9 伝説の大航海時代・後編
kjこと宮里賢太は、町の問題児。売れない作家宮里賢治の一人息子だ。
母、涼子を交通事故で早くに無くし、賢治の不在中は、涼子と歳の離れた女子高生の妹、若葉が身の回りの世話をしている。
そんな、夏のある日の夕食時のkjの一人語り・・・後半。
<登場人物>
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。
〈劇中劇の登場人物〉
ジョーダン(36)ポルトガルの商船の船長
マイケル(18)ジョーダンの息子。幼少時代から父と航海を重ねて、若くして一人前の航海士。
船員たち
紅に染まる高台から、胸の十字架を握って、息子の航海の無事を祈るジョーダン。
「父さん!」
馴染みあるその声に耳を疑る。
振り返ると、海上に居るはずのマイケル。
「僕を叱ってください。でも、一緒に居させてください」
「どうして、行かなかった!」
「僕が逃げれば、疫病と戦う誇り高き男の息子じゃなくなる。僕も、一緒に戦おうって決めたんです。それに」
どっさりと重い布袋を持ち上げて、
「みんなも、賛成してくれて、ターメリックは他の商船へ売って金に替えました。行きましょうみんな町で待ってます」
「そうか」と、町へ踏み出すジョーダン。
すれ違い様、
「マイケル!」
殴られる!と、一瞬、身を強張らせるマイケル。
ポンと、優しく手で頭を抱き寄せて、
「大きくなったな‥‥俺の息子」
・・・ジョーダンの探検団は、金で薬を買い町を救った。
最後に手元に残った物。
それは、失う事のない仲間たちとの絆と男の誇り、そして、病気から回復した町の人から集まったたくさんの「ターメリック」
「俺達のこの町で最後の晩餐だ!!」
肉に、酒、ジョーダンたちの救済に、町の者達の感謝の宴。
賑やかな人の輪の中で、ジョーダン探検団はターメリックを水で溶かしたようなうすいカレーを分け合って食べた・・・。
分かりにくい劇中劇も終り、次回は、キッチンのテーブルを囲む団欒へ戻ります。次回は、第10話「グー!」です。よろしくお願いいたします。