48 本日の主役
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。父・賢治の手紙で夏休みの間、奄美大島へ来ている。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家。失踪中から、ひょっこり顔を出した。変な奴。
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。KJの保護者。
愛人(32)奄美大島で観光ガイドをしている。賢治の亡くなった妻・涼子に瓜二つ。
海咲(8)徳浜ビーチで出会った女の子。愛人の娘。今は、祖父母である加計呂麻病院の院長夫婦が無理矢理引き取っている。
徳山虎雄(76)加計呂麻島病院の院長。
徳山夏海(28)加計呂麻島病院の院長の愛人との子。院長夫人が強引に引き取り養女として育てられた。
虎雄の妻(78)島の名士の娘。
加計呂麻島病気の院長で島一番の名士の徳山虎雄の居間の広間で、揚げ物、煮物、豚の角煮などの郷土料理を挟んで向かい合わせに、強引に奪われた愛人の娘を取り戻す最初で最後の席。
この機会を逃せば愛人は、我が娘海咲を取り戻すことは2度と出来ないだろう。
愛人は、いつになく虎雄へキリッと物申す決意の目を向けている。
海咲へ思いを伝えるのも、愛人さんが海咲ちゃんを取り戻してからだ!KJは子供ながらに、精一杯、愛人の味方をするつもりだ。この為に、お父さんだって僕たちの味方をしに、連れて来てくれたんだ。
と、KJの父・賢治は、羽織のポケットから"今日の主役!"とかかれたたすきを肩から斜めへ掛け、飯台から一升瓶の黒糖焼酎とグイ飲みのお猪口を掴んで、左右向かい合わせで額を向け合う虎雄と愛人の間で、調停役でもするように壁の神棚に祀られた神様へ、酒を捧げて、膝まである羽織の裾を端折ってドン!っと長方形の飯台の頭へ座った。
この場では、出番のない若葉は思った。義兄さんは、こんな緊迫した場面でも"本日の主役"だなんてたすきをを掛けてふざけて、まったくどうかしてるわ。でも、ただ者じゃない!と、変なポイントで少しキュンとした。
「では、皆さん海咲ちゃんの親権を賭けた話し合いを、さぁ、はじめましょうかーー」
と、賢治は神棚へ捧げた黒糖焼酎をクッとあおった。
週末を連載飛ばして申し訳ございません。作家、筆が止まってしまって、産みの苦しみを味わっておりました。うう、山場は苦しい……。




