51 夏海は跡取りに出来ない!
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。父・賢治の手紙で夏休みの間、奄美大島へ来ている。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家。失踪中から、ひょっこり顔を出した。変な奴。
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。KJの保護者。
愛人カナ(32)奄美大島で観光ガイドをしている。賢治の亡くなった妻・涼子に瓜二つ。
海咲ミサキ(8)徳浜ビーチで出会った女の子。愛人カナの娘。今は、祖父母である加計呂麻病院の院長夫婦が無理矢理引き取っている。
徳山虎雄(76)加計呂麻島病院の院長。
徳山夏海なつみ(28)加計呂麻島病院の院長の愛人あいじんとの子。院長夫人が強引に引き取り養女として育てられた。
徳山節子(78)島の名士の娘で虎雄の妻。
「夏海は加計呂麻島病院の跡取りはなりませぬ!」
虎雄の妻、節子が、今までの話の成り行きをすべて聞いていたかのように、襖をあけて入って来た。
「ようやく来ましたね。(しれっと)ラスボス……」
賢治は、ニャッと薄笑いを見せ、愛人たちに目配せ。
「夏海は、主人の娘ですけれど、徳山の家とは血縁がありません。血縁の無いものを跡取りとすることはできません!」
賢治は、ままっと節子に御猪口を渡して黒糖焼酎をすすめるが拒否される。
「初めまして徳山節子さん。この加計呂麻島病院の跡取り問題のラスボス(2回目はフザケテている)」
「君!節子に失礼だろう!!」虎雄は、賢治の物言いをただす。
節子、淡々と、
「たとえラスボスと言われようと徳山の家は、先祖代々村長を努める加計呂麻島では由緒正しい家です。連面と続いてきた血の繋がりを私の代で途切れさす訳にはいきません」
賢治は、首を傾け思案……。節子の手を握る。
「節子さん分かりますよ。家を守るのは良妻のつとめです。あなたのような人が虎雄さんを支えたからこそ今の加計呂麻島病院はある。(虎雄を指差し)そんな節子さんの思いもしらないで、こいつは浮気して子供までもうけてどういうつもりだ!」
と、突然、虎雄を責めた。
虎雄は言葉に詰まる。節子、虎雄へ助け船。
「英雄色好む。男はそれぐらいの甲斐性がなくちゃ一代で病院など経営できません。それに、夏海の母は、虎雄が加計呂麻島病院の創設まで、影になり支えてくれました。私が夏海を養女にしたのは、私に出会うまでに虎雄を支えてくれた事への感謝です」
賢治は、キョロキョロと一同の表情を確かめて、
「女の意地ですか……さすが、名家に育った女の処理です。夫の愛人の娘を奪い取るなんて、感情が先に来る女性が多い中で、冷静に対処お見事です。こう処理されると虎雄さんの昔の彼女も身を引くしかありません。で・す・が!」
虎雄は困ったように、「ですが何だね?」
「海咲ちゃんのホントの養育者は、節子さんの息子の子供でも、あなたじゃなく愛人さんだ!」
つづく
読者の皆様、クライマックスへ向かっている中で連載を再々、飛ばして申し訳ございません。どうか、拙作へ変わらぬご愛顧をよろしくお願いいたします( ノ;_ _)ノ




