37 スパムはおいしいよ
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。父・賢治の手紙で夏休みの間、奄美大島へ来ている。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家。失踪中から、ひょっこり顔を出した。変な奴。
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。KJの保護者。
愛人(32)奄美大島で観光ガイドをしている。賢治の亡くなった妻・涼子に瓜二つ。
海咲(8)徳浜ビーチで出会った女の子。愛人の娘。今は、祖父母である加計呂麻病院の院長夫婦が無理矢理引き取っている。
リリィおばぁ(76)愛人の島唯一の理解者
朝ーー。
KJは誰より早く目が覚めた。KJはアジャスターケースから絵を取り出して海咲を見つめている。
「海咲ちゅわ~ん」
今すぐ抱きしめて引き寄せたい。
ひょっこり若葉が目を覚まして、KJを見つけ、
「あんた何?朝から絵を見つめて気持ち悪い」
「若葉には、ボクの繊細な気持ちが分からへんねん」
「冗談よ。お昼には、義兄さんの加計呂麻病院での公演があって、院長のお宅で海咲ちゃんに会えるわよ」
「待ちきれないよ」
「あ~でも、お腹すいた~。お腹すいて目が覚めちゃった」
隣の部屋から愛人が、ひょこっと顔を出し、
「スパム野菜と炒めたけど朝食食べる?」
「愛人さんも早いですね。今日は海のライフセーバーはないんじゃないんですか?」
「代わりに午前中に、村田さんの絵のモデル頼まれちゃった。みんな、来るでしょ?」
つづく




