52 押し通す!
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。父・賢治の手紙で夏休みの間、奄美大島へ来ている。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家。失踪中から、ひょっこり顔を出した。変な奴。
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。KJの保護者。
愛人(32)奄美大島で観光ガイドをしている。賢治の亡くなった妻・涼子に瓜二つ。
海咲(8)徳浜ビーチで出会った女の子。愛人の娘。今は、祖父母である加計呂麻病院の院長夫婦が無理矢理引き取っている。
徳山虎雄(76)加計呂麻島病院の院長。
徳山夏海(28)加計呂麻島病院の院長の愛人との子。院長夫人が強引に引き取り養女として育てられた。
徳山節子(78)島の名士の娘で虎雄の妻。
「海咲ちゃんのホントの養育者は、節子さんの息子の子供でも、あなたじゃなく愛人さんだ」
賢治は、節子にキッパリと言い切った。
節子は悲しい曇った表情を愛人へ向けて、
「(こくり、と頷き)愛人の苦しみは分かっています。子供を失う辛さは母親ならば誰も同じです」
愛人身を乗り出さんばかりに、
「義母さん、それなら私に海咲を……」
節子、哀しく首を振って、
「なりません。海咲は島の希望です。愛人、もはやあなたの娘であってあなたの娘ではないのです。諦めて下さい」
愛人、節子へすがるように首を振って、
「そんな義母さん、そんな……」
パンパン!
賢治がメロドラマの空気を一瞬でぶち壊すように手を叩く。
「は~い。そこまでーー。議論は平行線ですね。だったら……」
虎雄が賢治を睨んで、
「だったらどうすると言うんだね?」
賢治、トボケて、
「どうしましょう?……えーっと……そうですね……(目が覚めるように)KJ!若葉!!この家にいる海咲ちゃんを探して連れて来い!押し通す!!!」
KJ、若葉「( ゜Д゜)ゞ!」
つづく




