36 恋のアドバイス
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。父・賢治の手紙で夏休みの間、奄美大島へ来ている。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家。失踪中から、ひょっこり顔を出した。変な奴。
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。KJの保護者。
愛人(32)奄美大島で観光ガイドをしている。賢治の亡くなった妻・涼子に瓜二つ。
海咲(8)徳浜ビーチで出会った女の子。愛人の娘。今は、祖父母である加計呂麻病院の院長夫婦が無理矢理引き取っている。
リリィおばぁ(76)愛人の島唯一の理解者
「この少年をなんとか助けてやれないものでしょうか?」
KJは、まさかお父さんが助け船を出してくれるとは思わなかった。
「ボクはどうしたらいいか分からないんです」
KJが告白すると賢治が穏やかな口調で諭した。
「それが、恋だな。そのことを怖がっちゃいけないよ」
「どんな壁が目の前に立ちふさがっても、それから逃げちゃダメよ」
愛人は、まるで自分へ言い聞かせるように口添えした。
KJは頷き、黒豚の角煮を力強く噛みきった。胸の中の物を吐き出したせいか、気分が楽になった。KJは角煮をがぶりと大人達に言った。
「でも、恋愛ってようわからへんわ」
フフフ、ふははは~。その場にいた一同がKJの卓袱台返しの一言にひっくり返った。
「つまり・・・恋愛とは、KJ少年の思ったまんま伸びやかに行動し愛を伝えればよいだけだよ。君はいつもそうしてるだろう?」
「今度もそうしてもエエんかな?」
「フフフ、君は僕に迷惑をかけるのは得意でしょう。君なら出来る」
愛人も微笑みながら頷いた。
何か閃いた賢治がKJを手招きして、頭を引き寄せ耳元で囁いた。
「謝るときは、俺じゃなくて若葉に報告しろよ。でも、後の事は俺に任せろ!」
賢治は、ニヤッと片目をつぶりウインクして背を叩いた。
KJはこの無責任に心強い父・賢治の話を聞くうちに、心底力強い勇気が湧いてくるのを感じるのだった。




