8 伝説の大航海時代
kjこと宮里賢太は、町の問題児。売れない作家宮里賢治の一人息子だ。
母、涼子を交通事故で早くに無くし、賢治の不在中は、涼子と歳の離れた女子高生の妹、若葉が身の回りの世話をしている。
そんな、夏のある日の夕食時のkjの一人語り・・・。
<登場人物>
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。
〈劇中劇の登場人物〉
ジョーダン(36)ポルトガルの商船の船長
マイケル(18)ジョーダンの息子。幼少時代から父と航海を重ねて、若くして一人前の航海士。
船員たち
カモメの呼びかけ、打ち寄せる波音。
ここはインド洋の港町。
岬へ向かう穂先の尖った帽子をかぶる冒険家の親子。
父の名をジョーダン。子をマイケル。
遥か遠くのガンダーラへ伝説のスパイス「ターメリック」を探す船旅。
幾多の嵐と危険に犠牲を払いながら、ようやくたどり着いた。
それがここインド、デリーの町。
だが、その町は伝染病が猛威を振るっていた。
「俺はここに残って町の人を治療する!」
と、逃げ腰の船員たちの目の前でジョーダンが啖呵をきった。
「船長、あんたがいなけりゃ、オラたちは路頭に迷っちまうだ」
「ターメリックだけ持って帰れば、俺達は海賊と同じだ。俺は宝と誰にも恥じる事の無ぇ誇りを、この手一杯に掴んで帰りてぇ」
「でもよ船長。あんたが伝染病にやられちまったら航海はどうするだ?」
「お前たちは帰れ!国に守るものがある。そうだろ、なーにここに船長のマイケルがいる心配するな」
船員たちは、顔を見合せ、マイケルならばとうなずき合う。
「大切なものの為に帰るんだ恥じる事はねぇ。国に無事に帰って母ちゃん抱いてやれ」
動こうとしないマイケル。
「どうしたマイケル?」
「・・・父さん、僕も残ります」
「ダメだマイケル!俺のかわりにお前は道しるべになるんだ」
ジョーダンは、そう言って、自分の大きな帽子を被せ背を押した。
「達者でな俺の息子よ」
つづく・・・。
7話の終りのkjの語りから始まる劇中劇の回です。
大航海時代の商船の船長、ジョーダンと、マイケルの親子の伝説の話です。
分かりにくい回かもしれません。
次回は、劇中劇の後半になります。