38 神女(ノロ)になった愛人(カナ)
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。父・賢治の手紙で夏休みの間、奄美大島へ来ている。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家。失踪中から、ひょっこり顔を出した。変な奴。
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。KJの保護者。
愛人カナ(32)奄美大島で観光ガイドをしている。賢治の亡くなった妻・涼子に瓜二つ。
海咲ミサキ(8)徳浜ビーチで出会った女の子。愛人カナの娘。今は、祖父母である加計呂麻病院の院長夫婦が無理矢理引き取っている。
村田(26)東京の芸大から戦時中の画家田中一村に憧れて渡って来た絵描き。
浜へ愛人とKJと若葉が来ると、待ってましたと村田が手を挙げた。
村田は浜に、白木の祭壇を造り、上等な織物の敷物をひいて待ち構えていた。
「愛人さん、僕には時間がありません。昼までにデッサンだけは仕上げます。早く衣装に着替えて下さい」
愛人が村田に手渡された衣裳は、奄美大島の神女"ノロ"の白装束の衣裳と黄色の下衣と金冠だった。
「僕にとって愛人さんは、女神です。ならば、今は廃れつつある奄美大島の神女を描きたいと思ったんです」
「これでいいかしら?」
ノロの白装束を纏った愛人が、村田へ呼び掛けると、神々しいばかりに光を放つ若い神女ノロが立っていた。
首を捻る村田。
「何かが足りない」
必死で浜辺に有るものを物色する村田。
たまたま、若葉が嗅いでいたハイビスカスの花を見つけて、茎から一輪ちぎって、愛人の髪へ差した。
「これで眩さに命が宿る!」
色白の愛人が、祭壇で神女になり神事をする。つまり神へ五穀豊穣の祈りを捧げる姿を、優しげな村田から想像もつかない鬼の形相で筆を走らせる。
モデルの愛人と筆を走らせる村田を見て、若葉がKJが耳打ち。
「愛人さん、ホントに神様が降りてきた見たいに眩くてキレイね」
「女神様や」
村田は、筆を走らせ描く。描く。描く。額に汗が滲む。
さらに、描く。描く。描く。
ーーようやく描き終えた村田が笑顔になって愛人の手を取り、
「愛人さん!出来ました。僕の最高傑作が!」
愛人、賢明な眼差しで、すべての悩みが消え去ったようにキッパリと、
「村田さんありがとう。私も神女になって答えが見えた。私決めた海咲を連れ戻すわ!」
つづく
今話は、僅かに600文字そこそこながら、無いものを想像し、創造したので疲れました。簡単に書いてますが苦心しました。まだまだ、作者の器量不足です。




