一ページを破り取る。

 ペンたてから一本、ペンを抜き取って手に持ち目の前の紙を見据えた。

 表は文字列が並んでいるが裏は白紙、そこにお礼の言葉を記した。

 依頼を受けてくれてありがとう、と。

 文鎮代わりに財布から一枚硬貨を持って、まだ寝ているであろうあの人の部屋へ向かった。

 ドアを開けっぱなしで部屋はカーテンが閉めきっていてカーテンの隙間から入る朝日だけが部屋を間取りがわかる程度に薄暗くしていた。

 何も置かれていない机の上に手紙と、その上に文鎮代わりの硬貨を乗せた。

 ベッドで横たわり泥のように眠っている、私の大好きな人に目を遣った。

 その姿はもう黒猫になっている。

「ごめんね……」

 私がそう呟いた瞬間、懐に入れてある魔法石が震動した。訪問の合図だ。

「もう行くねバイバイダーリン」

 いつか口にしたかった呼称を去り際に、口にする。

「死んでも愛してるよ」

 そう言い残して私は部屋を出て、館の入り口を目指した。

『おいコラー出てこいやー!』

 館の入り口前で怒声を上げながらドアを何回も叩いている野太い声。木製なので長くは耐えられない。

 案の定バキッという亀裂が入る音、そして脆くなった亀裂部分から筋肉質の脚が飛び出てきた。

 ドアのそこらじゅうに穴ができ、ついには隅以外無くなってしまった。

「お前が魔女か?」

 蔑むような表情をしてこちらを睨む。相手はいかつくて強靭そうな肉体の男三人。

 無精髭をさすりながら眉をしかめる。

 真ん中の男が口を開いた。

「魔女さんよぉー命乞いはねぇーか」

 私は男をまっすぐ見て言い放つ。

「私は魔女じゃない、普通で凡庸な一人の少女だ。魔法なんて使えない、私がしたいのは愛する人と暮らすことだ! そしてそれは私の幸せだ!」

 捲し立てるように現在の心境を言い切った。少し息が上がっている。

「うるせぇ黙れ」

 男は淡々とそう言って、冷酷に私を睨んで鞘から剣を抜いて振りかぶった。

「魔女よ死ね」

 男は剣を素早く降り下ろした。

 __運命とは儚くて無慈悲なものそして抗うことの許されない決まりごとなのである。

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